マスク と除菌剤のブランドが新しい道へ。継続的な成功のカギは?

DIGIDAY

セレブリティに愛されるラグジュアリージュエリーブランド、ヴィータフェデ(Vita Fede)で知られるシンシア・サカイ氏は、2020年3月以降、それまでまったく予想もしなかった新たなビジネスとなる「マスク」に参入した多くの起業家のひとりだ。

N95が不足していた2020年、サカイ氏がマスクブランドのイヴォルヴトゥギャザー(Evolvetogether)をローンチすると、アンジェリーナ・ジョリー氏、アリアナ・グランデ氏、サラ・ジェシカ・パーカー氏、クリステン・スチュワート氏、ベラ・ハディッド氏、ジェニファー・ガーナー氏といったセレブリティが、イヴォルヴトゥギャザーのシックなN95マスクや医療マスクを着用している姿がパパラッチの写真にとらえられた。すぐにイヴォルヴトゥギャザーはパンデミックの「注目の」マスクブランドとなり、手指消毒剤やメガネ用曇り止めなど、関連カテゴリーも追加でローンチしている。

マスクや除菌剤からパーソナルケアの分野へ

そして現在、サカイ氏のビジネスは再び進化を遂げている。

「マスクもまだたくさんやっているが、パーソナルケアへとかなり移行している」とサカイ氏は言う。

9カ月前、イヴォルヴトゥギャザーは初めてパンデミックというホットなカテゴリーを超えたビジネスを展開した。溶けるハンドソープシート、ローション、デオドラント、虫除け剤、ホームグッズ、さらには帽子など、同ブランドは環境に配慮したさまざまな製品を提供している。イヴォルヴトゥギャザーは、新しい製品カテゴリーと最新のマーケティング戦略によって、ロックダウンのあいだに得た勢いを維持しようとしているブランドのひとつだ。

カラフルなサニタイザーブランドのタッチランド(Touchland)もそうした転換を図っているブランドである。ニールセン(Nielsen)のデータによると、2020年にパンデミックが発生した際、同社はその年の除菌剤全体の売上成長率600%を上回る1500%の売上急増を記録した。今年も小売店4000店舗で展開し、「3桁」の売上成長を記録したと、創業者アンドレア・リズボナ氏は語る。だが同社もまた、除菌剤以外の分野への展開を進めている。リズボナ氏いわく、タッチランドはスキンケア分野で3つの製品カテゴリーのローンチを計画している。その分野では、すでにスキンケア効果のあるサニタイザー「グローミスト」で一歩踏みこんでおり、この製品はセフォラ(Sephora)では2週間で完売した。

一方、イヴォルヴトゥギャザーは、ボディソープやフレグランスなど、6つの新製品カテゴリーのローンチがある。現在は100の小売店で販売されており、来年にはセフォラを含むさらに300の小売店に展開する計画だ。

「何をするにしても、長期的なものになるとわかっていた」とサカイ氏は言う。「研究開発にかなりの資本を投入している」。

除菌剤をかっこよくおしゃれなものに

もちろん除菌剤やマスクの需要がなくなったわけではないが、創業者たちが強調するのは、流行の製品を作ることや、公衆衛生以外へとブランドメッセージを更新する必要性である。リズボナ氏は「まったくかっこよくなく、日用品化していて、時代遅れのカテゴリー」に現代的なひねりを加えることが目標だと語る。

2021年、タッチランドは、その年にカルチャーを席巻した快楽主義時代を早々に取り入れたパーティーをテーマにキャンペーンを行い、「淫らなニューノーマル」という広告トレンドを採用した。最近では、タッチランドは除菌剤のデザインと香りに関するマーケティングに重点を置いており、菌を殺すことよりもスタイリッシュな美学を強調している。創業者たちは、顧客に除菌剤を買い続けてもらうには、おしゃれなボトルや洗練された香りで除菌剤をかっこよくみせる必要があることに気づいている。

「当社が手指消毒剤ブランドではなく、美容ブランドであることを証明するために努力している。わくわくしないパーソナルケアのそうした瞬間を、わくわくするようなものに作り変える、それが私たちの目標だ」とリズボナ氏は言う。同ブランドは頻繁に新しい色や香りを発表しており、除菌剤が香水としても使えるほど魅力的な香りを作ることを目指している。

ソーシャルメディアにぴったりの色も大きな後押しとなっているとリズボナ氏は述べ、ユーザーが除菌剤を服装に合わせるというTikTokのバイラルトレンドに触れた。同ブランドはこのトレンドに乗っている。

リズボナ氏はタッチランドの個性的なデザインをすっきりしたApple製品と比較し、「当社のサニタイザーは、バッグから取り出したときに会話のきっかけになる」と語っている。

カギは高級小売パートナーやポジショニング

イヴォルヴトゥギャザーは、ミニマリストのスタイルとともに、機能性と環境に配慮した素材を重視している。「私たちが行うことはすべてユーザーの視点から逆算して考えている。『顧客は何を求めているのか? どうしたらプラスチックに入れて売らなくて済むのか? ポーチに入れた際にキャップが外れて中身がこぼれないようにするにはどうすればよいか?』と自問している」とサカイ氏は述べた。

ブランディングの転換には、セレブリティやインフルエンサーのマーケティングも一役買っている。タッチランドは過去にディズニー(Disney)と特別コラボのサニタイザーで提携しており、今後もさらなるコラボやセレブリティのキャンペーンを計画中だ。

サカイ氏は、2023年にイヴォルヴトゥギャザーの単独店舗をオープンしたいと考えていて、最初の店舗候補地として、ニューヨークとロサンゼルスに目を向けている。

ブランドの継続的な成功のカギとなるのは、高級小売パートナーだと彼女は述べた。イヴォルヴトゥギャザーは、セフォラ、百貨店、そしてリッツカールトン(Ritz-Carlton)や超高級ホテルチェーンのアマン(Aman)など、エリートホスピタリティパートナーを通じて販売されている。現在、卸売りが売上の約4分の1を占めており、小売店のフットプリントを拡大中だ。

一方のタッチランドは、セフォラ、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)、ターゲット(Target)で販売されている。

重要なのはポジショニングだ。「小売店によっては、手指消毒剤の売り場と美容の売り場の両方で販売されている。指消毒剤のスペースよりも、美容のコーナーでは6倍から7倍の本数が売れている」とリズボナ氏は語っている。

[原文:Mask and sanitizer brands are charting a new course]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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