「ホカ」人気でデッカーズブランズ社が記録的成長を達成:ランナー以外の客層を取り込む

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フットウェア企業のデッカーズブランズ(Deckers Brands)のホカ(Hoka)アスレチックシューズは、話題性のある広告、セレブリティの影響力、アクセスのしやすさなどに後押しされ、今四半期に売上が2倍以上に増加した。

ホカの純売上は3億3300万ドル(約493億円)に達し、前年同期に同ブランドがあげた2億1040万ドル(約311億円)を58%も上回り、過去最高になった。

10月27日に行われた第2四半期の決算発表において、デッカーズブランズのCEOを務めるデビッド・パワーズ氏は、ホカが競合の激しいアスレチックシューズの分野において「大きな逆風にもかかわらず」市場シェアを伸ばしていることを、この結果が示していると語った。同ブランドは今年、はじめてのグローバルマーケティングキャンペーンを開始し、これによってニューヨークとロサンゼルスの市場で検索ワードが145%増加した。さらに同社は流通能力を拡充し、現在の取引先での卸売りも増え、全米に5つのポップアップ店舗、およびアジアに10数店舗を展開している。

「これらのアクセスポイントはそれぞれ、ブランドへの認知を作り上げるよう設計されている」と、パワーズ氏は語る。

「単なるランニングのブランドではない」

デッカーズはアグ(Ugg)、テバ(Teva)、サヌーク(Sanuk)も保有しており、2013年にホカを獲得した。しかし、同ブランドは最近になって、中核的な顧客であるランナーやアスリート以外の顧客のあいだで人気が沸騰した。インフルエンサーやセレブリティであるキャメロン・ディアス氏ジェニファー・ガーナー氏リース・ウィザースプーン氏などが、カラフルなデザイン、なめらかなフィット感、アスレチック向けのサポートで知られる同ブランドの商品を身に付けているところが目撃されている。

ホカの長期的な構想は、このブランドを「パフォーマンス・アスレチック市場での数十億ドル規模の主要なブランド」にすることだと、パワーズ氏は語る。ブランドは第1四半期には、12カ月間の売上高が10億ドルのしきい値を超えた。

ホカの成長の加速は、フットウェア分野全体の拡大と一致する。トランスパレンシー・マーケット・リサーチ(Transparency Market Research)が10月25日に発表した調査結果によると、全世界のフットウェア市場は2022年から2031年にかけて7.8%のCAGRで成長し、スポーツ人気、健康志向、環境に優しい素材への要求が需要を推進していると見られている。

ホカの熱狂的な人気は、デッカーズブランズが従来から直面してきた季節的なトレンドに対処する助けにもなっているとパワーズ氏は語る。同氏は、アスレチック用具への通年需要に加え、フリーピープル(Free People)のようなパートナー企業における同ブランドのトレンド訴求力を挙げている。

「当社は、単にランニングのブランドだとは考えていない」とパワーズ氏は述べる。

ホカとアグがけん引

デッカーズ・ブランズ全体の純売上高は、昨年の同じ四半期と比べて純売上が21%増加し、8億7560万ドル(約1300億円)に達した。会計年度を見ると、純売上は前年の12億ドル(約1776億円)から14億9000万ドル(約2210億円)に増加した。

この四半期には同社のD2Cビジネスも大きく増加し、純売上は前年の同じ四半期の1億7670万ドル(約262億円)から2億3910万ドル(約354億円)へと35%増加した。パワーズ氏はこの成長が、ホカとアグの両方によるもので、アグのトレンディなプラットフォームスタイルとモコモコとしたファースタイルのタスマン(Tasman)が特に成功したことだとしている。アグは総合的に前年同期と比べて6%成長しており、ホリデーシーズンにも堅調な業績が期待できると、パワーズ氏は語る。

今年の前半が成功裏に終了したにもかかわらず、パワーズ氏は「当社はいまだ不確定な環境で操業しているということを認識することが重要だ」としている。それでも、同氏は今年の後半に堅調な成長を予測しており、「フットウェア分野でもっとも強力なブランド2つ」が引き続き新しい顧客を引き寄せるだろうと述べている。

ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は、ホカの成功は自社が以前からターゲットとしているランナー以外の層に人気を博したためだとしている。

「同社への評価は、アスレチックフットウェアブランドとしてのものだけではなくなった。TikTokとセリブリティの影響のおかげで、同社はストリートウェアの分野でも共感を呼んでいる」と同氏は述べている。

アグも同様の経路をたどっていると同氏は語る。同社は最初に快適な冬物の衣料として評判を得たが、ファッショナブルな定番アイテムとなり、さらにブランケットや枕で家庭にも展開していったと、同氏は述べている。

ホカとアグはどちらも高級ブランドで、歴史的なインフレの渦中でも売上を確保できた。ホカのランニングシューズの価格は約125ドル(約1万8500円)以上で、アグのクラシックトールシープスキンブーツは200ドル(約2万9600円)だ。しかし、どちらのブランドも品質には定評があり、作りのよい商品に投資することを求めている消費者にアピールするだろうと、ソチャ氏は述べている。

「消費者がいま求めているものを見据えれば、強いコミュニケーションと価値を求めていることがわかる。そして、デッカーズブランズは消費者に価値を的確に伝え、商品の価格を正当化し続けているようだ」と、同氏は述べている。

デジタルへの注力も

デッカーズブランズは、ブランド固有でない検索広告にも投資しているようだと、ソチャ氏は語る。これによりホカやアグをよく知らない消費者が有料検索広告によってこれらのブランドを見つける可能性があり、D2C売上の大幅な増加に貢献する可能性がある。

「顧客はいま、試行錯誤し、新しいブランドも試しているところだ」とソチャ氏は語る。「デッカーズブランズは、その背後に、D2Cの成長と卸売の成長の両方を促進する、強力なデジタルの推進力を保有しているようだ」。

[原文:How Hoka’s popularity is fueling record growth for Deckers]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Imaege via Hoka

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