90年代にCGクリエイター、VJなどを目指していた若者にとって、知らない人はいないと言っても過言でない巨匠・谷田一郎。
かくいう僕もTOWA TEI “TECHNOVA”のCGにぶっ飛んで、青木克憲さんとのラフォーレ・グランバザールの一連のヴィジュアルや、佐藤可士和さんや佐内正史とのコラボに感銘を受け、クリエイターの中のクリエイター、マスターの中のマスターとして追いかけて、単独インタビューをしたこともあります。
心に刻まれた言葉
その時の発言で今も印象に残っているのは、「何日間も考えに考え抜いて、究極のシンプルなノウハウに磨きあげて、作るときは最短の方法で一瞬で仕上げる」というクリエイティブの極意。
今でこそこういうアプローチのクリエイターは珍しくないですけど、駆け出しの僕にはとてもつもなく刺さる金言でありました。世界でもトップクラスだった90年代の日本のデザイン/グラフィック業界って、誰もかしこもとにかく忙しく、物質的であり過剰であり、谷田さんだけがとてつもなく先に本質に辿りついているように思えたものです。
CGの香りがするリアルアート
そんな谷田一郎さんが、あえてCGではなく、ペインティングで現代美術作家としてデビューすることになりました。
現在開催中の展覧会『グラフィティ仏陀』。このスタイルに至るまで紆余曲折はあったようですが、純粋に画家としての谷田さんは、デジタルでないのにデジタルを感じる、CGではないのにCGを感じる、そして谷田さんを追ってきた人間には一目でそれとわかる色彩と作風。
CGとは、デジタルとは、そして今、現代芸術が表現できる死生観はとは一体何なのか—というエコーチェンバー的な「結界」を感じさせてくれる展覧会に仕上がってると思えてなりません。これは行かねば!
ペインティングの方法は聖なる領域を崩し俗なる領域に場を広げていく様にも見える。しかしこれは、あくまでも「新しく正しい結界を張り直す作業」という意味合いを持つ。(谷田一郎)
展覧会開催中
『グラフィティ仏陀』 谷田一郎
2022年11月4日(金) – 12月3日(土)
開廊時間|木〜土 11:00–13:00, 14:00–19:00
休廊日|日〜水・祝日 Akio Nagasawa Gallery Aoyama
※新型コロナウイルスに関する状況により会期や内容を変更する可能性があります。
Source: グラフィティ仏陀