新型コロナワクチン未接種者の心筋炎および心膜炎の発症率はどう変化するのか?

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者が、心筋炎心膜炎を発症している事例が報告されています。これを受け、COVID-19ワクチン未接種者の心筋炎や心膜炎の発症率を調べた論文が公開されており、COVID-19への感染の有無が心筋炎および心膜炎にどう影響するのかが明らかになりました。

JCM | Free Full-Text | The Incidence of Myocarditis and Pericarditis in Post COVID-19 Unvaccinated Patients—A Large Population-Based Study
https://www.mdpi.com/2077-0383/11/8/2219

The Incidence of Myocarditis and Pericarditis in Post COVID-19 Unvaccinated Patients-A Large Population-Based Study – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35456309/

COVID-19ワクチンを接種したのち、心筋炎や心膜炎のリスクが高まることはこれまでの研究で報告されており、これはブースター接種時でも同様であることが明らかになっています。

COVID-19ワクチンによる心筋炎リスクはブースター接種でも増加する – GIGAZINE


COVID-19ワクチン接種者の心筋炎および心膜炎の発症率に関する研究は存在するため、イスラエルのカプラン・メディカル・センターとエルサレム・ヘブライ大学に務めるOrtal Tuvali氏が主導する研究チームは、「COVID-19ワクチン未接種者の心筋炎および心膜炎の発生率」を調査しています。

心筋炎および心膜炎は、COVID-19感染の潜在的な急性後遺症として知られており、これは適応免疫応答に起因するものとして知られています。研究チームはワクチン未接種のCOVID-19感染者の心筋炎および心膜炎の発症率を調べるために、イスラエルの医療サービス組織であるClalit Health Servicesから、2020年3月から2021年1月までの期間にCOVID-19に感染したワクチン未接種者19万6992人の成人データを収集し、後ろ向きコホート研究を実施しています。研究では、PCR検査で陽性と診断されてから10日後に患者を診察し、心筋炎や心膜炎を発症していないか判断しました。各患者に対する追跡調査は2021年2月28日に打ち切られていますが、患者はそれぞれ最低でも18日間の経過観察を受けています。

研究では前述の被験者の比較対象として「COVID-19のPCR検査で陽性と診断されたことがないワクチン未接種の成人」59万976人分のデータも分析しました。


分析の結果、COVID-19に感染したワクチン未接種者のうち9人が心筋炎を発症(発症率0.0046%)し、11人が心膜炎を発症(発症率0.0056%)したことが明らかになっています。一方で、COVID-19に感染していないワクチン未接種者のうち心筋炎を発症したのは27人(発症率0.0046%)で、心膜炎を発症したのは52人(発症率0.0088%)であったことも判明。

また、ワクチン未接種者がCOVID-19を発症したか否かは、心筋炎および心膜炎の発症率とは関連していなかったことも明らかになっています。一方で、年齢および男性性は心筋炎の発症率と有意に関連しており、末梢血管疾患と男性性が心膜炎の発症率と有意に関連していることも判明しました。

なお、ワクチン未接種者がCOVID-19から回復したのち、「心筋炎および心膜炎の発症率」が高くなるということはないことも確認されています。

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