「人材会社のパーソル」は「技術屋」だった?CEATEC初出展のパーソルに「技術」を聞いてみた UWBによる動線分析に、MaaS、自動搬送車………

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「人材の会社」の雄であるパーソルグループ

パーソルがCEATECで出展するサービスの例。「人材派遣」だけでなく、「技術」にフォーカスしている内容も多いという

 2022年10月18日~21日、幕張メッセでSociety 5.0 総合展「CEATEC 2022」が開催される。Society 5.0 の実現を目指して、技術や情報が集まるイベントだが、総合人材サービスのパーソルホールディングス株式会社が初出展することになり、注目を集めている。

 人材会社のイメージがあるパーソルだが、実は1万人のエンジニアを抱えるテクノロジに強い企業なのだ。

 今回は、CEATECに初出展することになった経緯や狙い、見所について、パーソルホールディングス株式会社 執行役員(Professional Outsourcing SBU長)で、パーソルテクノロジースタッフ株式会社 代表取締役社長も務める正木慎二氏にお話を伺った。

「第一線のエンジニア」をいまや1万人抱えるパーソルグループ「人を派遣することで、技術そのものを派遣し、お客様の課題を解決する」

――パーソルグループというと、人材派遣や人材紹介など、さまざまな人材サービスを手がけているというイメージがあります。今回、CEATECに出展することになった経緯を教えてください。

パーソルテクノロジースタッフ株式会社 代表取締役社長も務める正木慎二氏

[正木氏]パーソルは人材派遣の「テンプスタッフ」と人材紹介の「doda(デューダ)」が2枚看板で、人材の会社だというイメージがあり、われわれもそこを誇りにしています。ただ、今回は「パーソルが人材派遣と人材紹介だけの会社ではない」ということを訴えていきたいという想いがあり、「CEATEC 2022」に出展することになりました。

 「パーソル(PERSOL)」はパーソン(PERSON)とソリューション(SOLUTION)を組み合わせた造語です。人の成長を通して、お客様の課題を解決するという意味で、私が管掌している事業領域「Professional Outsourcing SBU」では、人材派遣と人材紹介だけではない、第3のサービスとして技術でお客様の課題を解決するお手伝いをしています。

 例えていうなら、「(人を派遣することを通じて)パーソルが持つ、技術そのものを派遣し、お客様の課題を解決する」といったイメージでしょうか。

――技術で課題を解決するという事業に力を入れ始めたのはいつ頃ですか? どんな経緯で始まったのでしょうか?

パーソルプロセス&テクノロジー

パーソルAVCテクノロジー

[正木氏]2000年頃からITエンジニア派遣の事業をはじめ、ITや機械/電気/組み込み/制御のエンジニアの方々から、自分たちで受託開発をしたいという希望が多々寄せられたのです。

 そこで、システムソリューション開発を行っていた東洋ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現:パーソルプロセス&テクノロジー)や日産のディーゼルエンジンのスペシャリストが集うUDトラックス子会社の株式会社DRD(現:パーソルR&D)といった会社をM&Aによりジョインしていただきました。

 2013年にはパナソニックAVCテクノロジーおよびパナソニックAVCマルチメディアソフト(いずれも現:パーソルAVCテクノロジー)も連結子会社化して、現在は黒物家電を開発しています。

 それぞれがお客様の製品の受託開発をしており、グループの中に技術者が散在している状態でした。そんな中、コロナ禍が始まりました。

 振り返ってみると、東日本大震災が起きたり、リーマンショックが起きたり、10年に1度はブラックスワン(予期していない出来事)が起きています。人材派遣や人材紹介はどうしてもボラティリティが大きいので、第三のブランドとして、グループ内に散らばっているエンジニア集団をひとつにまとめて、世の中にアピールすることになったのです。

――現在、グループ内に分散しているエンジニアをまとめたのはなぜですか?

[正木氏]それぞれの会社に特徴があるので、現状のままで行きたい気持ちもありました。ただ、今回のコロナのような外部環境の危機にもしっかり立ち向かえるような厚い経営基盤を作りたかったこと、IoT(Internet of Things)やDX(Digital transformation)などテクノロジー活用や社会実装が加速していく未来を見据え、組織改編に関する議論を約1年以上続けてまいりました。

 そこでわれわれは、2023年1月に、パーソルR&D株式会社とパーソルテクノロジースタッフ株式会社、パーソルプロフェッショナルアウトソーシング株式会社を合併し、パーソルクロステクノロジー株式会社を作ることにしました。同時に、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社の大手SIer向けシステムエンジニアリングサービス事業も吸収分割します。

 今、グループ内に1万5000人の専門家がいます。そのうち1万人がエンジニアで、5000人はアウトソーシングのプロフェッショナルです。今回の経営統合により、多様な働き方やスキルアップといったニーズにより一層応えられるようになります。

パーソルの「技術」を見せていきたいUWBによる動線分析やMaaS、AGVなど……

――CEATECの出展するにあたってのテーマを教えてください

[正木氏]今回のタイトルテーマは「Workstyle Transformation -テクノロジーでビジネスとはたらくを変える、パーソル-」です。われわれのエンジニアも急速にリモートワークへのシフトが進んでいます。業種によっては、コロナ禍が一段落したら元の状態に戻そうとするところもありますが、私は出勤しなくても今以上のことができる環境を実現しなければならないと考えています。

ブース全景

 今は企業が人を選んでいますが、今後、人口が減っていく世界では人が企業を選ぶ時代になると思います。そうすると、いかに働きやすいか、が選ばれる基準になるでしょう。日本どころか海外で働いても良いし、出勤するときは出張扱いにするような働き方を実現しないと、日本経済が発展しないと思います。

 CEATECに来場される方々にパーソルのテクノロジーソリューションの「技術」をご案内させていただき、驚きを提供したいと考えています。

UWBによる動線分析やMaaS、AGVなど様々な「技術」を展示

――ブースで展示している内容を紹介してください

[正木氏]さまざまな内容を展示しています。例えば、UWB(ウルトラワイドバンド)ソリューションでは、倉庫や工場などの現場で、ヒトモノの動線を可視化・分析し、業務効率化を実現するサービスを紹介しています。

 われわれのUWBは、国内で初めてDecawave社(現在はQorvo社)製のUWBチップを使った測位測距デバイスで『工事設計認証』を取得したものです。

 何年も前からチャレンジしていて、実は一度失敗しています。UWBを使って小売業界、例えばスーパーマーケット内の配置を最適化して、売上を向上させようと研究していました。しかし、面倒臭いとかコストが出せないというところで投資が進まなかったのです。

 しかし、現在、工場や物流倉庫で人の動きを可視化し、最適化するというサービスの問い合わせを多く頂くようになりました。今後は、現場の作業員が進入禁止エリアに入っていないかどうかを管理する際などにも活用されていくと考えています。

UWBを利用した動線分析サービス

サービスの流れ。もちろん、単純な「人材派遣」ではない流れになっている。

 MaaS支援サービスとしては、サービスモデルの設計から、運用支援、システム開発などを行っています。ある地方都市でPoC(概念実証)を行っており、過疎化が進んで商店街も寂れてしまった街に住むお年寄りの方に生鮮食品などを配送するサービスを作り、その配送車の運行管理するシステムを開発しています。

MaaS支援サービス。サービスモデルの設計から、運用支援、システム開発などを提供できる

 他にはAGV(無人搬送車)も面白いかと思います。

 AGVは労働力不足を解決するソリューションとして期待されており、物流業界などで活用されています。物流倉庫では、搬入されてから資材置き場まで持って行きますが、それぞれの行程に人が関与します。現在、東大発のAIベンチャーと一緒に共同研究をしていて、その工場に最適な人数は何人なのかをシミュレーションしています。

 また、複数のAGVを動かす際にLiDARの技術を使って衝突を回避したり、お掃除ロボットの開発で培った技術を使い、自動で充電位置まで戻る機能も搭載しています。ブースにはこのAGVの実機を展示しますので、是非触ってください。

「ステージで解説するのは、MCでなく担当者、ぜひ、直接話をしてほしい」

――CEATEC会場での見どころを教えてください

[正木氏]ブースでの見所は、われわれが手がけている約40種類のサービスを紹介するステージですね。

 外部のMCではなく、実際にサービスを提供している担当者が話すステージが多いので、深い話が聞けると思います。そうしたセッションでは、ぜひ、担当者を捕まえて直接コミュニケーションしてください。ステージ上では、どうしても「公式」な話や成功例が中心になると思いますが、1対1のコミュニケーションなら、もっと生々しい話ができることも多いと思います。

――他にはどんなコーナーを用意されているのですか?

[正木氏]製造や人事/労務管理、調達/購買物流、出荷物流、全般管理をはじめ、人材採用からアフターサービスするところまでの、われわれが持ってるソリューションを全部ご覧いただけます。それぞれのコーナーには専門家を配置しているので、遠慮なく質問してください。企業の生産性向上や付加価値の向上につながるサービスが見つかるはずです。

 また、ブースの大きな壁に、課題診断チャート図があり、最適なソリューションのカタログに辿り着くようになっています。カタログを手に取られた方にはわれわれがお声かけすることもありますので、気軽にご相談いただければと思います。

――「CEATEC 2022」内で開催される「METAVERSE EXPO JAPAN 2022 in CEATEC」にも出展されていますね

[正木氏]はい。パーソルグループで営業支援や店舗・販売支援の人材派遣・アウトソーシング事業を手掛けるパーソルマーケティング株式会社が出展しています。

 テーマとしては「メタバース×はたらく」という切り口で、いろんな制約があって活躍できなかった人でも、能力にあった働き方ができる世界を目指しています。

 例えば、介護で地元に戻らなければならなくなった化粧品のベテラン販売員が、メタバースを活用すれば家から仮想空間で働き続けられるかもしれません。メタバースは最近ホットな話題ですが、実態を想像しにくい部分があります。これを、わかりやすく表現できれば、と思っています。

「製造メーカーのエンジニアやITエンジニアにブースを見てほしい」

――今回の出展はどんな人たちに見てもらいたいですか?

[正木氏]特に製造メーカーのエンジニアの方々と、ITエンジニアの方々に来ていただきたいと思っています。

 日本の工場はまだまだIT化やネットワーク化が進んでいません。例えば、欧米のメーカーなどは工場がIT化されており、省人化しつつ最短最速で車を製造しています。日本のみなさん、経験と勘でやっていたり、人手不足で悩んだりしていませんか? われわれは工場DXを推進するための解決策をいくつも持っています。

 ITエンジニアの方には、これからITと機械/電気/組み込み/制御が融合されていく世界を見ていただけると思います。IoT時代が来ると、デバイスがつながって動き始めます。これまでの技術はホワイトカラーの中でのITでしたが、これからは工場のような現場でITがどんどん進化していきます。ネットワークやセキュリティも含めて、全てをITで制御するような世界が目の前まで来ています。

技術者こそが生産性を上げていく、労働人口が減る中で生産性を上げていきたい

――最後に今後の展望を教えてください

[正木氏]日本の生産性を上げていくのは技術者だと思います。ITと技術、ソフトとハードを融合し、掛け合わせることで、皆さんの働き方や生活を変えていきたいと思っています。

 未来に目指しているのは、IoTやロボティクス、サイバーセキュリティ、そしてCASE(Connected/Autonomous/Shared&Services/Electricの略でクルマの未来を示す概念)です。

 今日本では人口が減っていて、2025年には約500万人の労働人口が減ります。労働人口が500万人減るということは、福岡県や北海道の人口に匹敵する規模がいなくなるということです。残された日本の経済を発展させるためには、生産性を向上させるしかありません。われわれはここに注力して、PoCを繰り返しています。商品になるのはずっと先になるものもありますが、これらの領域への投資は続けていきます。

 ぜひ、CEATECの会場に来ていただき、新しいテクノロジーと人が融合した姿を見てください。パーソルが人材会社というイメージを持たれている皆様に、ぜひ良い驚きを感じていただければと思っています。

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