学生が楽しく学べるCEATEC!出展企業と主催者が「リアル」で取り組む、「未来に触れる場」としてのCEATECとは? 

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 CEATEC 2022が、2022年10月18日から、幕張メッセで3年ぶりに開催される。オンラインでの開催を組み合わせたハイブリッド開催は今回が初めてだ。

CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏

 そのなかで特筆できるのは、CEATEC 2022において、学生を対象にした参加型イベントや、オンラインコンテンツを充実させた点だ。

 Society 5.0の実現に向けた最新技術や、今後の未来展望を学ぶことができる複数のプログラムを用意しており、CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏も「学生にCEATECに来場して、見てもらい、デジタルに興味を持ってもらいたい」と語る。

 なぜ、学生を対象にしたイベントやコンテンツを充実させたのか。その狙いを聞いた。

CEATECを「テクノロジーに触れる場」として学生にも体験してほしい

 CEATECは、もともと学生向けの企画展示に力を入れてきた経緯がある。

 高校や高専、専門学校などの理系の生徒たちが学校単位で来場したり、最先端技術に興味を持つ大学生が会場に訪れたりするケースが目立っていたほか、2018年には東京医科歯科大学の100人の学生がCEATECを授業の一環として活用。医系の学生が、今後のデジタル社会の到来を見据えて、最新テクノロジーに触れる場として活用した例がある。

東京医科歯科大学では2018年に「CEATEC視察授業」を実施、グループディスカッションを通じて研究発表なども行った

 また、2019年には、学生が会場見学の拠点として活用したり、出展企業の経営トップや若手社員が学生のために講演を行ったりする「CEATEC Student Lounge(学生交流ラウンジ)」を設けたり、多くの学生たちがCEATECを学びの場として利用できるようにした。

CEATEC 2019の学生交流ラウンジ

 CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、「幕張メッセ会場で開催したCEATEC 2019では、7500人以上の学生が来場した。総合展示会でこれだけ多くの学生が来場するイベントは例がない。過去2年間は完全オンライン開催となったため、学生向け企画が少なくなったが、CEATEC 2022では、リアル会場でのプログラムと、2年間培ったオンライン開催のノウハウを生かして、新たな形で学生向けの企画を充実させた」と自信をみせる。

学生向けの企画をさらに拡充、幕張メッセでも、オンラインでも

 CEATEC 2022では、主催者である電子情報技術産業協会(JEITA)が中心となって「若者と未来をともに作り出すセッション」と銘打って、いくつかの企画を用意している。

 まずは、パートナーズパーク内に設置されるJEITA半導体部会による「JEITA半導体フォーラム2022」である。

 展示ブースでは、半導体が、社会にどのように使われ、貢献しているかを、国内半導体企業8社の展示を通じて訴求。タカラトミーの協力により人がコマとなって参加する「半導体産業人生ゲーム」を用意し、半導体産業で働く人生を疑似体験できる(詳細はこちら

タカラトミーの協力による「半導体産業人生ゲーム」。「半導体産業で過ごす人生」を1プレイ約5分間で無料体験できる。各コマには、半導体産業ならではの出来事が書かれているそうで、職種を選択したり、キャリアアップなどを経験したりできる。

 さらに、半導体人材関連コンファレンスを開催し、幕張メッセ会場でセッションを行ったり、オンラインでシンポジウムを配信したりする。これらはすべて学生を対象に実施するものであり、次世代を担う学生たちに半導体産業に対する関心を持ってもらうのが狙いだ。

 「半導体そのものを展示するのでなく、半導体がどのように使われているか、社会の課題解決にどう貢献しているのかを見てもらえる展示になっている。また、全国の学生がオンラインで視聴できるコンテンツも用意している。これらの展示やコンテンツを通じて、学生たちに、半導体産業に興味を持ってもらいたい」

半導体部会が実施する、学生向けの人材関連コンファレンス

 2つめは、「U-30みらいをともにつくる会議」である。CEATECで初めて開催する企画であり、30歳以下の若者たちが作り上げるイベントと位置づけている。オンラインを活用し、会場と全国を結びながら、個人や企業が未来をどう捉えるかを議論し、アートやデザイン、エシカルやサステナブルなどの視点からも討議を行う場となる。

 「30歳以下という範囲は、学生や入社5、6年の社員たちが、次世代のためには重要な年齢層であるという認識から設定した。理系の学生や社員だけでなく、文系の学生や社員たちにも参加してもらえる内容になっている。U-30みらいをともにつくる会議の取り組みは、今後、全国展開を視野に入れながら継続的に開催していくことも考えたい」とする。

 エシカルやサステナブルに対する関心は、若い世代が強い関心を持っている領域でもある。どんな議論が行われるのかが楽しみだ。

 3つめは、オンラインを活用した体験の強化である。これは、リアル開催をした3年前のCEATECにはなかった企画だといえる。

 大手電機企業などが出展するトータルソリューションエリア(7、8ホール)の中央部に、学生が自由に利用できるラウンジや見学をサポートするコンシェルジュデスクを設置。その2階部分にスタジオを作り、会期中の4日間に渡って、ここから情報を配信する。フリーアナウンサーの榎戸教子氏によるCEATEC AWARD受賞企業へのインタビューなどのプログラムを予定しており、出展企業の若手社員が登場して、展示内容や見どころなどを説明するコンテンツも配信する。これらの内容は、すべて学生たちが視聴することを前提とした構成になっているのが特徴だ。

「学生に気軽に参加してもらえるように、YouTubeでの配信を予定している。YouTubeのライブ配信中にも、チャットができるように追加の機能も組み込んでいる」という。

会場、オンラインの双方で学生向けの企画を多数実施する

 さらに、数理・データサイエンス・AIの具体的な活用事例の紹介も、学生向けにオンライン発信する。

 文部科学省では、拠点校11大学、特定分野校18大学を選定し、「数理・データサイエンス・AI 教育」の全国展開を推進しており、CEATECでのこの取り組みは、文部科学省の施策と連動したものになる。「社会において数理・データサイエンス・AIがどう使われているのかといった実装例を、企業の社員たちが解説し、それを全国の学生たちが、オンラインで視聴できるようにする。また、CEATECの終了後には、これをコンテンツとしてまとめ、全国の大学が教材として使えるようにしたい」という。

 データサイエンスなどの具体的な活用例などを聞くことができる貴重なコンテンツとなりそうだ。

学生向けのセッションリストも公開されている

未来を体験する「CEATEC体験」を学生にも!

2019年に開催された学生向けコンファレンスの様子

 CEATECには、「CEATEC体験」という言葉がある。これは、CEATECの展示やコンフアレンスへの参加を通じて、「見て」「聴いて」「感じて」「考える」といった体験をしてもらうことが、CEATECに参加する人たちの価値につながることを表現した言葉だ。

 では、「学生版CEATEC体験」とはなにか。

 CEATECの鹿野氏は、「デジタルを掛け合わせる『×デジタル』という表現がよく用いられているが、その言葉を聞くだけでなく、デジタルによる変革を、より具体的に体験できるのがCEATECの特徴である。これからデジタルを学ぶ世代が、いち早くデジタルを知り、体験できる場になる。それには、テクノロジーを活用して実現した製品、サービスを見たり、聞いたりするだけでなく、製品やサービスが社会に実装されることで、課題をどう解決しているのかを知り、感じることができるのが大切だ。学生が、こうした実例を見たり、体験したり、考えたりできる場所は意外に少ない。学生にとってのCEATEC体験は、まさにそこにあるのです」とする。

 そして、「来場しやすい首都圏の学生だけでなく、日本全国の学生たちにも、オンラインのインフラを使って、CEATEC体験をしてほしい。テクノロジーの進化と、それを実装することで様々な社会課題が解決されているいまの姿を体感してもらいたい」と語る。

 今回のCEATEC 2022では、開催趣旨を「経済発展と社会課題の解決を両立するSociety 5.0の実現を目指し、あらゆる産業・業種の人と技術・情報が集い、共創によって未来を描く」としている。

 「Society 5.0の実現は来年の話ではなく、これから10年後、20年後、30年後の話になる。Society 5.0の実現を目指すための展示会であるCEATECにおいて、次世代を担う人たちにCEATEC体験をしてもらうことが大切である」とし、「CEATECを学生向けの学びの場にするという取り組みは、今後の重要なテーマになる」とも語る。

「次世代人材の育成」が新たなテーマに

 CEATEC 2022において、学生向けの各種プログラムを充実させる狙いの背景には、人材不足に対する半導体産業やIT・エレクトロニクス産業の危機感がある。

 たとえば、半導体産業では、2000年から2020年にかけて、世界の市場規模は20兆円から50兆円へと大きく拡大したが、その間、日本の半導体産業の人口は、19万人から8万人にまで減少。日本の市場規模は20年間に渡り、ほぼ4兆円で横ばいのままだ。

 2030年には世界で100兆円の市場規模に拡大することが想定されているが、JEITAでは、日本の半導体産業がこの成長に追随するには4万人以上の人材を獲得する必要があると試算する。

 半導体産業での人材不足は日本において、大きな問題であることは確かだが、これは、半導体産業だけの話ではない。経済産業省は2030年までに最大で79万人のデジタル人材が不足とすると見ている。また、先ごろ発表された世界デジタル競争力ランキングでは、日本は29位とさらに順位を落とし、その理由のひとつに人材不足があげられている。

 デジタル人材の不足は、半導体産業の話だけでなく、IT・エレクトロニクス企業にとっても同様の課題となる。さらには、DXが幅広く浸透するなかで、デジタルテクノロジーを利用する企業にとっても、デジタル人材不足は競争力強化に向けて大きな課題となっている。

 CEATECは、2016年に、「最先端IT・エレクトロニクス総合展」から、「CPS/IoT Exhibition」へと舵を切り、「Society 5.0 の総合展」へと進化。テクノロジーを持つIT・エレクトロニクス産業からの出展だけでなく、テクノロジーを活用する様々な産業の企業が出展する展示会へと変化してきた。自動車、金融、建設機械、玩具、旅行、住宅、繊維など、様々な産業からの参加が相次いでいる。

 「デジタル人材の獲得や育成は、あらゆる企業の課題である。Society 5.0 の総合展へと変貌したCEATECこそが、デジタル人材の育成に適したイベントである。CEATECにおいて、学生向けのプログラムを増やすことは、日本の産業界におけるデジタル人材育成のための活動のひとつにもなる」と、CEATECの鹿野氏は語る。

 これまでにも様々な挑戦に取り組んできたCEATECだが、今年のCEATECは、次世代人材の育成という新たなテーマに本気で取り組んでいる。

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