2.5GbE対応のNASをもっと速くしたい!! 速度と容量をアップしつつデータも保護するおトクな方法 【テレワークグッズ・ミニレビュー 第49回】

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今回はNASに外付けHDDを買い足して、容量倍増&速度アップ&バックアップの実現を目指す

 我が家にアイ・オー・データ機器のNASであるLAN DISK「HDL2-AAX4E」を購入したのは、この連載の第34回でもお伝えしたとおり。このNASは2ベイの4TBで、2.5GbEにも対応したモデル。リモートアクセスも容易で、自宅に置いたNASにオフィスや外出先からアクセスすることもカンタンにできる。最近は外に出る機会も増えてきただけに、今後ますます活躍してくれそうだ。

 といってもその時点では自宅の有線LAN環境はギガビットだったので、このNASの本来の性能を引き出せてはいなかった。そこで、比較的手頃な価格で手に入る2.5GbEのスイッチングハブとUSBタイプのLANアダプターなども導入することで、仕事部屋の中だけは2.5GbE環境を構築。HDL2-AAX4Eの性能を最大限引きだそうとやってみた。その模様は第45回で紹介しているが、リードについては1.5倍程度の速度になって、それまでちょっと不満のあった、ファイルを扱うときの遅さが改善した。ただ、せっかく2.5GbEにしたものの、ライトの速度はほとんど変わらず。どうもネットワーク以外の部分がボトルネックになっているようだ。

 と、ここまででもまぁなかなかの速さで満足していたのだが、ついうっかり思いついてしまった。前置きが長くなったが、ここからが今回の本題だ。

RAID0にしたらもっと速くなるんじゃないか?

 そう、RAID0にしたら、もっと速くなる可能性があるじゃあないか!!

 HDL2-AAX4Eは、デフォルトではアイ・オー・データ機器独自の「拡張ボリューム」という設定になっていて、これまでそれで使っていたのだ。これは概ねRAID1に近く、2ベイに組み込まれた2台のHDDに、それぞれ同じ内容を書き込んでいる。そのため、どちらかのHDDにトラブルが発生しても、壊れたHDDのほうを入れ替えることで、復元することができるわけだ。

 いわゆる「ミラーリング」と呼ばれるものだが、デメリットもあって、例えば筆者の使っているHDL2-AAX4Eの場合だと、2TBのHDDが2台搭載されて容量は4TBと言いつつも、実際には2台のHDDに同じデータを書き込むので、実質2TB分の容量しか使うことができない。

 一方のRAID0は「ストライピング」と呼ばれるもので、データを2台のHDDに分散して書き込む。つまりHDDの書き込み速度の限界を超えられるわけで、理論上では速度は倍になるハズ。

 加えてミラーリングのように容量が半分になることもない。つまりRAID0にすれば、速度と容量が倍になる可能性があるわけだ!!

 ただしデメリットもある。

 ミラーリングでなくなれば、2ベイNASのメリットである冗長性がなくなる。なくなるどころか、どちらかのHDDが壊れた時点ですべてのデータが壊れるので、故障のリスクはむしろ高まるわけだ。

 ううむ、これはNASにとってはかなりクリティカルな弱点だ。

 だがしかし、このアイ・オー・データ機器のHDL2-AAX4Eには、そんな弱点を覆す素晴らしい機能がある。それがUSBの外付けHDDを使ったバックアップ機能だ。

 しかもスケジュールで毎日(曜日ごとに設定可)同じ時間に自動バックアップができ、バックアップが終わったらNASごと電源を切ることもできる。また、差分バックアップにも対応するので、バックアップにかかる時間も短くて済むなど至れり尽くせり。

 つまり外付けHDDを1台買い足すだけで、いざというときのデータ保護も担保しつつ、RAID0の速度と倍の容量が手に入るというわけだ。ミラーリングのまま容量を倍にしようと思ったら、HDL2-AAX4Eの場合だと4TBのHDDを2台買い足す必要があるわけだが、この方法なら外付けHDD1台分のコストで、容量に加えて速度までアップできる。なんだかとってもお得な気がするじゃないか!!

RAID0で速度が倍にな……らない…だ…と……

 ということで、まずは本当に速くなるのかを検証すべく、RAID0にしてみることにした。

 RAIDを変えるときにはフォーマットが必要なので、一度はNASに移行した500GBほどのデータをローカルに移し替える。といっても2.5GbE化で読み込み速度は上がっているので、最初にNASにデータを書き込んだときと比べるとだいぶスムーズだ。

 そしてRAID0へと変更。LAN DISKの設定変更はウェブブラウザーから行うが、そのブラウザ画面からマニュアルにも飛べるので、こういった初めてやる操作でも比較的すぐに調べて実行できるのがありがたい。

REID0にするためにはフォーマットのし直しが必要。操作は簡単だがデータをバックアップすることは忘れずに

 フォーマットをすると、以前作った共有フォルダなどもなくなるので、作り直す必要がある。ただ、ユーザーアカウントは前のが残っていたので、それぞれを共有フォルダと紐付けた。

 と、ここまでできたら共有フォルダの1つをネットワークドライブに指定して、CrystalDiskMarkで速度計測をしてみる。果たして速くなるのか?

2.5GbE化と拡張ボリュームの状態で計測した結果

2.5GbE化とRAID0にして計測した結果

 ということでその結果は上の写真の通りだが、まず読み込み速度については、2.5GbE化したことで速度が1.5倍程度になったが、そこからさらにRAID0にしてみても、頭打ちしているように速度はほぼ変わらなかった。一方書き込み速度については、2.5GbE化したときにはほとんど変わらなかったものの、今回のRAID0化で1.4~1.5倍程度に向上した。

 残念ながら理論上の2倍にはならなかったのは、NASのCPUがボトルネックになっているのかもしれない。

 それとアイ・オー・データ機器のウェブサイトの説明を読むと、拡張ボリュームの場合、RAID1とは違って読み込みは片側のHDDから読み込む仕様とあったが、この結果を見る限り2台同時に読み込んで速度アップをしているようにも見える。一方書き込みについては、2台のHDDにそれぞれ書き込むので速度アップできなかったところ、RAID0の分散書き込みができるようになったので速度が上がったと考えるとつじつまが合う。

 数値上では期待したほどの速度アップにはならなかったものの、実際にファイルをコピーしてみると、体感としては十分に気持ちがいい。特に一度ローカルに移動したデータを再度書き込むときの速度が全然違う。まだギガビットだったときにコピーしたときは、「さすがに時間がかかるなぁ」と思いつつちょびちょびとデータ移行していたのが、今回は場合によっては100MB/s以上の速さでどんどんコピーが進んでいく。数字で見たときはちょっと残念な気分だったが、こうして体感速度で明確な差が出るとうれしさが違う。

 そして容量もアップしたので、画像ファイル以外にもいろいろと放り込んでおく気になった。我が家のPCもそろそろ古くなってきているので、この機会にいろいろとバックアップしておきたい。

NASのバックアップに3年保証のWD REDモデルを奮発したが……

 ということで速度と容量で大満足のRAID0化だが、弱点となるバックアップについては、先にも書いた外付けHDDで対応しておきたい。

 といっても、外付けHDDはなんでもよいわけではなくて、アイ・オー・データ機器のウェブサイトには適合するHDDが掲載されている。

 どれにしようかと調べていると、なんとNAS向けの高耐久HDDである「WD RED」を搭載したモデルがあることを発見してしまった。

 さらにこの電動ファンも搭載しているタイプで、3年保証&データ復旧サービスが付くなど、信頼性には期待ができそうだ。多少お値段は高くなるが、バックアップ用のHDDがNASより先に壊れるようでは意味がない。RAID0の故障対策として、安心できるHDDを選びたいと思った。

 ということで4TBの「HDJA-UT4RW」を早速注文。

 まずその見た目だが、デカい。電源内蔵タイプでACアダプターが不要なのだが、まさにACアダプターの分本体が大きく(長く)なった印象だ。LAN DISKが2ベイの割に小ぶりなので、横に並べると奥行きが余計に長く感じる。あと特長といえば横置きもできるぐらいだろうか。何しろただの黒い箱なのでこれと言って書くこともない。

HDJA-UT4RW

背面には電動ファンを内蔵。スイッチとケンジントンロック、USBポートとそしてネジ!?

電源も内蔵しているのでACアダプターはない

ゴム脚が付属していて横置きにも対応

結構大きい。2ベイのNASと比較しても負けない存在感

 ただ、なにしろ真っ黒なケースに入っているので、本当にWD REDが入っているのかは見ることができない。いや、入っていないワケはないのだが気になってくる。でも分解してしまえばせっかくの3年保証も効かなくなるだろう……。

 だがしかし……、やっぱり気になって気になって仕方がない。筆者は子供のころから目覚まし時計やらリモコンやらを分解しては戻せなくなって怒られていた口だ。しかも背面にこれ見よがしにプラスのネジが見えているじゃぁないか。

 ということで読者の皆さまの期待に応えてうっかり開けてしまった。さらば3年保証。

 当たり前だが中に入っているのは市販されているのと型番も全く同じWD REDであった。くれぐれも読者の皆さまはくれぐれもマネしないでほしい。

開けなくても分かっていたことだが、Westen DigitalのWD Redを搭載している

バックアップを設定、ミラーリングという選択肢も

 一通り撮影も済んだところで接続して電源ON。ファンが回るがぜんぜん静かだ。ベッドの枕もとにあったら少しは気になるかもしれないが、PCやらNASが動いている仕事部屋ではまったく問題ない。

 NASと付属のUSBケーブルで接続したら、NAS側から専用フォーマットを実施。さらにバックアップするフォルダとバックアップを実施する曜日や時間を選べば設定は完了だ。

 実際に運用してみると、バックアップの時間以外はパイロットランプさえ点かないので、ほぼ存在感は感じない。

NASとUSBで接続。NASはUSB3.1のポート3に繋ぐ必要がある

LAN DISKのホーム画面から「ボリューム」>「USB3」>「フォーマット」を選び「専用フォーマット」を行う

続いて「バックアップ」の設定。毎日2時30分からバックアップを開始し、終わったらNASをシャットダウンする設定にした(HDDの電源も連動する)。また履歴を14回(2週間分)残す設定にしてあるので、うっかり消してしまったファイルを復活することもできる

最後に「有効」をグリーンになるようにしておくこと。これを忘れるとスケジュールが行われない

 ちなみに、LAN DISKでは、バックアップではなくミラーリングという方法も存在する。バックアップが例えば毎日0時に前日との差分をバックアップするのに対して、ミラーリングはRAID1と同様、NASと外付けHDDに同時に書き込みをすることになる。

 つまりミラーリングであれば、NASと外付けHDDが同時に壊れない限り、データの保全はその直前まで全て行われることになる。

 一方でバックアップの場合、毎日バックアップしていたとしても、NASが壊れた場合に最大で過去24時間分のデータが回収できなくなる可能性がある。

 ただし、バックアップのメリットもあって、過去の履歴も記録しておくことができるので、例えば間違えてファイルを消してしまったとしても、過去にさかのぼって復活させることができる。

 ミラーリングとバックアップの差は、保存できる範囲にもある。バックアップがデータのみのバックアップなのに対して、ミラーリングはデータに加えてNASのシステム情報も保存する。データさえ回収できれば問題ないならバックアップで十分だが、NASを修理してシステムまで含めて元通りに復元させたいならミラーリングがよいだろう。

 筆者の使い方だと、メインは自分で撮影した写真や、カメラマンから納品された写真の保存なので、過去24時間程度であれば、カメラのメモリーカードとか、カメラマンとのやりとりで使ったサーバにデータが残っている可能性が高く、バックアップにしたときのデメリットが少ない。

 さらに、ミラーリングだとずっと稼働している状況になるので、NASのHDDとほぼ同時期に寿命を迎える可能性が高いが、バックアップなら1日1時間程度の稼働でよいので、ライフという意味でも分がありそうだ。

 ただ、NASに書き込んでいるときにバックアップするとエラーになることがあるそうなので、筆者の場合は深夜2時30分からバックアップすることにして、バックアップ終了後に電源を切るという設定にした。朝7時にはNASのスケジュールで再び起動するようになっている。

 それと第43回で紹介したとおり、NASはオムロンのUPSに接続しているが、このHDDの電源もUPSへと接続した。このHDDはNASの電源に連動する形になっているので、もし停電した場合にも、リンクでNASが自動シャットダウンすると、それに連動してHDDもシャットダウンすることになるわけだ。

 まぁ正直なところを言うと、バックアップであれば、1日1時間程度の稼働なので、WD REDモデルまで選ばなくてもよかったかなとは思うところもあるが、とはいえ外付けHDD1台分の価格でNASの容量が倍になり、速度も速くなり、データのバックアップもできると思えば、結構オススメできる選択肢ではないかと思っている。

バックアップやミラーリングで読み書き速度に変化はあるか?

 ここまで書いたところで、編集部の同僚から「ミラーリングにした場合に書き込み速度はどうなるのか?」との質問が出た。確かに外付けHDDにも同時に書き込むとなると、せっかくRAID0にしても速度が遅くなる可能性はある。

 念のためバックアップの場合でも計測したので両方掲載しておこう。

RAID0でバックアップの計測結果。RAID0にしただけの時より少しだけ遅くなっているがおそらく測定誤差の範囲だと思う

RAID0でミラーリングの計測結果。リードは誤差の範囲かな? というところだがライトは15%程度遅くなっている

 結果としてはバックアップモードでも若干数値が落ちているが、テストする度に数値がばらつくのでその範囲だと思われる。実際バックアップしている時間以外は外付けHDDはパイロットランプさえつかない状況なので、影響はないと思って良いだろう。

 一方ミラーリングだと、なぜかリードのテスト時もパイロットランプが点滅する。書き込み時だけでなく読み込みの時も見に行っているようだ。数値としてはリードについてはまぁばらつきの範囲かな、というところだが、ライトについては15%程度遅くなっている。拡張ボリュームよりは速いがRAID0単独よりは遅い。また、普段からHDDが駆動していてパイロットランプも点滅を繰り返している状態で、バックアップの時以外は動かないバックアップモードと比べると、ライフの面でも明確に差が出てきそうだ。

 ちなみにミラーリングモードにするのは結構大変だった。NASの容量や、その時点で保存されているデータの量によっても変わるかもしれないが、今回の場合ミラーリングの再構築で8時間30分ぐらいかかっている。ミラーリングにする場合は覚悟しておこう。

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