狂気と戦慄の「首狩りホラー」を手掛けた23歳の新人監督、きっかけは映画祭で話題の自主制作

ビジネスジャーナル

松野友喜人監督
松野友喜人監督

 吉田伶香、伊澤彩織、バーンズ勇気、石川翔鈴、安斉星来、吉田莉桜らZ世代のニュースターが血まみれで挑むホラー映画「オカムロさん」が10月14日に公開される。次々と生首が飛び交う狂気と戦慄の首狩りホラーを手掛けたのは、弱冠23歳の若手監督・松野友喜人。しかも、今作が商業映画としては初の監督作品だという。一体なぜ新人の彼がメガホンを取ることになったのか? どこにでもいそうな礼儀正しい若者にしか見えないが、身の毛がよだつストーリーを生み出した彼の頭の中に何が渦巻いているのか?

――初の監督作品とは思えないほど、見ごたえのあるバイオレンスホラーでした。まだお若いですが、今作のメガホンを取ることになった経緯は?

そう言っていただけて光栄です。僕は日本大学芸術学部の映画学科の出身で、卒業時に制作した20分の短編映画「全身犯罪者」が今作の関係者の目に留まって、「実在する都市伝説を映画化しませんか」とお話をいただいたんです。「全身犯罪者」は過去の凶悪犯罪者たちが時空を超えて登場し、めちゃくちゃに突っ走る荒唐無稽なストーリーで、出演も編集も自分一人だけの超低予算の自主制作だったのですが、いくつかの映画祭にノミネートしていただけたんです。もともとバイオレンス系の作品が好きで、卒業制作として思い切り作ってみたのですが、まさか今作に繋がるとは想像していませんでした。

――「オカムロ」は実在する都市伝説だったんですね。

実はそうなんです。でも、今作の制作前はネットで検索しても「名前を呼ぶと、やって来て戸を叩く」「反応してしまうと、首を刈られる」という基本的なことしか書かれてなかったんです。だったら逆に、いろいろと広げていけるんじゃないか。この作品のオカムロが都市伝説として定着することになるかもしれないって、創作意欲が湧きました。そこから、オカムロと戦ってみたら面白いんじゃないか? 物理的に戦うのであれば、日本刀がいいんじゃないか? と構想が膨らみました。

――出演者が非常に豪華です。ネクストブレイクが期待される若手に加え、名脇役の六平直政さんも出演しています。

これほどの素晴らしい役者さんたちに出演していただけたことが本当に光栄です。卒業制作は自分しか出ていないですし、仲間が不在の時はカメラを設置してピントを合わせるのも自分。完全に一人で撮影した日もありました。だから、役者さんを演出するのは今作が初めてでした。しかも、何十人もいるスタッフの中で一番若い僕がまさかの監督。現場に不慣れで、最初はカチンコの掛け声がかかっても、監督の僕がスタートだって気づいていないこともありました(笑)。スタッフの皆さんに助けられてばかりでしたが、かと言って監督が恐縮しっぱなしなのもおかしいよなって、心の中でせめぎ合いがありましたね。

――初めての演出だったということですが、どんな指示を出されたんですか。

冒頭のキャンプ場のシーンが撮影初日だったのですが、役者さんたちには本番前に自由に飲み食いして遊んでもらったんです。その様子を見ていて、すごく元の空気感が良かったので、「とりあえず最初は、好きなように楽しんで演じてください」と伝えて、それぞれの感情表現を生かしてもらいました。結果的に素晴らしい映像になったと思います。

あとネタバレになってしまいますが、非常に迷ったのが刑事役の六平さんの生首シーンです。「インパクトのある表情」をお願いしたら、「10個くらいやれるけど、どれがいい?」って全く違う表情を10パターンやっていただいたんですよ。真顔、悶絶の表情、顔の半分だけが動いている表情など、どれも素晴らしかったのですが、悩み抜いて映画で使った表情を選びました。そのシーンの撮影が一番強烈に印象に残っています。

――今作で最もこだわった点はどこですか?

監督だけでなく、脚本、編集、VFXも担当しましたが、「首狩りホラー」なので生首だけはしっかり描写したいという思いがありました。実は現場ではほとんど血のりは使わず、ほぼデジタル処理だけで作り上げたCGの首なんです。ですが、それぞれの役者さんの顔を3Dスキャンして、本人の顔と首周りのデータを使って、表情だけでなく、生首の断面も作り上げるというマニアックなことをやっています。

――ホラーを撮っていると怖くなりませんか? 血まみれが平気な松野監督の頭の中が気になります。

犯罪系やバイオレンス系の作品は好きですが、ちゃんとビビってますし、怖いですよ(笑)。実は中学生になるまで、親の仕事の関係で上海と台北に住んでいて、現地では見たいテレビや映画がなかったので、よくDVDを買って見ていたんです。手に入る作品が限られていたのですが、その中でハマったのが「13日の金曜日」などのホラーや実録物でした。モデルになった事件などをネットで検索しているうちに、そういうジャンルに惹かれるようになっていました。小さい頃に趣味の悪いものに触れちゃったんですよね(笑)。

――自ら作品を撮ろうと思ったきっかけは?

今作の音楽を担当したJun Gotoの影響なんですよ。実は同じ上海の日本人学校に通っていて、小学2年生からの付き合いなんです。当時、彼がビデオカメラを持っていて、一緒に撮影して遊んでいたんですよね。その後、彼は音楽の道に進んだのですが、僕の原点になりました。

日本に帰国してからは、地元の中学校になじめなくて、一時期は不登校になっていたのですが、美術の先生が「映画が好きなんでしょ。暇なんだから自分で撮ってみたら?」って、iPadを貸してくれたんです。同級生の姿を撮影して30分弱の作品にまとめたら、卒業式で流してもらえて、予想外にウケが良かったんですよ。その時の歓声が気持ち良くて、今も映像を作り続けているのかもしれません。

――今作で僧侶役を演じた内田寛崇さんも同級生だそうですね。

大学の同級生です。本物のお坊さんでもある映像作家で、劇中のお寺は彼の実家なんですよ。だからお経も仏具も全部が本物。ホラー映画なのに本物のお坊さんを起用できたのは、すごく良かったと思います。試写ではJun Gotoの音楽と内田の読経風の歌声が流れる中、エンドロールに自分や彼らの名前が映った時はちょっとエモくなりましたね(笑)。

――最後に今作の手応え、そして今後の作品の構想などを聞かせてください。

監督の自分も若いのですが、主演の吉田伶香さんをはじめ次世代のニュースターが集まった、若い才能が集まった攻めた映画になったと思っています。「オカムロ」と検索してしまうと恐怖に陥る「検索系ホラー」でもあるので、ぜひ映画を見ていただいて感想をSNSで発信していただきたいです。ちなみにオカムロという名前の方は身分証を提示してもらえれば、無料で鑑賞いただけます。

今後は都市伝説系の作品をもう一度やりたい気持ちもありますし、ヒーローものや会社員ものも撮ってみたい思いもあります。実はホラーだけでなく「男はつらいよ」も大好きで、全作見ているんです。人情もの、恋愛ものもやってみたいな(笑)。とにかく今はいろいろ撮りたいので、どんどん挑戦したいです。

(構成=中野龍/フリーランスライター)

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