散々な回転ずし:かっぱ寿司社長の逮捕にみる日本の物まね文化

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日本では9月に台風が7つ発生かと思いきや、北米ではカナダにハリケーンが来てトルドー首相は国葬参加を取り止めました。現在進行中のフロリダなど東部を襲っているハリケーンは一部で史上最多の死者となるのではないかと報じられるなど厳しい状況となりそうです。自然災害とはいえ、温暖化が引き起こしたであろう様々な環境変化は街づくりやインフラの在り方を変えていくのでしょう。その膨大なコストを財政出動で賄うので相当の困難が予想されますが日本の強靭化政策もいよいよ本腰を入れる時がきたようです。

では今週のつぶやきをお送りします。

散々な9月が終わったけれど…

株式市場は一時的な反発が期待できるけれどdead cat bounce(死んだ猫でも跳ね返る)だろうと申し上げました。跳ね返りのばね役は英国の「わけワカメ」となった超長期債買い入れが担ってくれました。硬軟使い分けなどという美しい表現ではなく、その無茶苦茶ぶりに翻弄されただけです。時として英国人は何を考えているかわからない時もあるのですが、跳ね返った時のニューヨーク市場は見事に騙されたわけです。とすれば英国は死んだ猫役なのでしょうか?

それはさておき、市場ではアップルショックに今日はナイキショックと市場の懸念はモノが売れないことに行きつきます。日本でも半導体のキオクシアが一部工場で30%減産します。企業景観は数字がまとまってからなので割と遅く、中銀の政策は更にそれに遅行するためにFRBの金利政策は手元と2か月程度のタイムラグがあると考えています。私の体感ですが、消費の買い控えは相当ひどく、夏から一気に冬が来たような感じです。スーパーもバーゲン品だけがすっからかんの状態です。本来なら11月から12月は消費が盛り上がるのですが、10月をどう乗り切るかネックになりそうです。

FRBも景気を犠牲にしてでも物価対策を、と大見栄を言っていられないでしょう。企業は既に人員削減や採用見合わせを発表し始め、高くなった人件費と落ち込む労働生産性に悲鳴を上げています。また米ドルが必要以上に買われてしまい、それ以外の国では輸入物価が落ちない状況になっています。例えば原油が米ドル建てでカナダドルが対米ドルで安いこともあり、当地のガソリンはリッターあたり現在2.40㌦をつけています。円に換算すると255円です。いくら物価水準が違うとはいえ、産油国なのに勘弁してほしいです。まずはドルの価値を下げる、このためにはFRBが強気発言を控え粛々と作業するべきです。

散々なプーチンの夢

思った通りウクライナ東部4州を勝手に併合しました。「併合」なんて言う言葉は歴史の教科書にしか出てこないと思っていましたがプーチン氏は2014年に次いで「二匹目のドジョウ」を得たつもりなのでしょう。三匹目の気持ちもまだ失っていないとされます。今回の事態は戦略的にもウクライナは手を焼くかもしれません。諸外国はもっと難しいと思います。戦争ゲームなら例えばシベリアとか樺太を攻めてかく乱させる作戦はあります。これをすればプーチン氏はとてつもなく厳しい状況に陥ります。

しかし、彼は核のボタンを握りしめて「できるものならやってみろ」というはずです。これ、ゲームではないのです。現実に起きていることですが、彼自身、上げたこぶしを降ろすタイミングを失ったとしか言いようがありません。今になって一部報道で「停戦交渉の用意がある」と述べたとされるのは「この併合を認めろ、そうしたら停戦してやる」ということでしょう。もちろん誰もこの交渉に乗ってきません。

ここにきてプーチン氏も攻めから守りに入ったように見えます。そして停戦交渉の用意があると言ったなら四面楚歌を裏打ちしたようなものです。頼りにしていた中国はそっけなく、インドからは手厳しい言葉を返され、国内情勢は混とんとし、軍部の統制も乱れているとされます。現代社会は昔の戦争時代に比べはるかに複雑です。戦争英雄気取りなのでしょうが、それは絶対にありえないし、彼自身が破綻するのもそう遠くないと思います。人間のメンタルはどれだけ強い人でも四方、敵に囲まれていつまでも戦えるものではありません。ここに来てプーチン氏には時間という敵も新たに加わったと考えています。

散々な回転ずしビジネス

かっぱ寿司の社長が逮捕されました。同社長は「はま寿司」の役員をしていてその後、ライバルのかっぱ寿司を傘下に持つ会社に転職、社長に上り詰めるまでの間に「はま寿司」時代の情報を利用していたようです。このニュースを見て驚きはしませんでした。日本ではいかにもありそうな事件なのです。むしろ、よく立件したなと思います。これぐらいパシッとやらないと日本の物まね文化は終わりがありません。

ところで回転ずし大手はスシロー、くら寿司、はま寿司、かっぱ寿司の4社で7割の市場占有率とあります。が、何処も案外差別化に苦しんでおり、先日のスシローの景品表示法違反となるなどギリギリの攻防を繰り広げているとも言えます。業績も21年6月以降はほぼ横ばいで業界成長性に疑問符がついています。そうは言えども日本独特とも言えるこの回転ずし文化、なぜ、これだけ受けるのでしょうか?私の見方は「買い食い文化」の延長だと思います。つまりちょっとずついろいろ試したいという文化を寿司というより「回転皿」という娯楽が引き継いだと考えています。

ただ、回転すしは設備投資額が大きいし、インテリア的にダサいし、座席数が店舗面積に対して効率的ではないなどこの業界だけのガラパゴス化を感じます。北米では寿司はハンバーガー、ピザと並ぶ地位を得ていますが、当地ではほとんどが韓国系のすし屋です。そのうち「寿司は韓国の文化」といいかねない状況です。もう一点、一般的に白人は小出しされるよりメインディッシュを独り占めしたいので回転すしの北米展開は難しいと考えています。日本独自の回転寿司ビジネスはうどん/ラーメンからデザートまでなんでも飛び出す食のエンタテイメントと割り切るべきなのだろうと推測しています。

かっぱ寿司HPより

後記
このところエンジェルスの大谷さんから目が離せなくなっています。ダイジェスト版の画像を見ているとかつて大リーグで活躍した日本人選手とひと味違うものを感じるのです。それはひょうひょうとしていること。イチローさんとか松井さんは自分の野球美学が前面に出ていました。大谷さんだってもちろん美学をお持ちでしょうがもっと楽しんでいるのです。肩に力が入っておらずとてもナチュラルです。我々はいらぬ知識やうんちくや心構えを持ちすぎるのかもしれません。ストレートに楽しみ、集中し、結果を出すことを考えた方が良さそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月1日の記事より転載させていただきました。

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