アベノミクス、「時間当たり」実質賃金は上昇、ピーク更新…一人当たり賃金と乖離

ビジネスジャーナル

安倍晋三元首相(首相官邸のHPより)
安倍晋三元首相(首相官邸のHPより)

アベノミクス失敗の裏づけとされる実質賃金の低下

 アベノミクス以降の日本経済は、景気が好転したとされている。GDP統計によれば、日本経済は消費増税と景気後退期を除く2013年度と2015~2018年度にプラス成長を達成した。また、失業率は2017年度に23年ぶりに3%を下回り、現時点でもそれを維持している。しかし、実質賃金の低下を理由に、このような景気好転を体感温度の上昇として実感できている人は必ずしも多くないとする向きもある。

 ただ、日本の最低賃金や米国の賃金データなどでは平均時給で測られることからすれば、実質賃金が低下傾向にある背景には、一人当たり労働時間の減少という側面もあると考えられる。

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原因は物価の上昇と短時間で低賃金雇用者数の増加

 過去3回の景気循環を見ると、日本の景気が回復したのは、(1)2002年2月~2008年2月、(2)2009年4月~2012年3月、(3)2012年12 月~2018年10月の3回となる。(3)の特徴としては、極端な円高・株安の是正と世界経済の拡大により需要が拡大して労働需給が逼迫し、それに従って雇用が大きく増えた。そして、名目賃金が増加したことや物価が上昇したことがそれまでと異なる点である。常用雇用者数で見れば、(3)の局面では過去2回の回復局面をかなり上回る形で増加している。名目賃金が大幅に増加しているのも頷ける。しかし、実質賃金が大きく水準を下げている。

 この背景には、(1)消費増税等により消費者物価が上昇しており、名目賃金の増加が購買力の増加に十分に結びついていない。(2)増加した雇用者の中身を見ると、労働時間が短く賃金が低い女性や高齢者の増加が目立つこと等がある。実際、消費者物価が消費増税以降急激に水準を上げる一方で、実質賃金は過去2回の回復局面と比べて明らかに水準が低い。消費増税による家計の圧迫、労働参加率の上昇等の構造的な問題が重石となり、実質賃金の上昇が阻害されてきたと考えられる。

 このように、名目賃金の上昇以上に物価が上昇したこと、労働時間が短く賃金が低い女性や高齢者の労働参加が進んだこと等が実質賃金低下の原因となっている。

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最低賃金や米国基準では時間当たりの賃金

 しかし、実質賃金の低下の判断には注意が必要だ。実質賃金を判断する場合、一人当たり賃金で計る場合と、最低賃金や米国基準の時間当たり賃金で計る場合では、評価も変わってくる可能性が高い。

 実質賃金とは、企業従業員に支払っている総人件費と従業員数に着目し、総人件費を従業員数で割って名目賃金を計測し、それを消費者物価で除して平均的な従業員の購買力を測る。ただ、実質賃金の元になる名目賃金では、景気が良くなり失業者が労働時間の短い低賃金の職につけるようになると平均賃金を押し下げる要因となり、マクロ経済的にプラスの要素が評価されない。逆に、景気が悪くなり労働時間が短く平均賃金が低い労働者が職を失えば、マクロ経済的には悪いことだが、名目賃金の押し上げに作用してしまう。

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