Intel、Ponte Vecchioを正式発表

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Intelが8月に発表したIntel Data Center GPU Flex 170(TDP150W版)

 Intelは9月27日~9月28日(現地時間、日本時間9月28日~9月29日)の2日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるサンノゼ・コンベンション・センターで同社年次イベント「Intel Innovation」を開催した。そのイベントに合わせて記者向けの説明会を開催し、Ponte Vecchioの開発コードネームで開発してきたHPC向けGPUを「Intel Data Center GPU」として正式に発表、最初の顧客となるArgonne National Laboratoryへ出荷開始したことを明らかにした。

 また、8月に発表したArc GPUのデータセンター版となる「Intel Data Center GPU Flex」(開発コードネーム:Arctic Sound-M)についてのデモを行ない、競合製品となるNVIDIA A10などに比べて高性能を発揮できることなどをアピールした。

47個のタイルから構成されている巨大チップ「Ponte Vecchio」

Intel 上級副社長 兼 Accelerated Computing Systems and Graphics事業本部 事業本部長 ラジャ・コドリ氏

 IntelのGPU戦略は、スケーラブル(伸縮可能なこと、この場合は内部の演算器を増やしたり減らしたりできること)なGPUアーキテクチャを開発し、それを元にCPUに内蔵される内蔵GPU(Iris Xeとして第11世代~第13世代に内蔵)、PC向けの単体GPU(Arcブランドで既に発売されており、最上位モデルA770は10月12日から発売予定)、そして最後にデータセンター向けのGPUとして展開していくという戦略をとっている。

 ただ、NVIDIAやAMDがウォーターフォールと呼ばれる、まず一番規模が大きなHPC向けやハイエンドなゲーミングGPUをリリースした後、ミッドレンジやローエンドの単体GPU、そして内蔵GPUへと展開していくという戦略をとっているのに対して、Intelはまず内蔵GPU向けを第11世代Core(2020年9月発表)で採用した後、単体GPUとしてIris Xe Graphics(開発コードネーム:DG1)をリリースし、Intel内部でDG2と呼ばれていた製品をArcブランドで今年の3月にノートPC向けの単体GPUとデスクトップPC向けの単体GPUとして発表し、今に至っている。つまり、Intelは小さい方からまずリリースし、大きな方へとNVIDIAやAMDとは逆のアプローチをとったのだ。

 こIntelがこれまで内蔵GPUしかGPUをリリースしていなかったこともあり、まずは小さい方から初めて着実に上の方に展開していくという戦略をとったためと考えられる。ただ、例えばDG2がベースになっているArcではハードウェア・レイトレーシングのエンジンや行列演算を効率よく行なうXMXなどの追加の演算器が用意されているように、内蔵GPU(Xe-LP)には用意されていない演算器が追加されているなどされており、今後はIntelもNVIDIAやAMDと同じようにウォーターフォール型の展開になっていく可能性は高いが……。

Ponte Vecchioのモジュール

Ponte Vecchioのパッケージ

 そうしたIntelのGPU開発戦略で最後のピースとなっていたのが今回正式に発表されたHPC向けのPonte Vecchioで、今後は「Intel Data Center GPU」のブランド名で呼ばれることになる。NVIDIAで言えば「H100 GPU」(Hopper)や「A100 GPU」(Ampere)などの対抗製品となり、科学技術演算や巨大な学習モデルを採用したAI学習などの、超高性能な演算性能を備えるスーパーコンピューター向けのGPUという位置づけになる。

 Intel Data Center GPUの特徴は、47個のタイル(Intelのチップレットに採用されるチップの呼び方で、読者によりなじみがある言い方をするとダイ)をEMIB(2.5D)、Foveros(3D)の混載技術を利用して1つのパッケージ内に封入されていることにある。それによりHPCに必要な演算性能を実現している。

 今回発表されたIntel Data Center GPUは最初の顧客となるArgonne National Laboratory(アルゴンヌ国立研究所、米国エネルギー省の国立研究所)に向けてまず出荷され、同所のスーパーコンピューターとなる「Aurora」に採用されて稼働することになる計画だ。

 なお、このIntel Data Center GPUは、今は47個のタイルから構成されているフルバージョンのみだが、「最初の製品はArgonne National Laboratory向けに出荷されることになる、2023年になれば例えばタイルの数を限定したバージョンなどのバリエーションを出す可能性はある」(Intel 上級副社長 兼 Accelerated Computing Systems and Graphics事業本部 事業本部長 ラジャ・コドリ氏)と、来年(2023年)以降にAurora以外の製品向けにリリースされる段階でバリエーションが登場することを示唆した。

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