薄っぺらだった日中国交正常化50年の式典:政治家主導が失敗の原因

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1972年の日中国交正常化から50年を迎えました。この節目に様々な記念行事などの案が浮かんでは消えを繰り返し結局、事前の報道や告知も少なかったことで政治家など一部の人が形だけの式典を行うに留まりました。ペラペラのただやったという交際記録です。

両国は式典をそれぞれの国でセットし、岸田首相と習近平国家主席は祝電交換をしています。が、なぜ、この記念すべき節目に政治家だけが主導したのか、ここがそもそもの失敗だったかもしれません。日中関係は非常に厳しい問題が山積しています。が、それらの問題はどの視線で見るかによってかなり温度差があります。今回の形式的式典は一番厳しい関係にある政府同士が演出したイベントでした。

その式典の壇上には日中関係改善を期待している経団連の戸倉会長がいます。経済的には中国に進出する日本企業は圧倒的に多く、状況改善を願う旗振り役を演じています。22年6月時点で中国に進出する日本企業は12700社あります。これには香港とマカオは入っていません。うち、上海にはおおよそ半分となる6000社があります。アメリカに進出している日本企業が全部で6700社程度であることを考えるとその進出ぶりは極めて大きく、日経新聞が社説で「正常化50年機に世界の中の日中関係探れ」と主張するのもビジネス的配慮からでありましょう。(ここは敢えて左派的とはいいません。)

もう一つの切り口、人の交流という点では日本には在日華僑が78万人程度おり、うち、永住者や配偶者など日本に長期的に在留している人は34万人ぐらいいます。今回、ここも盛り上がらなかったと思います。在日中国人と日本人社会が融合しないのです。

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一方、中国にいる日本人は14万人程度でその大半は駐在員など一時滞在者であり、広い国土を考えると中国で日本人のコミュニティが盛り上がるような式典をするのは難しいでしょう。ちょっとしたイベントはあったと思いますが、コロナ制約もあり、極めて限定的です。

こうみると本来お祝いムードになるべきところが盛り上がりに欠けたどころか何もなかったのです。日中双方が利用するだけ利用し、政治的には問題を起こさないようギリギリの配慮を続ける状態を暗示しているとも言えます。

いわゆる友好関係は盛り上がったり盛り下がったりするのですが、それは主に政治的事情がコトを難しくするケースがほとんどです。日韓関係でも若い人や女性を中心に韓国のファン層が確立しているといってよいほど堅固なものがあるのですが、政治的には全くダメで改善の見込みもありません。中国に関しても日本人は中華料理が大好きだし、コロナ制約がなければ中国は観光のメッカなので旅行会社が大ツアーを組んでいたことでしょう。

この構図を見れば人とのつながりやビジネス関係は悪くはなく、政治の部分がネックになっているとも言えます。その場合、双方の政府や政治家が距離と時間を置き、お互いの冷却期間を作る「不干渉関係」を経て関係改善のタイミングを計るという方法はあるにはあります。現在の問題のほとんどが中国の拡大主義によって日本が影響を受けているわけで習近平氏が外交に関して現状維持とし、一旦国内問題に集中するぐらいの方針を示せば状況は相当改善すると思います。もちろん、こんなことはまったくの期待薄ですが、国家と人権へのリスペクトを中国は学んでもらわねばなりません。

日中関係を壊したいと思う人は少ないでしょう。ただ、極めて多くの日本人が中国を脅威に思っていることも事実です。我々は無防備故に何かあっても太刀打ちできるとは思えません。日本はこの50年間、中国に様々な技術移転をしてきました。あるいは違法な情報搾取や頭脳流失もありました。是非論を別にしてその助けもあり中国はようやく今の経済力を身に着けたわけで日本は感謝こそされど脅威にさらされる理由は何一つありません。

国家という人格に国の大小は関係ありません。カラダが大きければ強いという時代ではありません。アメリカや中国という超大国も日本やもっと小さな国も同じだけの権利と義務をもち、リスペクトされなくてはいけません。中国には歴史的にその発想があるはずです。その精神をもう一度思い出してもらい、日中関係が維持できれば良いと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月30日の記事より転載させていただきました。

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