「景気後退期に大きく変えるべきは メディア の使い方だ」:老舗バーガーチェーン クリスタル CMO ケイシー・テレル氏

DIGIDAY

アトランタを拠点とするファストフードチェーンのクリスタル(Krystal)は、今年創業90年を迎える。スライダーと呼ばれるミニバーガーは、創業以来の名物メニューだ。そのクリスタルが新しいマーケティングのアプローチを模索している。ブランド認知を向上させるだけでなく、新しい世代の顧客とも従来通りのつながりを維持するためだ。マーケティング環境がめまぐるしく変容し、断片化の度合いを深める今日、それはことさらに重要だという。

この取り組みを託すため、クリスタルはさきごろ、ケイシー・テレル氏を最高マーケティング責任者(CMO)に迎えた。テレル氏は、カーヴェル(Carvel)、シナボン(Cinnabon)、シュロツキーズ(Schlotzsky’s)、モーズサウスウェストグリル(Moe’s Southwest Grill)などを傘下に収めるフォーカスブランズ(Focus Brands)で、デジタルトランスフォーメーションの責任者を務めた人物だ。

昨年夏、クリスタルがとくに注力したのはストリーミング動画とマイクロインフルエンサーだった。新たなCMOの指揮下で、同社はこの方針を転換し、ブランドパートナーシップ施策に軸足を移している。直近ではラッパーの2チェインズ(2 Chainz)、NFLスター選手のヴィクター・クルーズと提携関係を結んでいる。

米DIGIDAYはテレル氏にインタビュー取材をおこない、顧客とのつながりを強める施策、Z世代の取り込み、景気後退への備えなどについて話を聞いた。

なお、本インタビュー記事は、読みやすさを考慮して若干の編集を加えている。

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――今年はとくにパートナーシップを重視しているとのことだが?

2チェインズとのパートナーシップには大いに期待している。彼はクリエイティブの責任者だが、どちらかといえばビジネスパートナーだ。我々がこれまでリーチできなかったオーディエンスに語りかけることのできる、すばらしいパートナーだ。ソーシャルでも何百万人ものフォロワーを抱えている。驚異的なリーチ力と発信力だ。

これまで接触するのが難しかったセグメントに語りかけ、彼らとのつながりを維持してくれる、非常に有力なパートナーだ。我々のブランドには特定のデモグラフィック属性を備えた中核的な顧客層があり、ターゲットがあり、ファンがいる。従来のファンに選んでもらえるクリスタルでありたいと願う反面、新しい顧客層、新しいオーディエンスへのリーチは常に模索している。

そこで、北東部ではヴィクター・クルーズとパートナーシップを結んだ。彼はニューヨークジャイアンツの伝説的な選手であり、スーパーボウルのヒーローだ。彼にはニューヨーク州とニュージャージー州のマスターフランチャイジーになってもらった。ほかにも複数の著名人と提携の話を進めている。

――なぜいま、ブランドパートナーシップを重要視するのか?

ほかのブランドもこのような取り組みをおこなっている。たとえば、マクドナルド(McDonald’s)もトラヴィス・スコットやメーガン・ザ・スタリオンらと連携して、すばらしい仕事をした。我々は単発のキャンペーンなどではなく、ともに成長できるビジネスパートナーを求めている。

――昨年の戦略と比べて、今年の戦略の特徴は?

重要なのはコンテンツだ。各チャネルを最新の状態に保ち、テレビとOOHを確実におさえ、合理的なテクノロジースタックを整備する一方、データを取得して顧客への理解を深め、コンテンツのパーソナライゼーションを通じてファン化を推進する。

しかしこの作業の大半はコンテンツ側にある。そのコンテンツが特定のオーディエンス向けのものであれば、それを可能な限りパーソナライズする。最大の方向転換は、パートナーシップへの注力だ。ファンについては、従来よりやや若い層にアプローチしている。誰もがZ世代をターゲットにしているが、既存の顧客を遠ざけることなく、若い人々の心に響くメッセージを考えなければならない。

大きく変える必要があるのは、どちらかといえば方法論であり、メディアの使い方だ。

――景気後退の影が迫るなか、2023年のマーケティング活動についてはどう考えているか?

我々はバリューブランドだ。景気のサイクルは幾度か経験している。長い年月のなかでは、消費者の節約志向も見てきた。経済危機が起こると、消費者のあいだには、ファストカジュアルやテーブルサービスのあるレストランから、バリューレストラン(クィックサービスレストラン)へと格下げする傾向が見られる。とくにメディアマーケティングの予算では、自分たちのエコシステムを満たすことを考えている。

誰もがやっていることだと思う。認知度や注目度を上げるには、外部のサービスに頼らざるを得ないが、それはどちらかといえばマーケットプレイスの話だ。クリスタルの顧客にとって合理的なテクノロジースタックを持たず、ファーストパーティチャネルを十分に活用できないなら、これについても誰かに頼るほかない。2023年に向けて、マーケティングテクノロジーやパーソナライゼーションをどう改良すべきか検討する必要がある。

――次のステップは?

一番大きな出来事は、新規のフランチャイズが生まれたことだ。クリスタルが最初のフランチャイズを開いたのは15年前のこと。場所はプエルトリコだった。そしていま、ヴィクター・クルーズと2チェインズの店舗を準備中だ。新しいオーナーの加入で、ブランドの活性化を図りたい。そしてクリスタルの認知を広げ、着々と店舗を増やしていることを知ってもらいたい。

[原文:How CMO of 90-year-old fast food chain Krystal is pushing to expand brand relevance

Kimeko McCoy(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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