ティッシュボックスを靴と一緒に並べると、それがもう靴でないことを否定できない。
というのはいきなり言い過ぎですが、誰でも小さい頃、空になったティッシュボックスを履いてみた人は多いと思う。そこに理由はなくともただ楽しかった。空は蒼かった。いつしか大人になり履かなくなったが、いまになって思う、あれは本当に靴なんじゃないかって。
というわけでティッシュボックスの靴としての実用性を検証してみたいと思います。
※2006年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
街での基本性能とその問題点
まず靴にとって大切なのは機能と見た目ですが、始めにおしゃれ度を判定してみたいと思う。最近のティッシュはデザインも良いし、とってもコンパクトだから絶対かっこいいだろう。
やべえ超かっけぇ、おしゃれマジOK。
……すいません、見た目のことは言わずもがななので保留ということで次は履き心地です。
いざ歩いてみると足と地面の間に厚紙一枚しかないので地面の感覚がダイレクトに伝わってくる。日本古来の足袋を思わせるその特徴、すごい。
が、歩きにくい。まったくもって歩きにくい。写真を見ると分かるが、かかとがはみ出ちゃってる。自分の足の長さは26cmぐらいだが、それはどうやらティッシュの許容値を超えてるようで歩くたびにかかとが浮き上がってどうにもならない。
仕方ないので土踏まずとティッシュボックスをガムテープでくっつけたら間抜けだけどずいぶん歩きやすくなった。やっぱり世界は等価交換が基本ですね。
振り向いて振り向かなくなる
靴の見た目はそれほどの違和感あるわけではないと思いますが、どうしても歩き方が不自然になるので、それで人目を、限りなく白い人目を引いてしまいます。
それにティッシュボックスが歩くたびにパコパコいうのでその音に反応して振り向く人もいる。人が履く靴としては欠点かも知れないけど、プープー鳴る子供靴の大人版と考えれば長所とも言い張れる。
全体的にはちら見オンリーでした。
耐久性に難あり
しかし機能性という面から考えると渋い顔をせざるを得ない。前述したけど歩きにくいから機動性に乏しい、数メートル歩くだけで嫌になる。
それに歩くたびに左右のティッシュがぶつかるから壊れるしコケそうになる。そんなこんなでティッシュボックスと精神がクタクタになってしまいました。
なのに次は山登ります
でもひょっとしたらティッシュボックスは山仕様なのかもしれない。山ではきっとすごい力を発揮するんじゃないだろうか。やや思考が飛躍しすぎだが、そういうことで次は山登ります。
街から一気に飛躍して山
挑むのは札幌から自転車で30分ぐらいのとこにあるこの円山、標高220mぐらい。
もちろんふもとから頂上に向かって一直線に進めるわけじゃないから、登るとなると2kmぐらい歩くことになる。
街中で数メートルしか進めなかったヤツにとってはなかなか厳しい。
とか言いつつ実は以前にも登ったことがあるので、ここなら出来るだろうという勝算を実は付けている。姑息。
では物理的にも精神的にも孤独な道を行ってきます。
意外でもない障害たち
さっき初めたばかりなのにいきなり座り込んでいて恐縮ですが、もう足の裏が痛い。
アスファルトの上ならまだいいけど、ここは山道。でかい石がそこかしこにごろごろ転がってるし、虫もいるのでうっかり踏んでしまうとそれこそ勘弁して欲しい事態になる。
丸太とかよりこの石がキツイ。
ツボを刺激で元気になるかと思ったら痛いだけ。
山でも別に変わらない
下の写真はこの日最初のすれ違い人。街と比べて山道は話しかけられ率が高いのできっと何か言われるだろうと身構えていたら挨拶だけでした。
ひょっとしてティッシュボックス馴染んでる?と思ったら振り返ってみるとすごいこっちを見てた。
やっぱりもう壊れました
突然足の一部分だけが痛くなったので、ティッシュボックスの様子を見てみるとこんな状態に。
たたんで捨てやすい構造があだになったか”ここを切り取ってください”とか書いてる場所がすっぽり開いて、靴下が露見してる。そもそもティッシュボックスは靴じゃないんだからそうなって当たり前、苦しくてもこのままやっていくしかない。
こんなことでそんなキザなセリフを吐くとは思いませんでした。
山には虫がいた
えっちらおっちらと登山を再開したその時、山神から刺客が送られた。
黒っぽい服装が悪かったのかハチに襲われた。それにしても後から撮ったとはいえこの緊迫感の無さ。写真を見て愕然としてます。
失って気付くもの
そんなことをしてるうちに右足のティッシュボックスがついに大破した。
ほとんど役に立ってないと思ってたけど、歩いてみると壊れる前に比べて格段に痛い。役に立ってたんだ。
「別れの後に優しさに気付いたってもう遅いのよ」
そんな声が聞こえた矢先、こんなのが現れた。
続く続く続く石段。
人が作ったのか自然にそうなったのかは知らないが、ティッシュボックスで歩くものにとっては厳しすぎる。早くティッシュボックス対応の山2.0が出てほしい。
登頂しました
それでも何とか登りきる。そしてついに……
ついに頂上に来た。おそらく世界で初めてティッシュボックスで山を登った人じゃないだろうか。偉業達成というより世界でひとりぼっちな感じだけど、最後までやりきった感動に打ちひしがれた。
なのになぜか直立不動で顔に影が差してるが、感動するとそうなるたちなので気にしないでください。
最終的なティッシュボックスの状態。
この山登りはティッシュボックスの素材の紙を山に還す旅だったんじゃないかと思うぐらい損失してる。そんな工程を乗り越えたこの神々しき雄姿、きっと読んでくれた方のみならず某前首相も感動してくれることだろう。
実用性を超えた美術的価値の高い逸品
結局ティッシュボックスの実用性を検証するために山まで登ってしまったが、 靴としては歩きにくいうえに使えるのは1日1回だけという結論が出た。これは靴として致命的かもしれない、 なにしろ一足100円とすると、100日で一万円。1年ではすごい値段になってしまう。
でも一般的には安いものより高いものの方が価値のあるものなんだから、 ティッシュボックスはガラスの靴のような美術品として家に置いておくべき靴なのかもしれない。
あ、それ普通のティッシュだ。