『picard(ピカール)』の冷凍パン全20種類を食べ比べた結果 … フランス人に言われた一言が切なすぎた

ロケットニュース24

『picard(ピカール)』は日本にも進出しているフランスの冷凍食品ブランド。日本では「意識の高い人が行くオシャレな店」というイメージが強いが、本場・フランスだと「食糧の買いだめに行く店」ってな感じの庶民的な雰囲気だ。

さてフランスといえば真っ先に思いつくのが『フランスパン』。実はフランスのピカールは、パンの品揃えが異常に豊富である。世界一パンにうるさいはずのフランス人が、わざわざ冷凍パンを買うという事実……つまりピカールの冷凍パンって、めっちゃレベル高いってこと?

・全20種食べてみた

そんなワケで私は、この日訪れたパリ市内のピカールで売られていた冷凍パンを、思い切って全種類購入してみた。

バゲット、ベーグル、クロワッサンに菓子パン風など全20種類、総額44.9ユーロ(約6501円)。

まず細長い形状が特徴のバゲットシリーズ。左から『du fournil』(1.3ユーロ)、『cereales』(1.3ユーロ)、『classiques』(0.85ユーロ)、『multigraines』(1.8ユーロ)、『muesli』(2.9ユーロ)、『complet』(2.2ユーロ)。

ピカールの冷凍パンはオーブンで加熱するのが基本。レンジより時間はかかるが、そのぶん味に期待が持てる。

短めのクラシック・バゲットが2本入り0.85ユーロ(約123円)。フランスのパン屋とほぼ同価格と言っていいだろう。真っ白なバゲット生地を加熱すること8分……

ありゃ? 期待ほどコンガリしなかった。しかしイースト菌の香りがイイ感じに漂い、明らかな格の違いを見せつけている。焼きすぎてもいけないので、このまま食べてみよう。

パン屋のバゲットと勝負できるウマさ……とまではいかないが、ホカホカフワフワでおいしい。焼く手間を差し引いてもコンビニパンを圧倒していることは間違いない。

『du fournil』は先ほどより少しカリカリ感が強い。中は食パンのようにしっとり&もっちり。ただし味がほぼ無いのでバター必須。

雑穀を練り込んだ『cereales』は、個人的にバゲットタイプで一番好みだった。ツブツブ感がなんとも楽しい。

ひまわりのタネがアクセントの『multigraines』は、フランスのみならずヨーロッパの広い地域で売られている定番モノだ。コレ、かなりいいセンいっていた。パン屋で売られているものと遜色ないおいしさ。未体験の人はぜひ試してみてほしい。

ナッツやベリーの詰まった『muesli』はデカさと重さがハンパない。どちらかといえばお菓子に近く、紅茶と一緒にチビチビ食べたい感じ。

『complet』は味の濃い全粒粉パン。あらかじめ薄くスライスされていて、サッとトーストすれば食べられる手軽さがイイ。


・巻いていこう

ふぅ……! ずいぶん食べ進めたつもりだったが、まだ半分も終わっていないのか。ここからはプチパンゾーン。どんどんいこう。

上段左から『sans adjonction de sel』(1ユーロ)、『olive noire et tomate』(1.75ユーロ)、『lardon emmental et oignon』(1.75ユーロ)、下段左から『a l’italienne』(1.4ユーロ)、『aux figues』(1.7ユーロ)。

『sans adjonction de sel』は見た目のとおり、柔らかくクセのないプチパンである。特徴といえば “やや表面がしょっぱい” ってことくらいか。

『sans adjonction de sel』と見た目の違いが分かりにくい『a l’italienne』は、ぶっちゃけ味もよく似ている。これが別商品とは、フランスパンって本当に奥が深い。

『olive noire et tomate』はその名の通り、オリーブとトマトを練り込んだ細長いパン。個人的感想で申し訳ないが……マズイ! 我々がよく知るさっぱりオリーブではなく、中東風オリーブ漬けの味がする。独特のクセと酸味があり、慣れない人にはキツイかもしれない。

『lardon emmental et oignon』はもっとヤバイ。味は完全にクラムチャウダー。クラムチャウダーをパン化するとこんなにヤベェもんが出来上がるとは。もの珍しさでは今回のナンバーワンと言えるだろう。

オリーブとクラムチャウダーのショックも相まってか、ごく普通のレーズンパンである『aux figues』が異常においしく感じられた。小ぶりながらズッシリ詰まった身に、ちょうどいい甘みのレーズン……こういうのがいい。


・駆け足でいこう

この企画に手を出したことを後悔し始めるも、すでに後には引けない。後半戦はクロワッサン&パイ編に突入だ。

全てのパッケージに記された「pur beurre」は “バターを使ったお菓子” という意味。8個入りのクロワッサン3.3ユーロ、10個入りのミニサイズが2.85ユーロ。ミニパイはりんご味3.1ユーロ、チョコレート味が2.85ユーロ。さっそく袋を開けると……


ギャーーース!! ドロドロに溶けてるゥ!!!!!


「どうせ加熱するのだから」と早めに冷凍庫から出したのが災いし、すっかり形を崩してしまったパイ生地たち。「バターがタップリ使われている証拠」と前向きにとらえ、気にせず焼いちゃおう。

他の冷凍パンと異なり、オーブンの中でパリパリとふくらみ始めるパイたち。日本人にはあまりピンとこないかもしれないが、クロワッサンはフランスパンの一種である。果たして “本場の冷凍クロワッサン” の実力たるや……?


結果:パン屋の存在意義が危ぶまれるレベルのウマさ


もちろん “焼きたて” という強みはあるが、驚くべきことにピカールの冷凍クロワッサン&パイ、パン屋を凌駕するほどの実力を有していたのだった。ちなみに冷めてもウマい。

実はこのクロワッサン、日本で昨年行われた『ピカール総選挙』で1位にも選ばれたピカールの看板商品。帰国後の私がピカールへ直行したことは言うまでもない。知らなかった人は絶対に試してみるべきだ、マジで。

残すは菓子パン。上段左から『BRIOCHE TRANCHEE』(2.7ユーロ)、『BRIOCHES PARISIENNES』(3.5ユーロ)、下段左から『MINI BEIGNETS』(3.2ユーロ)、『BRIOCHES FACON PAIN PERDU』(2.95ユーロ)、『bagel』(2.5ユーロ)。

『BRIOCHE TRANCHEE』はほんのり甘いプチ・ミルクパン。どことなく食パンマンを思わせるビジュアルにテンションが上がる。

今回最も高値だった『BRIOCHES PARISIENNES』はケーキみたいに甘くてフカフカ。日本だと高級パン屋でしか買えない濃厚な味わいである。おいしゅうございました。

解凍するだけで食べられる『MINI BEIGNETS』は “ヌテラ入りドーナツ” といった感じ。外国のスイーツにしては甘さ控えめでおいしい。

『BRIOCHES FACON PAIN PERDU』は冷凍フレンチトースト。キャラメル味のソースがいい味出しているが、残念ながら焼きたてのフレンチトーストには及ばず。

最後はベーグル。日本のコッペパンに似て食べやすい。あらかじめ真ん中に切れ目が入っているので、忙しい朝などに重宝しそうである…………ってことで全20種類、食べ終わった〜!!!! 長かった〜〜!!!!


・親切なフランス人、疑問を呈す

……と、ここで「何やってるの?」とキッチンに現れたのはフランス人のマリオさん。彼は私の下宿先の家主で、何かと滞在中の世話を焼いてくれた恩人だ。キッチンを埋め尽くす大量の冷凍パンを見て、驚きを隠せない様子である。

私は「自分がいかにピカールとフランスパンを愛しているか」「やはりフランスの冷凍パンはハイレベルだ」ということを、マリオさんに熱弁して聞かせた。すると……彼は不思議そうな顔をして、私にこう尋ねたものである。



「日曜日でもないのに、なぜ冷凍パンを食べるのか?」と……。


マリオさんいわく、フランス人にとって冷凍パンは「パン屋が閉まっている日曜日や、もしものときのための常備食」という認識。つまり “パン屋のパンに遠く及ばない存在” なのだそうな。うん、まぁ、そりゃそっか……!

あまりにド正論すぎて小さく笑うしかないが、とはいえ日本人の私にとっては相当ハイレベルに感じたピカールの冷凍パン。今回ご紹介したうちのいくつかは日本でも購入できるので、最低でもクロワッサンは食べてみてほしい。ちな8個入り799円な!

参考リンク:ピカール
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

Source