新しい リーダーシップ を導入する時代へ:アパレルブランドのトップが次々と退任

DIGIDAY

アイリーンフィッシャー(Eileen Fisher)、ライブリー(Lively)、Gap(ギャップ)、アンダーアーマー(Under Armour)など、数多くのアパレルブランドのトップエグゼクティブたちがこの2カ月で次々と退任している。

自身の名前を冠したブランドを1980年代から経営してきたアイリーン・フィッシャー氏の引退のように、平和的で長期的な計画による移行もあれば、Gapのソニア・シンガル氏ザ・リアルリアル(The RealReal)のジュリー・ウェインライト氏の突然の退任のように、唐突なケースもある。いずれにしても、パンデミック、不況、多様性や人種的公正をめぐる危機、気候変動のさらなる脅威などが業界に大きな変化をもたらし、ブランドが新しい解決策を模索するなかで、新たな血がこの業界を引き継いでいくための機が熟したといえる。

新たな時代に向け、適切なリーダーへのスムースな移行を目指す

1984年にブランドを創業し、8月に退任を発表したフィッシャー氏にとって、常に頭の片隅にあったのは環境問題だった。彼女のブランドは、古着の引き取りなど、現在では多くのブランドが追加しているサステナブルなプログラムの数々を、それらが一般的に行われるようになる何年も前から取り入れるなど影響力を持っていた。彼女はこの業界がきわめて流動的な状態にあることを示す指標として、気候変動、Covid、そして多様性と包括性に向かうムーブメントを挙げている。

「いつでも私は、いま何が必要とされているのかを把握しようとしてきた。自分がどこでもっともうまく貢献できるのか、また、どこにもっと多くのインサイトや別の方法が必要なのか、自問自答してきた」とフィッシャー氏は述べている。「これは創業者の特徴なのかもしれない。エゴなくして細部にこだわりつつも全体を俯瞰することであり、会社の健全性とコミュニティの幸福を支えるために、いま何が必要なのかを見きわめることだ」。

サステナビリティを重視した確固たる計画があり、ブランドのコアバリューを理解している後任がいるため、いま退任することは正しいことだとフィッシャー氏は述べている。フィッシャー氏の後任には、パタゴニア(Patagonia)でチーフプロダクトオフィサーを務めたリサ・ウィリアムズ氏が就任し、スムースな移行が確実に行われるように先月からフィッシャー氏と協働している。

「いまCEOを迎えることは、私にとって、そしてコミュニティとして(のブランドにとって)適切な時期であり、私の責任ある移行における重要な要素である」とフィッシャー氏は述べた。「私のビジョンを前進させ、新たな時代に向けて最適かつ前向きな方法でそのビジョンを発展させるためには、共通の価値観を深く抱いているリーダーが必要だ」。

CEOの座を譲り、Web3での新たなベンチャーに目を向ける

スムースな移行は、CEOの職を退くにあたってミシェル・コーデイロ・グラント氏が目指しているものでもある。米国に拠点を置くD2Cアンダーウェアブランド、ライブリーの創業者であるコーデイロ・グラント氏は、2023年3月まではアドバイザーとして同社に在籍し、後任のクリスティン・ディカンゾロ氏が新しい役割に慣れるまではライブリーの顔として活動を続ける予定だ。

コーデイロ・グラント氏にとって、今回の動きの動機となったのは、ライブリーの国際的な成長を助けることができるマーケティング経験のある人材を必要としていたことだった。同ブランドは2019年に下着会社のワコール・アメリカ(Wacoal America)に買収され、ディカンゾロ氏はワコールのマーケティングバイスプレジデントを務めていた。

コーデイロ・グラント氏は2015年からライブリーを築きあげてきた、新興成長企業の経験豊かなスポークスパーソンである。ライブリーを創業できたのは、彼女がみずから外に出て、個人的に投資家とプレスの両方に訴えてきたからだ。ライブリーが定評あるブランドとして確立し、新たなリーダーシップを迎えたいま、彼女は特にWeb3の分野で新しいベンチャーを始めることに目を向けるつもりだと話す。

「Web3の業界になんとか食い込みたいと思って取り組んでいる」とコーデイロ・グラント氏は言う。「Web2では、女性の創業者はあまりに少なかった。だがWeb3が始まったばかりのいまなら、違う形でできるチャンスがある」。

未来に向けて前進するための、困難だが新たな時代の到来

2022年の残り後半で、大手アパレルブランドのチーフエグゼクティブたちが引き続き去っていくのを目にすることになるだろう。アディダス(Adidas)のCEOカスパー・ローステッド氏は来年初めに退任する予定であり、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)やカルバン・クライン(Calvin Klein)を含むPVH社のエグゼクティブら、スティッチ・フィックス(Stitch Fix)アンバウンド・グループ(Unbound Group)のリーダーらも、それ以前に職を退く。ブリティッシュ・ファッション・カウンシル(British Fashion Council)の議長ステファニー・ファー氏が9月上旬に退任するなど、ブランドではないファッション団体でさえもトップを失う。

「本当に新しい時代だ」とフィッシャー氏は言う。「いくつかの点では、意識とコミットメントを高めて前進するための、長年の懸案事項だった断固たる時期だ。別の意味では、変化するサプライチェーンの現実にあわせてサステナブルなビジネスモデルを構築するための、非常に困難な時期でもある」。

[原文:‘It’s a new era’: Fashion brands are bringing in new leadership to deal with a changing world]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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