犯罪ニュース番組の ポッドキャスト サブスクリプション戦略:「オーディエンスに制限なく、すべてを伝えられる」

DIGIDAY

米NBCの犯罪ニュース番組「デイトライン(Dateline)」が8月29日からAppleポッドキャストでサブスクリプション番組の配信を開始した。

この有料配信に登録すると、デイトラインがラインナップする9本のポッドキャスト番組を広告なしで視聴できるほか、毎月配信する新しいエピソードやシリーズ、特別番組などに1週間早くアクセスできるようになる。購読料は月額2ドル99セント(約430円)、または年額29ドル99セント(約4300円)で、7日間の無料トライアルを提供している。Appleの手数料は、購読開始後1年間は30%、2年目以降は15%だ。

デイトラインNBCのシニアエグゼクティブプロデューサー、デヴィッド・コルヴォ氏は、「ポッドキャストはテレビを見ない人や見たくない人に、デイトラインを体験してもらうための新たな選択肢であり、売上に貢献してくれるスーパーファンへの感謝のしるしでもある」と述べている。

「どのエピソードもコマーシャルとクレジットは入らない」

従来、デイトラインのポッドキャストは広告を挿入することで収入を得てきた。Appleがポッドキャストにサブスクリプション機能を実装したのは昨年4月のことで、ポッドキャストコンテンツの収益化に道を開く一方、リスナーには広告なしでコンテンツを楽しむ選択肢を用意した。

Appleポッドキャストの有料配信登録者は、2021年6月以降、300%以上増えたと広報担当者は述べている。「トップ番組」チャートの上位100番組のうち、25%以上が有料番組を配信しているという。なお、Appleは、Appleポッドキャストのサブスクリプション番組やその購読者に関する具体的な数字を公表していない。

デイトラインが有料購読者に提供する最初の特典は、ジョッシュ・マンキーウィッツ特派員が9月1日から配信している特別番組だ。内容はルイジアナ州の大学生失踪事件に関する続報で、もともとの番組は10年前に放送された。

同様に、有料購読者は、デイトラインのポッドキャスト番組10作目となる「インターナル・アフェアズ(Internal Affairs)」の最初の2話に一般公開の9月20日よりも1週間早くアクセスできる。ホストを務めるのは同じくマンキーウィッツ特派員で、残りのエピソードについても1週間早いアクセスが付与されるという。

「インターナル・アフェアズ」は、どのエピソードも約1時間のテレビ番組とほぼ同じ長さだが、コマーシャルとクレジットは入らない」とマンキーウィッツ特派員は話す。「これはポッドキャストの長所のひとつだ。オーディエンスに事件の詳細をすべて伝えることができる」。

「テレビよりも自由がきく」

デイトラインのポッドキャストでは、テレビで語られる犯罪実話をより深く掘り下げたり、過去に取り上げた事件の続報を伝えたりすることがよくある。デイトラインがポッドキャスト配信を始めたのは2019年のことだ。

デイトラインのエグゼクティブプロデューサーを務めるリズ・コール氏はこう語る。「ポッドキャストを活用することにより、これまでとは異なる方法で事件を語ることができる。話の内容をもっと充実させて伝えることができる。一定の分数やコマーシャルの挿入回数など、局の決めたスケジュールに縛られることもない。ポッドキャストのほうがテレビよりも自由がきく」。

デイトラインのテレビ放送のオーディオ版も人気がある。同番組の広報担当者が引用したシンプルキャスト(Simplecast)のデータによると、2019年の開始以来、ダウンロード回数は延べ7億7500万回にのぼり、7月のダウンロード回数は3000万超を記録した。

コール氏によると、コンテンツの制作には(テレビ放映日のスケジュールなどによって)「波がある」ため、ポッドキャストや特番の制作のために、現在のデイトライン担当班を増員する考えはいまのところないという。

「拡大したり縮小したり、臨機応変な対応には慣れている。テレビ放映用の番組を制作しているスタッフに手空きの時間ができれば、この人にポッドキャストのコンテンツ制作を手伝ってもらう」とコール氏は説明する。

オーディエンス開発には課題も

金曜日の午後現在、ポッドトラック(Podtrac)による7月のトップテンランキングで、デイトラインNBCは第6位だった。

デイトラインがポッドキャストで有料番組の配信を始める1週間と少し前、Appleはポッドキャストのサブスクリプション機能導入に合わせてふたつのチャートを立ち上げた。「トップサブスクライバーショー」と「トップサブスクライバーチャンネル」という新たなチャートは、米国、英国、カナダ、オーストラリアで有料番組を配信する上位100のサブスク番組とサブスクチャンネルのランキングを公開するものだ。

Appleの広報担当者によると、デイトラインはAppleポッドキャストでもっとも人気のあるチャンネルのひとつだという。金曜日の午後現在、デイトラインはAppleのポッドキャストチャートで第8位、犯罪実話のカテゴリーで第3位につけている。この9月に31シーズン目を迎えるデイトラインは、NBCのプライムタイム番組随一の長寿番組でもある。

Appleポッドキャストのサブスクリプション機能は、メディア企業にとって新たな収益源となりうる一方、「より広範なオーディエンス開発戦略としては課題が残る」と、オーディエンス開発とマーケティングを支援するトゥエンティファーストデジタル(Twenty-First Digital)の創業者でCEOを務めるメリッサ・チャウニング氏は電子メールによる取材で述べている。

その主な理由として、同氏は、リスナーがパブリッシャーのプラットフォームではなく、Appleを通じて番組を購読している点に言及した。これはリスナーのデータがパブリッシャーに帰属しないことを意味している。「パブリッシャーはリスナーの電子メールアドレスをはじめ、いかなるファーストパーティデータも取得できないし、購読者と自由に交流することもできない」。

[原文:How Dateline NBC looks to grow its podcast business with Apple

Sara Guaglione(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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