セクシャルウェルネス 製品がアルタビューティの進出でビューティ小売の主流に【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

私がセクシャルウェルネス製品について執筆し始めたとき、ある編集者からバイブレーターや潤滑剤、女性用ワイプがビューティ製品なのかと頻繁に問われた。「プリヤがワイプを流行らせようとしている」と言われているような感じだった。

しかし、口腔ケアやタンポンなどほかのCPG製品がビューティ売り場に進出しているのと同じように、私はビューティとパーソナルケアのあいだの境界線が曖昧になっていきていることはエキサイティングだと思った。また、最近の動向のいくつかを見てみると、セクシャルウェルネス製品がビューティ小売に属するかどうかについての疑問はもはやないようである。

セクシュアルウェルネスに注力するアルタビューティ

たとえば、アルタビューティ(Ulta Beauty)は、ウェルネスの品揃えに新たな6番目の柱となるインティメット(訳注:この場合は性的という意味)ウェルネス製品を展開するとGlossy独占で発表している。内容はボディオイル、プレジャーオイル、潤滑剤、バスソルト、セクシュアルウェルネスデバイスであり、インティメットウェルネスは9月4日に同社のオンライン限定でローンチした。フォリア(Foria)、ヴッシュ(Vush)、アンバウンド(Unbound)、スマイルメーカーズ(Smile Makers)、クレイヴ(Crave)が同部門の最初のブランドパートナーだ。また、アルタのウェルネス事業の既存ブランドであるウーマンネス(Womaness)とオリー(Olly)もセクシャル関連製品を販売する予定である。インティメイトウェルネスカテゴリーでは合計で35製品が販売されることになる。

アルタビューティのマーチャンダイジング担当バイスプレジデント、ペニー・コイ氏は、この数年間でより広範なウェルネスカテゴリーに拡大したため、インティメットウェルネスへの移行は同社にとって自然な流れであると語っている。

身体の内側と外側の美容に関する同社のフォーカスについて、「ウェルネスショップのローンチから約1年が経過、現在では物理的な製品は約800店で展開されている。このカテゴリー全体とその中のショップは我々の意図が反映されている厳選されたストーリーだ」とコイ氏は述べている。ウェルネスショップの最初のコアになる5セグメントは、エブリデイケア(Everyday Care)、サプリメント&摂取可能製品(Supplements and Ingestibles)、リラックス&リニュー(Relax and Renew)、スパ・アット・ホーム(Spa at Home)、ダウン・ゼア・ケア(Down There Care)だった。

どの柱も何らかの形でインティメット製品に関連していると言えるが、アルタビューティの、セックス関連製品、潤滑剤、オイル、デバイスへのさらなる参入を可能にしたのは、クレンジング製品、膣・口腔トリートメント、生理ケア・更年期ケアから構成されているダウン・ゼア・ケアの品揃えだった。「(消費者が)インティメットな暮らしを楽しめるように、身体的、精神的、社会的ウェルビーイングとセクシュアリティを融合させるという点でつながりを感じた」とコイ氏は語っている。

セフォラの動向

一方、セフォラもセクシャルウェルネス製品を単なる思い付きではなく成長カテゴリーと見なしている。セフォラは2月にインティメットケアの品揃えを発表、セックストイを販売するモード(Maude)とデイム(Dame)がセフォラに加わった。ムーンジュース(Moon Juice)のセックスダスト(Sex Dust)などセフォラの既存パートナーからの補完的な製品も揃えられた。

セフォラは、アルタビューティと同様、もっと刺激的なセクシャルウェルネス関連製品の一部はまだ店頭販売していない。しかし、ビューティ小売業者がセックス関連製品を一般的に扱うようになったことは、2000年代にニューヨークを拠点としたリッキーズ(Ricky’s)での体験とはまだ大きな隔たりがある。リッキーズでは、店の奥の四方を壁に囲まれた場所に置かれたセックストイにたどり着く前に、店頭にモロッカンオイルを置いて客を迎えていた。だが、閉店したリッキーズが理解していたのは、顧客がシャンプーや口紅と一緒にバイブレーターが購入できるのを楽しんでいたということだった。アルタビューティとセフォラ両社がそのような消費者の購入ジャーニーを一般的にしようとしていることは明らかである。

様々な店舗形態でのカテゴリーの拡大

そして、流通戦略に疑問を抱いている人にとって、ドラッグストアとビューティ小売店の間の競合は事実上もはや存在しない。(ドラッグストアの)CVSヘルス(CVS Health)が中核の薬局事業と並行してビューティ製品の品揃えを向上させていることや、ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)が食料品や家庭用品とともに大衆向け・ラグジュアリービューティ製品を取り扱っていることを考えてみればわかるだろう。

セックス関連製品は5年前と比べ、いまではそれほどタブー視されていないが、大手ビューティ小売店によってこのカテゴリーには正当性が与えられている。確かにパンデミックはこの対話を加速させた。コロナ禍によって社会的な交流が制限され、単独のセックス体験への扉が開かれたからだ。

収益増の機会が多いセクシャルウェルネスカテゴリー

ヴァイオレットグレイ(Violet Gray)のようなラグジュアリー小売店や、ノードストロムやニーマン・マーカス(Neiman Marcus)などのデパートはクレイヴのバイブレーターネックレスなどの製品を取り扱っており、セクシャルウェルネス製品がオンラインで購入できる初のラグジュアリー環境を提供している。しかし、アルタビューティと比較するとそのリーチは小規模である。2022会計年度の第2四半期の結果で、アルタビューティは純売上高が1年前の20億ドル(約2804億円)から23億ドル(約3225億円)に急増したと報告している。また、セクシャルウェルネス製品は現時点のアルタビューティにおいては小規模な製品スイートではあるが、目新しさで収益機会を増やしている。グランドビューリサーチ(Grandview Research)によると、米国のセクシャルウェルネス市場は2030年までに199億ドル(約2.8兆円)に達すると予想されている。

対象顧客を絞りコミュニケーションをとる重要性

フォリアの最高教育責任者であるキアナ・リーブス氏は、アルタビューティを適切なパートナーであると見なす理由には、アルタビューティが対象としている大規模で幅広いオーディエンスがあると述べている。「ウェルネスとビューティにすでに対応しているパートナーと協働したいと考えており、20代、30代、40代のコア顧客と生理やインティメットウェルネス、性的な快楽について話し合っている」。同氏によると、フォリアのオンライン顧客ベースは、20〜30代、40〜50代、60〜70代という3つのライフステージに分けられるという。

アルタビューティの1300を超える店舗とZ世代へのリーチを考えると、特にアルタビューティにおいて、これらの製品が誰のためのもので、その理由についてのニュアンスを伝えることは課題となるだろう。アルタビューティの統合マーケティング担当ディレクター、シモン・ペトロニオ氏によると、同社はこのカテゴリーに対して人々が抱いている観念に特に敏感だという。アルタビューティはブランドパートナーと協働してソーシャルとオンラインマーケティングにおける話題を促進するという。また、UBコレクティブ(UB Collective)のインフルエンサーらも活用される。「これはデリケートではあるが人気の高い領域であることを理解しているので、ターゲットを絞った慎重なコミュニケーションのあるオンライン環境を提供する」とペトロニオ氏は語っている。

一方、リーブス氏は、もっと多くの購入客が大規模な小売環境で堂々と購入できるようにするための鍵はマーケティングとコミュニケーション要素であると理解している。「取り上げているのは多世代におよぶ会話なので、3つの(マーケティングの対象)層の区別はできていない。行うべき微調整作業は、『人々にショックを与えて、これは自分向けじゃないと感じさせたりするのではなく、どうすればそのような懸念の核心に語りかけて人々を引き込むことができるか』と問いかけることだ」と語っている。「セックスを若者だけに制限しないことが重要だ。女性は妊娠、産後、閉経などの変化を経験するが、我々はその変化をサポートして、またサポートができるので、女性が生涯にわたって喜びと活力を持ち続けられるようにしたい」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: With Ulta Beauty’s stamp of approval, sexual wellness products become a beauty mainstay

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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