毛皮のコートに葉巻をくわえた「ザ・ジブリのババア」になりたい

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はげます会限定メルマガに掲載したライターJUNERAYさんの「自慢の品」を紹介します。

祖母のおさがり(JUNERAY)

中学、高校と祖母の家に住んでいたおばあちゃんっ子なのだ。

祖母は今でこそ老人然としてしまったが、かつては派手好きな人だった。ジブリ作品に出てくるババア(個人的に敬意を込めた呼び方)たち、彼女らを彷彿とさせるような豪快さがあった。少なくとも子供の目から見た彼女はマフィアのボスみたいだった。

天然石というものがある。ローズクォーツとかタイガーアイとか、高速道路のSAで、謎の子供向けのアクセサリーに加工されているようなあれら。小学生くらいの頃はファンタジー小説ばかり読んでいる子どもだったため、例にもれずあのツヤツヤピカピカした不定形の、実際どのくらい価値があるのか分からない石たちが好きだった。

100円ショップのプラケースに大事にしまって、たまに取り出しては眺めたり手のひらの上でジャラジャラ鳴らしたりしていた私を見て、祖母は言った。

「ばあちゃんが持ってる石もあげるよ。」

子ども心には、祖母も天然石を集めているのか、どれひとつ見せてもらおう。くらいの感覚だったが、今ならその「石」が貴重品であるところの高価な石であることがわかる。

四畳半の納屋に通され、祖母は古いドレッサーを開けた。小さなアクセサリーボックスが入っていた。

中には真珠のイヤリングやら18金の指輪やら、どうやらバブルの時代に買ったものの、ほとんど使っていないであろう貴金属たち。どれも小学生の私が使うにはサイズが大きすぎる。

祖母は、「いつか全部ジュンちゃんにあげるわ」と言った。

そして祖母の家に住み始めてからしばらくして、それらは本当に私のものになった。

中高生には高価すぎるアクセサリー群はもちろん使われることなく、大切にコレクションされた。ずいぶん大事にしている様子の私を見て、祖母は「そうだ、服もあげる」と言った。

ドレッサーから出てきたのは、ナフタレン臭いコートやワンピース。当時古着で揃えたレトロなファッションが流行りはじめていたため、最先端のもののように見えた。コートには毛皮があしらわれていて、おそるおそる「これはいくらしたんですか」と訊いたら目眩がしそうな金額が返ってきた。あなたの孫はパルコのセールで3,000円の服を買うか悩んでいる年頃ですよ。それをあなた。

でもくれると言うからいただく。

大学に入って一人暮らしを始めてからは、祖母宅に遊びに行くたびにおさがりの服を着た。「あら、懐かしいわねえ」と彼女が喜ぶからだ。

中高生には重すぎた指輪やイヤリングも、たまに出番がくるようになり、お気に入りの1つは宝石店でサイズを調整してもらった。

あれから10年が経つ。

今では指輪のいくつかは私のアクセサリーの一軍となり、外に遊びに行く時には必ずといっていいほど持ち出されている。

それでも高価な毛皮のコートはまだ着こなせていない。だってこういう服って、小動物がギリギリ一匹入りそうな、小さなハンドバッグを合わせるものなんでしょう。私の鞄は「酒瓶が何本入るか」が基準で選ばれているというのに。

いつか毛皮が似合う人間になれるのか、これからが楽しみというところである。両手にゴリゴリに指輪をはめ、毛皮のコートに葉巻をくわえた「ザ・ジブリのババア」になりたいものだ。

終わってふたたび解説です

めちゃくちゃかっこいいコートでJUNERAYさんが着てるところを見てみたいです。

そういえばおばあちゃんって、おさがりのものを身につけていくとめっちゃ喜んでくれますよね。 

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