サイボーグ昆虫の稼働時間と移動距離がより長く

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行動制御モジュールと有機太陽電池を装着したマダガスカルゴキブリ

 理化学研究所早稲田大学シンガポール南洋理工大学は5日、再充電可能な電源ユニットを搭載したサイボーグ昆虫を開発したと発表した。

 昆虫の行動を制御するモジュールの稼働に必要な電力の確保と、昆虫の運動能力維持を両立するための研究。発表者は理化学研究所 染谷薄膜素子研究室の福田憲二郎氏と染谷隆夫氏、早稲田大学大学院 創造理工学研究科の梅津信二郎氏、シンガポール南洋理工大学の佐藤裕崇氏らによる研究グループ。

 サイボーグ昆虫には、電気刺激などによって行動を制御するモジュールが取り付けられている。刺激の入力や無線通信のほか、各種センサーを稼働させてデータを取得/送信する際には発電装置に10mW以上の出力性能が求められるが、これまでは昆虫の運動能力を保ったまま10mW以上の出力を達成するのは困難だった。

 研究グループでは、胸部背側に行動制御モジュールを装着したマダガスカルゴキブリの運動能力を保持するため、ポリマーフィルム上に作製した有機太陽電池を腹部背側に部分的に接着する「飛び石構造」で配置した。この状態のサイボーグ昆虫で「障害物の乗り越え」と「ひっくり返った状態からの起き上がり」運動の試験を行なったところ、どちらもポリマーフィルム非装着と遜色ない運動性を確保できたという。

 今回の実験で使用したポリマーフィルムは厚さ4μm。検証実験ではポリマーフィルムが5μm以下の厚さであれば、サイボーグ昆虫の基本的な動作を損なわないことが実証されたとしている。また太陽電池の出力については最大で17.2mWの出力を達成しており、これまで以上の長時間稼働と長距離移動が可能になった。

 今後については、制御回路の薄型化と他のコンポーネントを組み合わせることで、サイボーグ昆虫の機能の拡大を目指すとしている。

 なおサイボーグ昆虫の研究で用いられているマダガスカルゴキブリは、羽がなく、歩行して生活する草食性のゴキブリ。飼育環境下では5年程度生存する。飛翔しないことから行動制御を行ないやすく、成虫は体長5~7.5cmと比較的大型であることから電池回路を搭載する余地が大きい。また環境耐性が比較的高いため、サイボーグ昆虫としては、都市型捜索救助、環境モニタリング、人間が立ち入れない危険地域の検査などの用途が提案されている。

有機太陽電池を作製したポリマーフィルムを昆虫の可動域に合わせて接着した

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