クロマキーで落語の仕草

デイリーポータルZ

修行なしで名人の技を再現します

落語でよく、そばや食べたりまんじゅうを食べるところを仕草だけで表現する。

表情や身振り手振りだけで演じる芸である。

ぜひ私もやってみたいが、そのためには修行が必要だ。

しかし修行はしたくない。手っ取り早く仕草だけでうまく表現しているしているように見せられればいい。

ではどうすればいいか?

あっ、クロマキーならなんとかなるかも!

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。

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クロマキーで食べ物を消そう!

そもそもクロマキー合成とは、以下のようなことだそうである。

一般的な合成手順

簡単にいうと緑色の布の前で動画を撮影し、その緑色の部分を別の背景映像と組み合わせる撮影技術である。

緑色の食べ物ならクロマキーで消せるのではないか

緑色の布の前に立って、背景を別の映像に差し替えることができるのなら、緑色の食べ物を食べてるところを撮影して、クロマキーでその食べ物を消してしまえば修行なしで超リアルな食べる仕草ができるという寸法である。

具体的にはこうだ。

今回の実験手順

緑のものを食べている映像の背面に、静止している自分の画像を入れる。そのうえで、クロマキー合成で緑を消す。

するってえと食べ物が消えて、食べている自分だけの映像が残り、リアルに食べている仕草をしているようにみえるんじゃねえのかい、熊さん。

急に落語口調になってますけども

ということでクロマキー合成で名人レベルの食べてる仕草が出来るかやってみよう!

クロマキーきゅうり

まずは緑の食べ物の代表格、きゅうりからいってみよう。

まずはきゅうりを

これをクロマキーで消すと、実際にキュウリを食べているのに、キュウリを食べる仕草だけしているようにみえるはずだ。

まずはこれを普通に食べているところを撮影して…

普通に食べる

ではこれをクロマキーで消してみると

きゅうりが消えた!

おお、ちゃんと食べている仕草にみえる!

「え?うっすらきゅうりの輪郭みえるじゃん」

とはくれぐれも言ってはならんぞ。

クロマキーライム

野菜が透けたんだから、今度は果物でいってみよう。

緑の果物の代表、ライムの登場である。

これをかじります

まずは普通にライムをかじるところを撮影する。

かなりすっぱい

これをクロマキーで処理すると

おお、すっぱいねえ、こいつはどーも

これはかなりいい!

ライムが手の中に納まるサイズであることが功を奏して、すっぱいライムを食べている真打レベルの仕草にみえる!

クロマキーメロンソーダ

野菜や果物はうまくいったので、今度は液体でいってみよう。

緑の液体といえばメロンソーダである。

「夏はやっぱりメロンソーダですな」

「いくつになっても、このメロンソーダってやつだけはまったく魅力的なやつですな」などと一応落語っぽいことを言いながら普通に飲むところを撮影する。

「ドリンクバーでこれを飲んでる大人に悪いやつはいませんよ」

などと言って飲む。

これをクロマキーで処理すると

透けた!

しかし、液体の輪郭は残っており、見ようによってはただ水を飲んでいるようにも見えなくもないという結果となった。 

ここまでで、クロマキーで落語の仕草をするならば色、大きさ、表情からライムが最適であることがわかった。
これ以降ははっきり言ってできてないのだが、予想外の展開になったのでひきつづきご覧いただきたい。

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クロマキーまんじゅう

いよいよ落語でお馴染みのまんじゅうの登場である。おかげさまでまんじゅうには緑のものは豊富だ。

って誰に対するおかげさまなのかよくわかりませんが。

緑色の和菓子たち

例によってまずは普通に食べるところを撮影する。

落語の「まんじゅうこわい」のクライマックスシーンのようにまんじゅうを次々に食べていく。

生なごやん
抹茶ようかん
草まんじゅうと、よもぎまんじゅう

4つのまんじゅうを食べた。

結果はどうか?

前面の映像が透けすぎてよくわからない

まんじゅうの緑は、野菜や果物よりも淡い緑であり透けさせることがむずかしかった。

むりに透けさせた結果、前の体のほとんどが透けてしまい前面の映像がわかりにくくなってしまった。

そこで背後の写真をモノクロにして見やすくなるか確かめてみたところ…

仙台四郎のような映像が出現

逆に体が完全に透けてしまい、まんじゅうだけ消す狙いとは逆の効果となった。

また、浴衣を着ていたため、明治時代の怪奇写真とでも言いたくなるような映像になってしまった。

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クロマキーそば

最後はいよいよ落語の仕草界の真打、そばである。

茶そばという緑のそばを用意した。

これを緑色の食器に入れて消えるか確かめてみる。

茶そばと緑っぽい食器

そして落語っぽい仕草で、冬の屋台の設定で食べていく。

フーーッフーーッフーーッ

「おやっさん、今夜はばかに冷えるねえ」

「寒い夜には温っけえそばが一番だね」

「そんでまたおやっさんとこのそばは、このつゆがうめえんだよなあ」

ズルズルズル
「アーーーーーッツ」

まんじゅうを四つ食べた直後に食べるそばが美味しすぎて、思わず撮影を忘れて素の声が出てしまった。

「まんじゅうを四つ食べた直後にそばを食べると声が出る」という記事に切り替えようかとも思ったが、タイトル以上の内容もないため取りやめた。

さて、これをクロマキーで処理してみると…

そばは消えたがどんぶりが残った

そばとどんぶりの緑が一致していないため、そばは透けているがどんぶりが残る結果となった。

そこで今度はどんぶりを透明のカップに入れ、つゆはただのお湯にして確かめてみよう。

透明の計量カップに入れたお湯の茶そば

さて、これをクロマキー処理すると…

なんとなく消えてる!!

うっすら計量カップがみえてしまっているが、そばを食べる仕草にみえなくもない。計量カップを隠すために背面の画像をモノクロにすると

明治時代風

そばを食べている人もろとも消え、ふたたび仙台四郎が登場する結果となった。

まとめ

食べているものをクロマキーで消すのは背面の画像も全面の画像同様の動きをする必要があり、相当な手間がかかることがわかった。

またクロマキー合成をするための緑は、かなりハッキリとした緑でないと難しく、まんじゅうやそばなど淡い緑では食べ物だけでなく、全面の画像全体が透けてしまうこともわかった。

おあとがよろしいようで

だからといって前面の画像が透けるのを目立たなくしようと、背面の画像をモノクロにすると仙台四郎が登場することもわかった。

つまり、落語に近道はない、修行はちゃんとしろ、という名人たちの教えを身をもって感じることとなったのである。

桂米朝師匠、いかがでしょうか?

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