スパイスを蒔くと芽が出るので、その正体を確認すると楽しい

デイリーポータルZ

このスパイスのうち三つが発芽しました。

食用で売られているスパイスは、何らかの植物の種であることが多い。種ということは、土に撒いたら芽が出るのでは。

試してみたところ、何種類かは簡単に発芽してくれて、その正体を確認することができた。これが楽しいのである。

スパイスのメティ(フェヌグリーク)シードは芽が出るらしい

前に大森にある「ケララの風モーニング」という南インド料理店で、店主の沼尻さんから料理をみっちり習っていた時、スパイスで使うメティシード(フェヌグリークシード)を土に蒔くと、発芽をしてメティリーフ(メティの葉っぱでインド料理によく使う)が簡単に栽培できると教えてもらった。

ただし種はあまり取れないから「フェヌグリークは増えぬグリーク」と言っていたような気もする。

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新大久保のハラール食材店で購入したメティ(フェヌグリーク)シード。
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よく見ると複雑な形をしている。ちょっと苦みがあって味に深みを与えてくれるスパイス。

メティリーフはおいしいらしいが、あまり売られていないので(最近は江戸川区などで栽培されたものがインド食材店などで販売されている)、試しに蒔いてみたら本当に発芽した。

食用のスパイスなのに100%近い発芽率。前にパクチー(コリアンダー)を育てたくて、スパイスのコリアンダーシードを撒いたがちっとも発芽しなかった経験があるので、とても興味深い結果だ。

沼尻さんの話だと、パクチーシードは発芽抑制処理がしてあるものと(サッカーボール型)、してないもの(ラグビーボール型)があるのだとか。

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四月中旬に種を蒔いたら、一週間で発芽した。

その後もスクスクと成長し、少しだけだが無事にメティリーフを食べることができた。苦味があってうまい。

メティリーフを試してみたいという人は、ちょっと撒いてみるといいと思う。

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蒔いた種がほとんど発芽したっぽい。
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種を蒔いてから一か月後、ちょっと多すぎたので間引きをした。
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間引きメティリーフの油炒め。ちゃんとメティシードと通じるスパイシーな苦味があってうまいんですよ。

メティの種を収穫できた

どうせなら種を回収してみたいので、残りは食べずに成長を見守っていたところ、九月になって白い小さな花を咲かせた。

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メティの花。アブラムシにやられてちょっと弱っている。
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無事に実が付くだろうか。

小さな植木鉢で育てているので、あまり期待はしていなかったが、いくつかの実がなってくれた。

メティの実は莢(サヤ)のタイプだ。

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細長い莢が育った。

そして十月になると枯れたので、莢の中身を確認してみたところ、数粒ではあるがメティシードが入っていた。サイクルを一周させることに成功だ。

莢の上からでもカレーっぽい香りがして、食べてみたら柔らかい食感の食べたことのないメティシードだった。大変満足である。

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秋になって枯れたメティ。
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莢の中には見覚えのある種が入っていた。栄養不足でちょっと膨らみが足りないかな。「エスニックでスパイシー」という抽象的な表現になるが、そういう味がした。

植木鉢のベランダ栽培ということもあり、あまり種は取れなかったので、確かに「増えぬグリーク」だった。

スパイスを種として育てる実験は、その正体がわかって楽しいぞ。

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いろいろなスパイスを植えてみよう

翌年の五月中旬、メティシードが発芽するなら他のスパイスも芽が出るのではと、いくつか植えてみることにした。

エントリーしたのは、クミン、フェンネル、カルダモン、クローブの四種類。

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左上から時計回りに、クミン、フェンネル、クローブ、カルダモン。
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とりあえずポットに植えて様子を見る。

二十日後、フェンネルとクミンが細長い芽を出してくれた。だがクローブとカルダモンはダメだったようだ。なんとなく、そんな気はしていたが。

いま確認したらクローブは種ではなく蕾だったので、発芽しなくて当然だ。カルダモンも完熟前のフレッシュな実を収穫するため、発芽はしなかったのだろう。

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フェンネルとクミンが発芽した!
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ウサミミっぽいフェンネル。
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シュっとしたクミン。
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大きい植木鉢に植え替えた。

フェンネルは育ってくれた

種を蒔いてから一か月ちょっとが経過。フェンネルは一見するとその辺の雑草みたいな見た目ながら、とりあえず順調に育ってくれている。

だがクミンはちょっと元気がない。主な原因は、私が水やりをさぼったからと思われる。

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線香花火みたいな葉っぱのフェンネル。
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しおれた芽ネギみたいなクミン。がんばってくれ。

十月になると、フェンネルは金魚鉢に入れる水草みたいな細い葉っぱを元気に伸ばし、黄色い小さな花を咲かせた。

これは後からから沼尻さんから聞いた話だが、この花や未熟果の香りがとても高いのだとか。食べてみればよかった。

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よくぞここまで育ってくれた。
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柔らかいブラシのような葉っぱがいとしげだ。
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宇宙人みたいなかわいい花。実がついてくれるかな。

フェンネルの葉を料理に使ったことはおそらくないのだが、そういえばこんな感じの葉っぱを魚料理に使うんだっけなと適当に食べたら、すっきりしたハーブの香りが加わっておいしくなった。

本来こうして使うのはディルか。どっちもセリ科なので構わないだろう。ベランダでフレッシュハーブが手に入ると何かと便利である。そうはいってもそんなに使わないのだが。

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ディルではなくフェンネルを乗せて焼いたシュリンプトースト。「エピパン(麦の穂に似せた硬いパン)ならぬエビパン」って言いたかっただけ。

クミンはごめんなさい、枯れさせてしまいました。

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成功したものを記事にしているけど、その陰で結構失敗しているんですよ。

フェンネルは冬を越して長く楽しませてくれたが、残念ながら最後まで種をつけることはなかった。土の栄養が足りなかったか、受粉がうまく行かなかったか。

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残念。

フェンネルとクミンは発芽することがわかったので、来年はもう少ししっかりと準備をして、種をとるところまでがんばろうと思っていたが、すっかり蒔くのを忘れてしまい、もうこんな時期である。時が経つのって早いですね。

来年はベランダではなく、畑を使って育ててみようかな。

スパイスがどんな姿の植物なのか、ネットなどで調べればすぐわかるのだが、やっぱり自分の手でリアルな答えに辿りつくと感動する。

検索で出てくる本来の成長した姿と違って、なんだかヒョロヒョロしていたり、虫に食われていたりするのもご愛敬。

ちなみに冒頭に書いたケララの風モーニングで習った料理は、この同人誌にレシピをまとめたので、よかったら見てみてください。南インドのミールスという料理です。

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詳しくはこちら!

 

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