パブリッシャー 各社の景気後退対応策まとめ:予算削減からレイオフまで、NYT、BuzzFeed、ガネットが取った手は?

DIGIDAY

景気後退で広告収入が落ち込むなか、メディア企業は、事業で削減すべき分野の見極めを進めている。

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)、BuzzFeed、ガネット(Gannett)、IACは、それぞれ8月に行った四半期決算発表において、マーケティング予算の削減から採用の減速、レイオフの断行まで、各社さまざまなアプローチを打ち出した。

「賃金コストの上昇、インフレ、サプライチェーンの課題、消費者の支出をめぐる競争の激化など、いくつもの逆風が吹く環境下で、CFOは現実的なアプローチで事業の優先順位を決める必要に迫られている」と、プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers:以下、PwC)のプリンシパル、CJ・バンガー氏は電子メールで述べている。

マーケティング費の削減

NYTは、広告販売コストの上昇に伴い、マーケティング支出を削減する構えだ。NYTのエグゼクティブバイスプレジデント兼CFOを務めるローランド・カプート氏は、米国時間8月3日の同社第2四半期決算発表で、販売およびマーケティング費用が約8.5%増加したことについて、「前年は主にパンデミックの影響で低下していた広告販売コストが、上昇に転じたことが大きい」と説明した。「今後は前年同期比で支出が減少していくだろう」と同氏は述べている。

NYTのプレジデント兼CEOを務めるメレディス・コピット・レヴィエン氏は、「市場の不確実性」を除外したとしても、「プロダクトそれ自体をもっとエンゲージとコンバートに活用する」ことが「以前からの計画」だったとして、2022年のマーケティング費は「低下する」見込みだと述べている。

ただし、報道やエンジニアリング関連の「コストの伸びを抑える」予定はないとカプート氏は述べている。マーケティング予算がどの程度削減されるのかについての質問には、NYTは回答を避けた。

採用の減速

・BuzzFeedの場合
BuzzFeedのコスト削減計画は、採用の抑制と所有する不動産面積の縮小が中心だ。

この計画の大部分は「すでに実行に移されている」が、「重要な」採用には再び注力していくと、BuzzFeedの広報担当者は述べている。同社は1~4月に採用ペースを落としていたが、春以降、通常の採用活動を再開している。

BuzzFeedのCEO、ジョナ・ペレッティ氏は、米DIGIDAYが入手した8月9日付の社内メモの中で、「今後の展望として、我々は経済環境の悪化や、視聴者の縦型動画への移行がもたらす影響を免れることはできない」と述べている。「他の多くの企業と同様に、我々の主要な広告カテゴリーのいくつかで、クライアントの支出が減速している」のだという。

採用は今後、縦型動画、クリエイター、マネタイズなど、BuzzFeedの「最も優先順位の高い収益戦略」に的を絞ると、ペレッティ氏は記している。

「すでに多くの点で、我々はこのような考えをもっていると思う。すべての退職者の補充を前提とせず、すべての職務について十分に検討するという考えだ。したがって、これは我々にとって劇的な変化ではない」。

・IACの場合
ドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)を所有するIACも、採用の減速を発表している。

「恐怖からか、データからか、あるいは機会があるとみてか、企業は明らかに消費者よりはるかに先行して支出を削減している。これを受けて、我々は採用を減速させ、裁量的支出を減らし、成長よりも収益性の方向にバランスをやや調整した」と、CEOのジョーイ・レビン氏は8月9日付の株主宛て書簡で述べている。

このことがドットダッシュ・メレディスにどのような影響を与えるのか、という質問に対して、IACの広報担当者は、レビン氏の書簡は「全体的な話に過ぎず、特定のIACの事業に関するものではない」と述べている。

「テクノロジーおよびメディア企業は全般的に、従業員の生産性と事業の財務健全性の強化に対する注力を高めることで、現在の経済情勢に備え、投資家の期待に応えようとしている」と、PwCのバンガー氏はいう。「近年の急速かつディスラプティブ(破壊的)な消費トレンドの変化と市場の不安定性により、この分野の多くの企業において、採用と支出が特別な恩恵のように扱われる環境が生まれている」。

スタッフの削減

米国時間8月4日に行われた第2四半期の決算発表において、ガネットのCEOを務めるマイク・リード氏は、経済状況が同社のビジネスに与える影響について語った。同四半期の売上高は、前年同期比6.9%(5400万ドル[約74億2500万円])減の7億4900万ドル(約1029億8000万円)となった。売上減と時を同じくして、同社は従業員のレイオフを含むコスト削減を進めている。

ガネットは人員を削減し、「さまざまな空きポスト」を廃止する予定だと、同社の広報担当者は述べている。また、サードパーティ企業との契約、フリーランス、出張などの分野でも「積極的な削減」を行うという。

経済情勢から、自社のあらゆる部門にわたって「厳しい決断を下さざるを得ない」と、ガネットの広報担当者は述べた。この「大幅なコスト削減プログラム」は、主にガネットの紙媒体事業に的を絞ったものになるという。

米国時間8月12日に、ガネットは一連のレイオフを開始した。削減された人数は不明だが、記者の労働組合「ニューズギルドCWA(NewsGuild-CWA)」(約50のニュースルームで働く1500人超のガネットのジャーナリストを代表)の会長、ジョン・シュルース氏の投稿によると、8月15日現在、20のニュースルームで少なくとも65人のレイオフが確認されているという。

「強力な財務モデル」を有し、「現在の市況が落ち着いて、成長がより正常なレベルに戻る」と考えている組織は、レイオフではなく、採用の減速で対処する可能性が高いと、PwCのバンガー氏は述べている。

一方で、「財務状況が脆弱な組織や、コストモデルが成長予測と合致しない」組織では、レイオフや「より厳しい」コスト削減策に踏み切る可能性が高くなると、バンガー氏はみている。

不動産の縮小

BuzzFeedは、2021年12月にコンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)を買収したことを受け、オフィススペースを縮小している。マンハッタンの18丁目にオフィスを構えるBuzzFeedは、43丁目にあるコンプレックスの本社を引き継いだが、そこには「十分なオフィスと制作スペース」があると広報担当者はいう。BuzzFeedは18丁目のオフィスをサブリースし、43丁目のオフィスをBuzzFeedの第一本社にする予定だ。「ニューヨークに本社は2つも必要ないからだ」と広報担当者は述べている。

200人超のCFOや財務幹部を対象にしたガートナー(Gartner)の2022年7月の調査によると、不動産は今後12カ月間に予算削減に直面する可能性が最も高い事業分野のひとつだ。ガートナーが調査したCFOの72%以上が、2022年末までに所有する不動産面積を削減したいと回答している。

[原文:How media companies like The New York Times, BuzzFeed and Gannett are managing costs in an economic downturn

Sara Guaglione(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)

Source