FXとは何かご存じでしょうか。Foreign Exchangeの略で、日本語では「外国為替証拠金取引」と呼びます。最近、急激に円安が進んでいるというニュースを耳にすることが増えてきました。円が安くなるということは、ドルなどの外貨と交換するときにより多くの円が必要になるということです。円が高くなれば、より少ない円で外貨と交換できます。例えば、1ドル120円の時にドルを買って、1ドル130円の時に売れば10円儲かるという仕組みです。
きちんとした知識が必要ですが、利益を出している人もいる真っ当な投資手段です。しかし、お金を増やしたい、儲けたいという人をFXを入り口に騙す詐欺手法もたくさんあります。
高額な商材を売りつけたり、自動売買ツールなどを餌に騙す手口など
昔からあるオーソドックスな手口から紹介します。
まずは、「FXの必勝法を教える」と言い、高額なセミナー動画や情報商材を売りつける手口があります。数千円から数十万円と幅が広く、内容もまちまちです。30分で書いたような薄い内容のものから、そこそこきちんと勉強して書いてあるものまでありますが、それでも書店で購入できるFX解説本の域は超えません。そもそも、必勝法と謳っている時点で詐欺です。FXに必ず勝てる方法はありません。
「素人がFXに手を出すと負けるので、代わりに運用してあげる」と持ちかける手口もあります。振り込んだ途端に持ち逃げするケースがありますが、利益が振り込まれるケースもあります。利益が振り込まれれば、多くの人は投資を続行しますし、投資する金額を増やしたり、友だちを紹介したりします。しかし、詐欺師は目標のお金を集めた途端、持ち逃げします。
典型的な投資詐欺ですが、初めてこの手の話を持ちかけられ、欲望に目がくらんでいると騙されてしまいます。詐欺師の話が上手いと言うこともありますし、FXで稼いでいる人が一定数いるので、信頼してしまう可能性が高まってしまうのでしょう。
次に、「自動売買ツールを使ってFXで儲けましょう」と持ち掛ける手口です。色々な条件を設定し、条件に合致したときに指定の条件で売買するのです。数十万円でこんなシステムが手に入るなら苦労しませんが、もちろん詐欺です。
自動売買ツールを「無料で体験」「モニターに当選」などというかたちでコンタクトを取ってくることもあります。しかし、利用料金は無料としつつも、メンテナンス料に10万円、アップグレード費に20万円が必要などとして、お金を取りに来るケースがあります。
騙される人が後を絶たないのは実際に合法的な自動売買システムが存在し、条件付けさえしっかりできれば利益を上げている人がいるためです。実際、感情にまかせてノリで売買するよりは、ツールに任せたほうがいいという意見もあります。
とは言え、それでも素人が勝てるアルゴリズムを手に入れることはできません。もしあるなら巨万の富を生み出せますが、なぜそれを数十万円で売っているのか、よく考えてみましょう。チャートを自動解析して必ず黒字にする、などというシステムはありません。
FX業者について、まずは金融商品取引業者の登録があるかどうか確認
利用するFX業者について、どういうところなのか事前に確認しなければなりません。利用条件がよいところがある、と特定のFX業者に誘導されたなら、まずは金融商品取引業者の登録があるかどうか確認しましょう。登録の有無は金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」の「金融商品取引業者」で確認できます。
「海外のFX業者だから日本に登録がないのは当然だ」と言われるケースもあります。確かに、海外のFX業者であれば金融庁商品取引業者の登録はありませんし、海外の業者だからといって必ずしも信頼できないとは限らず、ハイリスクな条件で売買でき、きちんとお金のやり取りができるところもあります。しかし、入金したら最後。勝とうが負けようが1円も引き出せない詐欺業者も多数存在します。自分で調査することが難しいのであれば、手を出さないようにしましょう。
こうした詐欺は高齢者だけでなく、若者も被害に遭う可能性があります。成年年齢が18歳に引き下げられたこともあり、満18歳から口座を開設できるFX業者が増えています。社会経験のない若者が、「必ず儲かる」などと勧誘される危険も出てきます。この手の話は詐欺だ、という情報を共有し、リテラシーを向上させる必要があります。
投資のリテラシーを身に付けることはもちろん必要なことです。ただし、誤った知識を与えて、詐欺のターゲットにしようとする者がいることも知っておかなくてはいけません。正確な投資の知識を身に付け、一攫千金などはない、といったことを理解しておきましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと