文字を分子の配列に置き換えて暗号化し「インク」に混ぜ込む技術が登場、解読困難な「秘密の手紙」の作成に成功する

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分子の重合体「ポリマー」の配列を定義し、文字などの情報を「分子の並び順」で表す技術を応用して、情報が埋め込まれた化学物質をインクに混ぜ、手紙にしたためて他者に送ることに成功したことが明らかになりました。情報は暗号化されており、「最速のコンピューターでも破ることは実質不可能」とされています。

Molecular Encryption and Steganography Using Mixtures of Simultaneously Sequenced, Sequence-Defined Oligourethanes | ACS Central Science
https://doi.org/10.1021/acscentsci.2c00460


Scientists hid encryption key for Wizard of Oz text in plastic molecules | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/08/scientists-encoded-the-wizard-of-oz-in-the-chemical-structure-of-ink/

昨今、情報を分子配列によって定義し、暗号化する技術の研究が進んでいます。例えばアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)といった要素で構成されるDNAは、その4つの記号を変換して文字を割り当てることで「文字」を「DNAの塩基配列」に変換し、情報をDNAに保存できるのではないかと期待されています。


テキサス大学オースティン校の研究者らは、配列定義ポリマー(SDP)を用いて実験を行いました。SDPはポリマーの基本単位「モノマー」が連なったもの。これらを特定の順番で配列することで、意図した情報を正しく伝えることが可能となります。

研究者らは小説「オズの魔法使い」を256ビットの暗号化キーに変換し、市販のアミノ酸からなるポリマー材料に保存。それをインクに混ぜて小説とは無関係な内容の手紙を書き、実際に郵送しました。

手紙は質量分析計にかけられ、ポリマー材料の元の構造と暗号化キーが明らかになりました。その結果、小説の内容を正しく読み取ることに成功したとのこと。


SDPに256ビットの情報を格納するという試みは初めてで、これほど多くの情報を格納したことはこれまでにないとのこと。暗号化を正しく行えば、既存のコンピューターで破るのは実質不可能ともいえるそうです。研究者は今回の結果を「分子データストレージと暗号の分野における科学的な革命的進歩」であると捉え、今後は書き込みと読み出しのプロセスをロボットで自動化する方法を見出したいと考えていると話しました。

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