米国ビューティ小売、 アルタビューティ が VC に進出:ビューティ分野のテックスタートアップに投資

DIGIDAY

アルタビューティ(Ulta Beauty)が正式にベンチャーキャピタルに進出した。

ビューティ業界のデジタルイノベーションに注力

アルタビューティ(Ulta Beauty)は8月3日、プリズマ・ベンチャーズ(Prisma Ventures)を立ち上げた。プリズマはビューティ分野のデジタルイノベーションに注力する2000万ドル(約2.7億円)のVCファンドである。プリズマ・ベンチャーズについてはアルタの昨年10月のアナリストデーで初めて発表された。プリズマはビューティの主要4分野において初期段階のテックスタートアップへの投資にフォーカスしている。その4分野とは、「パーソナライズされたデータ駆動型テクノロジー」「AR、VR、メタバース」「テクノロジーを利用したカスタムビューティ製品と店内サービス」「ソーシャルコマース」である。

「目標は、ビューティの未来という次章を定義して、ディスラプションを形作り、その一部になること」と述べているのは、アルタビューティのプリズマ・ベンチャーズ担当マネージングディレクター、アグスティナ・サルトリ氏だ。 同氏は、ARビューティテック企業、グラムストリート(GlamST)の創業者兼CEOであり、同社がアルタに買収された2018年にイノベーション担当ディレクターとしてアルタに加わった。

サルトリ氏によると、アルタビューティのVC投資の約8割は前述の4分野に向けられるという。残りの2割はビューティや小売、商取引などの幅広い分野で「本当にディスラプションを起こせるものは何かを考える」ために充てられる。また、シードラウンドとシリーズAラウンドはプリズマの「スイートスポット」の投資段階になるだろうと同氏は述べている。

2021年10月以降、プリズマファンドはスタートアップのレベア(Revea)、ルーム(LUUM)、ハウトAI(Haut.AI)、リスタイル(ReStyle)への投資に使われている。また、アルタはこれまでにアデプトマインド(Adeptmind)、ミンク(Mink)、イテレートAI(Iterate.ai)に投資している。

投資先と戦略的提携も

アルタビューティには、資本面の支援のみならず、投資先のスタートアップとの戦略的パートナーシップを結ぶという目的もある。投資のほかに、アルタはイテレートAIに「当社のローコードのAIイノベーションプラットフォームをテストして学ばせ、展開してスケーリングする機会」を与えてくれたと、イテレートAIの共同創設者兼CEO、ジョン・ノードマーク氏は述べている。

アルタビューティの最高デジタル責任者、プラマ・バット氏はある声明で次のように述べている。「我々が目指しているのは、スタートアップ企業らと永続的な関係を築き、彼らを当社のエコシステムに迎え入れ、お互いの専門知識を利用しながら共同で制作・実験して、最終的には我皆のリソースを活用してリテールとビューティの次のステップを考え続けることだ」。

サルトリ氏によると、ブランドらは「共同戦略的パートナーシップ」のみならず「市場、アルタのイノベーションチーム、消費者インサイト、市場テストへのアクセス」によってメリットを享受することができるという。スタートアップ企業は、アルタビューティのロイヤルティプログラムの会員3770万人を含む顧客ベースを対象に自社ツールをテストすることができるようになる。

アルタビューティは投資先すべてのテクノロジーを使うことを保証してはいないが、「ケースバイケースで」パートナーを募っているとサルトリ氏は言う。たとえば、ハウトAIは今年3月、アルタビューティとの戦略的パートナーシップを発表している。ハウトAIはインクルーシブな皮膚スキャン技術を開発しており、それは現在アルタビューティアプリの肌分析ツールの一部として利用されている。一方、アルタビューティは製品の好みに関するインサイトをハウトAIのレコメンデーションシステムに提供している。

「このファンドを始める前からすでにデジタルイノベーションとして提携は行っていたが、それはパートナーシップの観点からだけだった」とサルトリ氏。「今回のファンドにより、戦略的パートナーシップと資本支援の可能性がもたらされる。ある意味、我々は以前よりもより緊密なパートナーとして、いっそうシームレスに協働している」。

VCや買収によるビューティテック企業への深い関与

買収はアルタビューティのテクノロジー投資戦略の一環でもある。同社は、2018年、グラムストリートの買収と同じ月にAIテックスタートアップのQMサイエンティフィック(QM Scientific)を買収している。QMサイエンティフィックはアルタビューティアプリのレコメンデーションアルゴリズムに貢献している。買収は主要な目的ではないものの、サルトリ氏は「将来アルタビューティがほかのテクノロジー企業を買収する可能性はもちろんある」と述べている。

アルタビューティは、テクノロジー企業の買収へ動く主要なビューティ企業らの仲間入りをしたことになる。ロレアルグループ(L’Oréal Group)は2018年にモディフェイス(Modiface)を買収。ロレアルのVCであるボールド(Bold)はさまざまなビューティテックスタートアップに投資しており、今年5月に日本を拠点とするパーソナライズビューティプラットフォームのスパーティー(Sparty)に投資している。

「業界には多くの変化が起こっているが、それらには実験的なものが多い」とサルトリ氏。「先駆けていなければならない。ディスラプションが起きるのを待つのではなく、進行中のディスラプションの一部になることが重要なのだ」。

[原文:Ulta Beauty joins the VC world with launch of Prisma Ventures

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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