総額200万円以上を情報商材につぎ込めばYouTubeで一獲千金を達成できるのか?

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YouTubeは大量にアップロードされる動画の管理についてのほぼすべてを、アルゴリズムによって自動化しています。このアルゴリズムに最適化すれば、視聴者が求めるムービーを確実に視聴者の元へ届けることが可能になるということで、「YouTubeで確実にもうかる方法」を情報商材として有償で提供する者が多く登場しています。こうした情報商材に200万円以上を突っ込んだ人の体験談を、アメリカ日刊紙のニューヨーク・タイムズが紹介しています。

YouTube Automation Sprouts Cottage Industry That Promises Fast Money – The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/08/03/technology/youtube-automated-videos.html

YouTubeで収益化が認められるのは「1000人以上のチャンネル登録者」と「合計4000時間以上の再生時間」を達成したチャンネルだけです。収益化したYouTubeチャンネルは、ムービー再生による広告収入のうち55%を得ることができます。多くの視聴者を持つチャンネルは、こうしたムービーを無数にアップすることで月に数百万円もの広告収入を得ることができますが、大半のチャンネルは登録者数がまったくおらず、何も得られません。

33歳のスコット・ミッチェル氏は2021年の夏に、「Tube Mastery and Monetization(YouTubeで大勝利してお金を稼ぐ)」という講座に500ドル(約6万6000円)を支払いました。この講座の講師は「自分はYouTubeで月に3万ドル(約400万円)を稼ぎ、成功した受講生は月に2万ドル(約270万円)を稼いでいる」とアピールしていました。

この講座では、最も収益性の高いトピックの選択やYouTubeの検索でムービーをヒットさせやすくするためのキーワードなど、さまざまなテクニックが紹介されたとのこと。また、YouTubeのアルゴリズムがどのように機能するかも解説されたそうです。そして、視聴者が見たくなるようなムービーのトピックを見つけ、さらにレートに応じて30ドル(約4000円)~100ドル(約1万3500円)の予算でムービーを作成するためにオンライン市場からフリーランサーを雇うように指示されたとのこと。

しかし、肝心のムービーについては「キャッチーなタイトルをつけながらニュースやトピックの解説、有名人やアスリートのトップ10リストをナレーター付きで発表するような内容」というだけで、ミッチェル氏は「講義には、良質な台本で高品質のムービーを作る方法が含まれていません」と指摘。また、同講座の内容が講師のYouTubeページで無料公開されている内容程度しかないこともあり、ミッチェル氏を含めた受講生はFacebookの非公開グループで不満をもらしています。


そして、ミッチェル氏は2021年末に「富とセレブリティ」をテーマにしたチャンネルを開設しました。ミッチェル氏はフリーランスあっせんサイトのFiverrで見つけたフリーランサーに2000ドル(約27万円)を支払い、ムービー20本の制作を依頼しました。しかし、制作された動画のうち、俳優のドウェイン・ジョンソンに関するムービーで著作権違反があったためにYouTubeからムービーを削除され、ミッチェル氏は動画を制作したフリーランサーと大もめ。その後、チャンネルが視聴者を獲得できず収益化できなかったため、ミッチェル氏はチャンネルの更新継続を断念しました。なお、チャンネルの登録者数は記事作成時点で26人でした。

つづいて、ミッチェル氏はインフルエンサーのヴィクター・カトリーナ氏からノウハウを学べるコースに1500ドル(約20万円)で入会し、さらに3000ドル(約40万円)を支払ってカトリーナ氏のチームにムービーを作ってもらったとのこと。しかし、そのムービーの内容やアイデアはすべて他のチャンネルのパクリだったそうです。

さらにミッチェル氏は、Facebookグループで知り合ったフリーランサーから「ボットを使って偽の視聴者を獲得する企業から収益化条件を満たしたチャンネルを購入すればどうか」と提案されたとのこと。そこで、ミッチェル氏はフリーランサーに5000ドル(約68万円)を支払い、仮想通貨で金を稼ぐ方法を解説するムービー約60本を制作させました。しかし、YouTubeはミッチェル氏の開設したYouTubeチャンネル2つのうち、1つの収益化をはく奪。さらにもう1つのチャンネルは視聴者が集まらなかった上に、ムービーの著作権侵害でチャンネルが削除されてしまいました。フリーランサーは「著作権侵害にひっかかったのは、誰かが妨害行為で動画をアップロードしたためだ」と主張したそうです。

結局ミッチェル氏は3つのコースとサービスを利用し、合計で1万5000ドル(約200万円)以上を費やしました。しかし、ミッチェル氏は「どのコースも内容が空っぽだったり、フリーランサーが著作権を無視してコンテンツを盗んでいたり、視聴者増加戦術がYouTubeから問題されていたりと、フタを開けてみると全く役に立たないもので、結局財布が空っぽになっただけでした」と述べています。


ミッチェル氏と同じように情報商材に2万ドル(約270万円)をつぎ込んだアレクサンドラ・ファスロ氏は、有名人の情報を紹介するYouTubeチャンネルを6カ月以上にわたって運営しましたが、その品質に問題があり、視聴者を獲得できなかったとのこと。チャンネルの収益化はできたものの、1日の収益は10ドル(約1350円)にも満たず、ムービーの制作費を支払えなくなったため、更新を停止したそうです。ファロスさんは「YouTubeアルゴリズムへの最適化を目指しても割に合わないのは当たり前です。前もって大金をつぎ込んでいるのですから」と述べています。

一方、2019年からYouTubeチャンネルのアルゴリズム最適化を進めているデヤン・ニコリック氏は、記事作成時点でチャンネルを4つ、ショートムービーのYouTube Shortsをアップするチャンネルを12個も抱えているとのこと。しかし、ニコリック氏の収入の中心はYouTubeチャンネルではなく、ハウツー講座やサービスといった情報商材の販売で、2021年は140万ドル(約1億9000万円)を稼いでおり、2022年もすでに100万ドル(約1億3500万円)を稼いでいるそうです。鍵となっているのは受講料995ドル(約1万3400円)の講義で、収入の7割を担っているそうです。ニコリック氏は「YouTubeチャンネルで年間数百万円以上の収益を得ている人はそんなに多くありません」と述べ、オンラインビジネスサービスこそが収益を数千万円規模にすると述べています。

しかし、こうした情報商材の販売もすでにレッドオーシャンとなっている模様。テスラやSpaceXの創設者であるイーロン・マスク氏関連の情報を扱うYouTubeチャンネルを運営するジェリネ・ブランズ氏は、これまでチャンネルの収益で25万ドル(約3400万円)を稼いでおり、ハウツー講座の提供でも収益を上げているとのこと。しかし、ハウツー講座を受講した生徒がブランズ氏と同じようなチャンネルを開設し、同じようなハウツー講座を提供するため、全体的に収益は右肩下がりになっているそうです。

なお、200万円以上を情報商材につぎ込んで失敗を重ねたミッチェル氏は3万ドル(約470万円)をローンで支払い、YouTubeチャンネルを新しく購入することを検討しているそうです。ミッチェル氏は「これは私の最後の捨て身となる戦略です。もう少し時間が必要なのです」と述べています。

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