パナソニックが3年ぶりの「レッツノート工房」開催、16組の親子が参加し「CF-FV1」を組み立て

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 パナソニック コネクト株式会社は8月6日、兵庫県神戸市にある神戸工場において、「手づくりレッツノート工房2022」を開催した。

 小学校4年生から高校3年生までを対象として、ノートPC「レッツノート」の組み立て体験ができるイベント。組み立てたPCは持ち帰れる。開催は今年で20回目。新型コロナウイルス感染症の流行以来、3年ぶりの開催となる。例年は50組の親子が参加していたが、今回は感染防止の観点から募集枠を20組まで減らした。最終的に171組の応募があり、当日は16組の親子が参加した。参加者の内訳は兵庫県と大阪府から各5名、埼玉県、東京都、神奈川県、山口県、福岡県、鹿児島県から各1名。小学校高学年の比率が高めとのこと。

 組み立て体験の対象となるモデルは2021年夏モデルの「CF-FV1」。FV1は2021年から新たに投入された13.3型の狭額縁ディスプレイ搭載機種で、フットプリントの小ささとシリーズ随一の薄さで持ち運びしやすいサイズ感が特徴となっている。過去のレッツノート工房ではネームプレートの組み込みなどを行なった例もあったが、今回は参加者自身で天板のカラーを選べるのみとなった。

会場となったパナソニックコネクト神戸工場

開校/閉校式を行なう広場に集合

 開校に際しては、パナソニック コネクト株式会社 モバイルソリューションズ事業部 事業部長の坂元寛明氏が「理事長」として開校を宣言し「例年と比べて参加人数は絞らせていただいたが、3年ぶりにレッツノート工房を開催できてよかったと思う」旨の挨拶を行なった。

 また坂元氏は挨拶の後、会場の参加者に一旦目をつむるよう呼びかけて、3つの質問を投げかけた。その内容は「レッツノートが好きな人」、「レッツノートをパナソニックが作っていることを知っている人」、「将来パナソニックで働きたい人」というもの。回答は挙手制で、概ねの回答数はそれぞれ8人、10人、0人の順となり、会場の笑いを誘っていた。

 「校長」として登壇したパナソニック コネクト株式会社 モバイルソリューションズ事業部 神戸工場 工場長の矢吹精一氏は、今回の手作りレッツノート工房の開催で講じている新型コロナウイルス対策について説明。当日参加した約160名のスタッフ全員が抗原検査で陰性であることを確認して臨んでいると話した。また参加者ならびに保護者に対しては、感染予防としてマスク着用とソーシャルディスタンスの徹底、食事中などの会話については必要最小限とするよう協力を呼びかけた。

パナソニック コネクト株式会社 モバイルソリューションズ事業部 事業部長の坂元寛明氏

パナソニック コネクト株式会社 モバイルソリューションズ事業部 神戸工場 工場長の矢吹精一氏

組み立て体験にさきがけて、本イベントでもおなじみとなったレッツ博士と助手のぶーすけ、ろぼみが登場した

今回組み立てるCF-FV1の特徴を紹介

実際に組み立てている様子の映像を流してイメージを掴んでもらう

 CF-FV1の組み立て体験は、ベースとなるトップケース上に冷却ファンやタッチパッド、バッテリと各種配線を行なった後、ボトムケースを取り付けるというもの。材料としてルーバなどのカバー類や6種類29本のネジを用意している。組み立て手順は工場が用意した手順書に従い、前方に登壇した司会の手元カメラをお手本として進めていく。パーツの配置や配線など手を動かす場面では、設計や製造を担う同社スタッフが先生役として付添う形でサポートを行ない、手順を確認しながら一緒に組み立てを進めていった。

 組み立ては、各手順で必要な材料を確認しながら、ゆっくりと順番に行う形で進行した。具体的な組み立て順序は、冷却ファン、コインバッテリ、スピーカーケーブル、サブパワーケーブル、ファンボスキャップ、ボトムケース、パッドバックカバー、ゴム足の貼り付け、パッドカバーボタン、タッチパッド、ファンルーバ、バッテリの順。取り付けと配線、コネクタの接続に加えて、ネジ止めやケーブルの固定なども行なう。CF-FV1は発売当時レッツノート史上最薄を謳うモデルというだけあって、細かい作業が続いた。

 PCを組み上げたら最後に電源を入れ、専用の検査ソフトで動作を確認して、組み立て体験は完了。自分の手で組み立て無事に動作するPCを前に、参加者の顔にも笑顔が浮かんでいた。

PCが組み上がったら全員で記念撮影

生産施設の見学で「作業改善」も体験

 今回のレッツノート工房では、レッツノートの組み立て体験だけでなく、実際にレッツノートを生産している工場内各施設の見学や、パナソニックコネクト製品をわかりやすく紹介する趣旨のイベントも盛り込まれていた。

 工場見学では、製品の各種強度試験や部品の実装、出荷にいたるまでの一部を、係員の解説つきで見学した。一定の環境を維持できる「恒温恒湿室(槽)」から、ホースで水をかける防水試験機、落下試験機でTOUGHBOOKの強度試験を体感した後は、PCを生産する施設から「実装工程」「ボード工程」と呼ばれる製造工程の様子を紹介していた。

 工場見学の一部として、「作業改善」をテーマとした体験型イベントも実施。参加者には1分間の持ち時間内にレゴブロックを規定の組み方でできるだけ高く組み上げるミッションが与えられ、インターバルをはさんで2回分用意された試行の間に、より正確で効率的な作業改善の方法を考える趣旨。

 1回目、2回目どちらの試行でも参加者には自由にブロックを組み上げてもらうが、試行の間に係員からヒントが与えられる。内容としては、「ブロックの収められたケースにすべての色が混在している」、「ケースの位置が手元から遠い」、「ケースの中でブロックの向きがバラバラになっている」、「縦に高く積んでいくとぐらつきが激しくなる」といったもの。5分間のインターバルの間にこれらを踏まえて2回目の作業改善を図る。また2回目は必ず用意されたケースを使うことを必須とした。

 2回目の試行では、参加者それぞれの工夫が見られた。改善内容は「高く積み上げると崩れるので寝かせて組んでいく」、「組むたびに回転させてブロックをはめこむ方向を常に一定にする」、「色ごとのブロックを分けてケースに収納する」、「やり方は変えないが、練習してより速く作業できるようにする」といった具合。2回目は、全員が1回目よりも多くブロックを組み上げることができた。

 係員いわく「改善とは『しんどさを減らすこと』。それは変化であり、変化によって一時的に作業効率が落ちることもありうるが、その変化が良い変化である限り、練習することで以前よりも高い成果を上げることができる。しんどくなくなると、その分それを好きになる余地が生まれる」とした。このイベントは参加型であることに加えてゲーム要素もあるためか、参加者/保護者ともにおおいに盛り上がった。

「作業改善」を体験するイベント

決まったパターンでブロックを積み上げていく

2回目の試行では、ブロックをより速く組み上げるための効率化を各自行なっていた

2回目は全員が1回目よりも高くブロックを積み上げることができた

 ARグラスを使ったアトラクション「コネクトショップ」では、イベント会場に配置されたQRコードを読み取り、表示されたパナソニック コネクト製品の説明を読んで価格を推測するゲームを実施した。各製品は小売希望価格1万円につき1ポイントが設定されており、価格が規定の合計ポイントに近くなるよう考えながら「購入」していき、時間内に規定ポイントに最も近づけた参加者が勝ち、という遊び。

 筆者が取材した際は合計850ポイントを既定値としていたが、製品の中にはレッツノートのほか50ポイントのTOUGHBOOKや300ポイントの業務用カメラなどが含まれていて、さすがに難しかったのかポイントを大幅にオーバーする参加者が続出していた。

 このほか、防塵/防滴/耐衝撃を含む業務用高耐久端末の「TOUGHBOOK」を搭載したパトカーの実機やショールームツアーなども実施した。

 一通りのイベントを終えると、参加者が組み立てたCF-FV1を持ち帰れる状態に梱包し、1年間の修理保証がつく「特別保証書」と「完成証明書」を受け取った。

最後にPCを外箱に収めて閉校式を迎えた

帰りは集まったスタッフ全員で見送り

この日は降水の予報もあったが、イベントの時間帯はずっと晴れていた。最高気温は約30.2度

工場の一部自動化も実現

 今回のレッツノート工房では、矢吹氏から一部製造工程の自動化について神戸工場が進めている取り組みが紹介された。

 神戸工場ではすでに基板の実装とボード組み立てを自動化しているが、この日はさらに完成組立工程における自動化の事例を紹介。不良品の検出そのものが目的ではなく、直行率(工程に流した製品の良品割合)を上げることを目的とする。PCは精密機器という特性上、人の手で作業する割合が多いほど静電破壊を起こす可能性が上がることから、自動化については積極的に推進していると話した。

 「現在、我々が自動化を進めているのは、組立工程を終えた後の最終工程。品質保証にかかわる部分です。これには基本的な動作のほか画面の色やサウンド関係のチェックなどが含まれますが、自動化の例としてはキーボードの打感(打鍵感)に関する品質チェックをロボットに任せています。これは工場から不良品を出さないポリシーにもとづいて、人の手による判定のミスを徹底的になくす方向性です」。

 キーボードをチェックするロボットは、2本の指でキーを押下して圧力を検知し、基準となる値から外れたものを従業員向けに表示する。これまでは従業員が手でキーボードの異常をチェックしていたが、担当者が替わると感覚にばらつきが生じることから、人の感覚に頼らないチェック方法としてロボットを採用した。このロボットは1台につき2台のキーボードをチェックできる。このチェック工程は現在CF-FV1の製造ラインのみで実施しているが、今後はこの実績を踏まえて別シリーズの製造ラインに展開させていきたいという。

 「今回、レッツノート工房で参加者のみなさんが作業した部分は、実際の製造工程においても同様に人間の手作業が残っている部分。今後はこの組立工程についても自動化を進めていきますが、現在は最終工程を優先しているという状況です」。

 最後に、人間がやらなくてもいい仕事や、機械の方が高い精度を出せる仕事をロボットに任せる一方で、人の感性でカスタマイズする部分は残していくと話した。

レッツノート「CF-FV1」の検査工程

工場の時点で不具合をゼロにすること、自動化推進の目標を語る矢吹氏

キーボードの打感チェックを行なうロボット

打感に異常があると画面上で赤く表示する。写真ではF10キーに異常が見つかった

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