【ブチギレ】先週イタリアの空港で搭乗拒否されました / 今も旅行者を苦しめ続ける『PCR日本式フォーマット』の現状

ロケットニュース24

コロナ禍まっただ中の2021年秋、私は3カ月間の海外旅行へ出かけた。禁止されているわけではなかったものの、今と比べれば段違いに出入国の条件が厳しかったころだ。中でも我々を苦しめていたのが『日本式フォーマットに記入された陰性証明書』の取得である。

私が当時どれほど苦労したかについては、エジプトで日本式フォーマットを取得した記事に詳しく記した。あれから約半年。最近海外へ出かけたウチの父当サイトのサンジュン記者は、ほぼ苦労せず出入国できたとのこと。

私が先週、日本行きの便に乗ったのはイタリアの首都・ローマ。途中まではトントン拍子にコトが運んでいたのだが……やはりというべきか。最終最後、なんと搭乗拒否を食らってしまったのだ。海外への渡航をお考えの方はぜひご一読いただきたい。

・認知されつつある日本式フォーマット

現在、厚生労働省のホームページには「検査証明書の様式については特に指定はない」とある。ただし「必須項目が日本語または英語で記入されている必要がある」など、諸外国と比べて様式に関するチェックが厳しめだ。様式なんてどうでもいいじゃん……という問題はまた別のお話。

要するに「日本式フォーマットじゃなくてもいいけどNGになる危険性があるので、日本式フォーマットを使っておけば安心だよ」ということ。そのため多くの日本人が “念のため” 日本式フォーマットを使用しているのが現状なのだ。

ネットで予約した検査ラボへ行き、緊張の面持ちで「日本式フォーマットに記入してほしい」と告げてみる。昨年のエジプトではこの日本式フォーマットの存在を誰も知らなかったため「記入できない」と言われた。私にとってはトラウマとも言うべき瞬間だ。


が…………あっさりOK!!!!!


なんなら「日本人」と口にした段階で「あ〜ハイハイ。例のヤツが欲しいのね」と、何とも物分かりのよい態度。おまけに結果を取りに来る必要はなく、登録したメールアドレスへデータで送ってくださるのだそうな。検査を終えてラボを出るまで、所要時間はわずか5分!

この半年で日本式フォーマットは広く海外に認知され、かつ検査の手順も簡略化されていたのだなぁ〜!


・マル特! 豆知識

ちなみに……日本へ帰国する際、陰性証明として認められるのが『PCR検査』だけではないことをご存知だろうか?



PCR法は『核酸増幅検査』の中の1つの検査方法。あまり知られていないが、実は『抗原定量検査』という方法であればPCR検査より費用が安くつく場合が多い。私が今回利用した検査ラボでは、PCR法が60ユーロ(約8244円)、抗原定量検査なら15ユーロ(約2061円)。おまけに待ち時間も短かった。



検査から2時間後、メールで結果と日本式フォーマットが送られてくる。もちろん陰性。メールには「もし紙の証明書が欲しければいつでも取りにきてね!」の一文が。半年前であれば成田空港で紙の陰性結果を提出する必要があったため、私はすぐさま取りに向かっただろう。


が……私は行かなかった。その背景には、今年から運用が開始された『ファストトラック』の存在がある。

『My SOS』アプリ上で事前に陰性証明書の画像や必要情報をアップロードしておけば、検疫にかかる時間の一部が短縮されるというファストトラック。検査日の夜に登録し、翌朝目覚めると審査結果が通知されていた。


ホッ! バッチリOKらしい!


ファストトラックを通過したということは、私の検査結果は日本へ入国するための条件を満たしていたということだ。なおイタリア出国、ならびに私の利用する『カタール航空』へ搭乗するにあたっては、陰性証明などは必要ない。

さらにMy SOSアプリ上には、QRコードと共に「航空機搭乗時と日本到着時にはこの画面を見せてください」という表示が出現。空港カウンターでこの画面を見せればスンナリ搭乗できるということなのだろう。この半年間でずいぶん進化したんだな〜!

かくして私は翌日、自信満々でローマのフィウミチーノ(レオナルド・ダ・ヴィンチ)空港を訪れた。ここまで来ればもう帰国したも同然!


・ところが

と、思ったのに……! なんとカタール航空のチェックインカウンターで陰性証明書を提出したところ、「日本はPCR検査しか認めていない。よってあなたを乗せることはできない」と搭乗拒否されてしまったのである!!!!

私は慌てて厚生労働省のホームページを示し「日本は抗原定量検査も認めている」と熱弁した。しかしながら職員の方「私は日本語を読めない」と取り付く島もない。当たり前である。

職員の方とて適当な対応をされているわけではなく、カウンターに置かれた『国別・入国条件』のシートには確かに「日本はPCRオンリー」と記されていた。要するに情報の伝達がうまくいっていないのである。

かくなる上は、仕方あるまい。私は最終奥義 “MySOSのQRコード画面見せ” を発動した。「航空機搭乗時にはこの画面を見せて」と記載されているのから、これでなんとかなるハズなのだ。


ところが…………



「ソレ、何?」と言われてしまったァァァアア!!!!!!!


・嘘つくな!

話が違いすぎることが判明してしまったファストトラック制度。なんのことはない、My SOSなんて日本国内でしか使えなかったのだ。

そこからの私は文字通り汗だくで「頼むからよく調べてほしい」と職員の方に懇願し続けた。哀れに思ったのか、最終的に日本のどこかへ電話をかけてくれる職員の方。どうにか搭乗できそうな気配が漂ってきた……!

が、ドタバタ劇は終わらない。なんと「日本式フォーマットを紙に印刷する必要がある」と言われてしまったのだ。日本入国に紙は必要なくなったハズなのだが……恐らくこれも情報の混乱によるものだろう。

ここでお断りしておきたいのが、カタール航空職員の方は最後まで親身に対応してくださったということ。コピー機を探して私と一緒に空港内を駆け回ってくださった職員の方、本当にかたじけない。悪いのは全てめんどくさいシステムを作った日本政府だ。

ようやくサービスカウンターで証明書をコピーしてくれることが判明し……

離陸1時間前、私はどうにかチェックインカウンターを通過することができたのだった。

今回の経験で感じたのは「日本のルールは半年くらいたってようやく世界に認識される」ということ。つまり外国から見ると日本はまだ “妙なフォーマットを作成し、デジタルではなく紙にこだわる国” なのである。

今さら諸外国に倣って手続きを簡素化したところで、かつての不手際のシワ寄せは今後も日本国民を苦しめる場合があるだろう。今回私はたまたま間一髪で難を逃れることができたが、運が悪ければマジで今でもイタリアに居たかもしれない。

ちなみに成田空港での入国審査はわずか10分ほどで終了した。以前よりは簡単になったと言われる日本への入国……だがしかし。外国では何が起こるかマジで分からないんだぞ! 自信がない人は今後も「PCR検査を・日本式フォーマットで・紙の用紙でゲット」するよう心がけてくれ!

参考リンク:厚生労働省
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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