回収ローバーはキャンセルに。
火星の岩石や土壌を地球に持ち帰るというNASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションの新展開。BBCにより報じられ、NASAから発表がありました。
火星では現在、探査車「パーサヴィアランス」がマーズ・サンプル・リターン・ミッション(MSR)で持ち帰るための地表サンプル採取と保存に取り組んでいます。そしてサンプルの回収には、Airbus(エアバス)社が開発を進めている“フェッチ・ローバー”が投入されることになっていました。
しかし、NASAとESAがMSRの計画を見直した結果、プロセスの簡略化とリスク&コスト削減のため、サンプル回収を行なうフェッチ・ローバーの代わりにロボットアームやヘリコプターが活用されることになりそうです。
ESAのDavid Parker博士は「火星にはパーサヴィアランスが居て非常に有能だ。信頼性解析はパーサヴィアランスが動き続けられることと示唆している。それによって我々はプログラムを簡素化できフェッチ・ローバーを外せるようになり、新たな(リスクある)着陸の必要性を排除できる」とBBCに語っていました。順調に稼働しているパーサヴィアランスならば回収作業も行えるだろうと踏んだようですね。
高性能ロボットアーム
そしてESAはサンプル回収の新たな手段のために、先日イギリスで開催されたファーンボロー国際航空ショーで、イタリアの航空宇宙企業「Leonardo S.p.A.(レオナルド)」と契約を締結。同社は、MSRでサンプルチューブを回収するためのロボットアーム「Sample Transfer Arm」の設計や開発などを担うことになります。
「サンプルを運ぶ腕」を意味するSample Transfer Armは“肩”、“肘”、“手首”で人間の腕を模した最新鋭ロボットアームで、ESAのプレスリリースいわく「“見て”“感じて”、自律的な意思決定ができる」そう。長さは2.5m、コンピュータやカメラ、センサー類を搭載していて7自由度での幅広い動作を行なえるとのこと。また、嵐や気温(-130°C/+70°C)など火星の過酷な環境も踏まえて開発されます。
ESAのプレスリリースでは、「アームはとても器用なのでチューブを探査車から取り出したり、火星の地表から拾いあげたり、容器に入れて火星を離陸する前に蓋を閉じることができる」と説明されていました。2025年11月までにNASAに届けるとBBCは報じています。
ヘリコプターの活用
また「もしかしたら、小型ヘリを1機や2機を保険として使えるかも」とParker博士がコメントしていた通り、サンプルを空輸できるヘリコプターが2機投入されそうです。パーサヴィアランスが壊れてしまった場合、小型ヘリコプターが代役を務めます。
火星でヘリと言えば、期待をはるかに上回る活躍を見せている「インジェニュイティ」が思い浮かびますが、そう遠くはない未来、複数のヘリコプターが火星を飛行するようになるのでしょうか。だとしたら、まさに宇宙探査新時代の幕開けですね。
小型ヘリコプター、アーム、帰還用ロケットは2028年中までに打ち上げられる予定で、サンプルが地球に届くのは2033年の予定です。