プライバシーの時代、広告プラットフォームの未来とは : Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE レポート

DIGIDAY

プライバシーがデジタルメディアのエコシステムを、大きく変化させ始めている。そんななか、日本を代表する広告プラットフォーマーのひとつ、ヤフーはどこを目指しているのか?

6月10日に開催されたデジタルマーケター向けオンラインイベント「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2022」。そのなかのセッション「ヤフーが考えるプライバシーとこれから」に、ヤフーの小西雅永氏が登壇した。同氏は、プライバシーとデジタルメディアエコシステムの関係性を紐解きつつ、ヤフーが考えるプライバシーと広告について語った。

「インターネットに初めて広告が掲載されたのは、1994年、AT&T社のバナー広告だとされている。それから約30年弱、デジタル広告は大きく進化した」と、セッションの冒頭で、小西氏は切り出す。「この30年の歴史を振り返ると、約10年ごとに大きなトレンドの転換があったことが確認できる」。

現在、ヤフーでメディアプラットフォーム統括本部、広告プロダクション本部プロダクト戦略部長を務める小西氏は、2005年にヤフーへ入社。一貫してデジタルマーケティング畑で業務に携わってきた。2013年からはプログラマティック広告の責任者に着任し、いまはヤフーのディスプレイ広告におけるプロダクト戦略立案や推進をリードしている。

イベント時のヤフー・小西雅永氏

デジタル広告における30年の歴史

「(1994年からの)最初の10年がメディアの時代」と、小西氏は続ける。この時期にデジタルメディアの収益化が進み、ヤフーのような巨大メディアが立ち上がった。次の10年はオーディエンスの時代だ。このころから、メディアのネットワーク化が進み、「枠から人へ」という大きなテーマのもと、マーケティングが大きく進化した。そして、2016年から現在が、プライバシーの時代となる。

「マーケティングはオーディエンスの時代で、人を中心としたものへ高度に発展した。その一方で、同時に、ユーザーのプライバシー保護が叫ばれるようになり、世界的なトレンドとして、不可逆に進行している」。

そのわかりやすい例が、EUの一般データ保護規則(GDPR)であり、日本の改正個人情報保護法だ。また、すでに導入が進んでいるAppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)やATT(App Tracking Transparency)。そして、2023年以降に予定されているChromeのサードパーティーCookie廃止、Androidの広告ID規制など、このプライバシー保護規制は、さらに厳しくなることが予定されている。

プライバシーの時代の真意

このプライバシーの時代では、基本的にサイトやアプリ間における「ユーザートラッキング」ができなくなる。その影響がもたらすものは、次の2つであると小西氏は解説した。

  • サードパーティーCookieや広告IDが利用されていた「コンバージョン計測」が徐々に欠損し、キャンペーンゴールの把握や最適化が困難になる。
  • サードパーティーCookieを利用していた「リターゲティング」も段階的に機能しなくなる。特に国内では、この分野が過去10年、大きく拡大していた。

これらによって、広告効果が大きく減少。それは、各媒体の収益の減少にも繋がり、それを原資としていた情報の流通量も減少、さらにはユーザーの減少も引き起こすかもしれない。

もちろんこのプライバシー保護は、最優先で考えなければならない問題だと、小西氏は釘を刺す。だが、それだけを追求していけば、「有益なコンテンツを無料で楽しみたい」といったユーザーの根源的なニーズをかなえ続けることは困難になる。

「従って、このプライバシー保護を前提としながらも、これまで以上に広告主に高い広告効果をお返しすることが、この広告で支えられてきたデジタルメディアエコシステムを維持・発展させ、広告主や広告代理店だけでなく、メディア、さらにはユーザーなど、すべてのステークホルダーの利益になると考えている」。

「ユーザーファーストの精神」

1996年に創業したヤフー。CEOは、現在の小澤隆生氏で4代目だ。在籍18年目となる小西氏は、その4代に渡るCEO全員のもとで仕事をしてきた。それぞれ、独自の個性を持った経営者で、戦略やカルチャーは大きく異なるが、そのなかでも唯一「ユーザーファーストの精神」だけは共通していたという。

「このユーザーファーストは、我々ヤフーのDNAだ。ユーザーの方々から圧倒的な支持をいただく原動力であると考えている。プライバシー保護においても、このユーザーファースト重視の姿勢は変わらない」。

ヤフーの親会社となるZホールディングスは5月、データプロテクション基本方針を発表した。そのなかで、「ユーザープライバシーファーストの実現」を宣言している。その基本方針に従って、ヤフーでも各種取り組みを実施しているという。現在の取り組みは、主に次の3つだ。

  • コンプライアンス&プライバシー:Zホールディングス内における有識者会議、またビジネスから完全に独立したデータプロテクションオフィサーの設置を通じて、ガバナンス体制を強化。それによってユーザーのデータを保護している。
  • アカウンタビリティ:これまでユーザーの方々から、パーソナルデータの取り扱い方が非常に分かりにくいという声が多かった。それを受け、情報へのアクセスのしやすさや分かりやすさを目的とした、プライバシーセンターのリニューアルを昨年実施。
  • コントロール:それぞれのパーソナルデータを閲覧・修正・削除できる機能を提供。それらの利用や提供先を、コントロールすることも可能だ。広告においても、ターゲティングをオプトアウトする機能を提供しており、今後もさらにこれらの取り組みを推し進めていく。

ヤフーにおける各種取り組み(※画像クリックで拡大)

未来志向の広告プラットフォームに

これらを踏まえて、小西氏が担当しているヤフーのディスプレイ広告では、ユーザープライバシーの保護を前提とした広告プラットフォームへアップデートしていく。特にプライバシー法規制の裏側は、国や地域ごとに異なる法律・ガイドライン、OSやブラウザごとの仕様変更、さらには日々提案される新しい広告関連技術など、非常に複雑であり、動きが速い。

「ヤフーではこのような複雑な問題を、できる限り広告プラットフォーマー側で解決しようと努力している。広告主や広告代理店の方々には、これまでどおりマーケティング活動へ専念いただけるようなプロダクトの開発を進めている」。

このようにヤフーはプライバシー保護を前提とした広告プラットフォームへと進化し始めたが、そのなかで2つの点を重視していると小西氏は語る。それが「正しいゴールの理解」と「適切なユーザーへの広告配信」だ。

「正しいゴールの理解」のためにヤフーは、AppleのSKAdNetwork、Googleが中心となって推進するPrivacy SandboxのAttribution Reporting APIなど、プラットフォーマーが提案する新しい計測手法をキャッチアップ。それらの仕様改善にも直接貢献しているという。さらに、独自の計測手法についても、年内にいくつかのリリースを予定している。まずは、ユーザー同意情報の活用だ。詳細マッチング、コンバージョンAPIという、ふたつの機能のリリースを予定しているという。

「これらの機能により広告主側で、ユーザーの同意を頂いたメールアドレスなどの情報を暗号化して送信、弊社のデータベースと照合することによって、コンバージョンを正しく計測することができるようになる」と小西氏は語る。「確定情報だけで不足する部分については、推定技術の活用を検討している」。

「適切なユーザーへの広告配信」については、リターゲティングが徐々に難しくなっているいま、ヤフーの圧倒的なユーザー接点と膨大なデータを活用しユーザーを類似拡張することで、これまで以上に効率的なキャンペーンを実現できるようになっている。現在、ターゲティング、類似拡張、自動入札など、これらの機能はそれぞれ独立した機能として存在しているが、今後はこれらの機能をシームレスに統合していく予定だ。

独立している各機能をシームレスに統合していく(※画像クリックで拡大)

「キャンペーンの目的やターゲティングセグメント、広告アセットなどの事前情報をもとに、最初に配信するユーザーを決定し、広告を配信。その配信結果からコンバージョンにつながるユーザーの特徴を、ヤフーの膨大なデータから分析、拡張、その類似度によって自動的に入札額を調整する、このような一連のステップを、すべて自動で実行できるようにしていく」。

すべてのステークホルダーのために

プライバシーがデジタルメディアのエコシステムを、変化させ始めている。この問題は、広告主だけではなく、広告収益によって成り立っていたデジタルメディア、さらにそのユーザーにまで影響が及んできた。

「我々は、ユーザーファーストの精神のもと、プライバシー保護を最優先としながら、新しい広告プラットフォーマーへと進化していく」と、小西氏は締めくくる。「これまで以上に広告主の正しいゴールとユーザーの理解を深め、広告という手段を使って適切にそれらをつなげることで、すべてのステークホルダーに喜んでもらえるような世界にしていきたい」。

「ヤフーが考えるプライバシーとこれから」セッション全編はこちらからご覧ください。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO
Image courtesy of ヤフー株式会社

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