「 ソーシャルメディアマネージャー は、冗談のようなもの」:某有名TV番組の元ソーシャルメディア マネージャーの告白

DIGIDAY

今日のソーシャルメディアの世界には、ブランドのアカウントを常にリアルタイムで、高い期待を抱いて追いかける顧客、ファン、そして一般大衆が存在する。クリエイティブなコンテンツを投稿し、ネット上での会話に深く関わり、誠実かつ有意義な相互作用を生じさせ、さらにはフォロワーの質問やコメントにほぼ即答するだけでなく、フィードには必ず新たな有益情報が載っている。それを、ソーシャルメディアユーザーは「当たり前」として期待している。

そんな多大なプレッシャーをまともに受けるのは、一部のソーシャルメディアマネージャーにしてみれば、耐え難いものであり、彼らがこなす仕事への期待は高まる一方という現状に鑑みると、ますますそう言える。匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は某有名TV番組の元ソーシャルメディアマネージャーが、当時直面していた問題や企業側に望むことを率直に語ってくれた。

なお、読みやすさを考慮して、発言は編集し、端的にまとめてある。

――ソーシャルメディアマネージャーとして、これまでどのような問題に直面した?

ソーシャルメディアマネージャーは一般に、賃金がありえないほど低すぎる。多くのブランドは、ソーシャルメディアマネージャーをいまだ新しい職業として扱っている。しかしそれは間違いで、少なくとも12年以上前からある職業だ。それにも関わらず、たいていのブランドはお手上げだというように、「いくら払うのが妥当なのか、見当も付かない。とりあえず、これが上限だ。それ以上は出せない」と。しかし、ほかの会社がたとえば2倍近く多く払ってるのを見ると、「給料は賭けの問題なのか」と思ってしまう。

それに加えて、私のようなソーシャルメディアマネージャーは、ある種の冗談のようなものだ。そして、「独り部隊」でなければならない。多くの人は「どうせ、ちょこちょこっとツイートをするだけなんだろ、大してきつくもないし、大した金をもらうような仕事じゃない。それくらいが妥当だろう」と思っているだろう。しかし、たいていの場合はそうではない。私たちはグラフィックデザイナーのプロデューサーだ。クリエイティブなんだ。コンテンツのアイデアもいろいろと出さなくてはいけないし、クライアントとコラボもしないとならない。ポップカルチャーに精通することも必要だ。ブランドは無償で100万個くらいの事を平気でやらせようとしてくる。そこが最大の問題だと思う。

――ソーシャルメディアマネージャーが置かれている状況について、組織に理解してもらいたいことは何か?

企業からの期待が大きすぎることだ。つまり、企業側にも少し待つ努力をして欲しい。もちろん、常に連絡が付く状態でいるべきなのは理解しているが、これはやりすぎではないかと思う場面もある。たとえば、私が飛行機に乗っている状況にも関わらず、一刻も早くネット回線を確保して対応しなくてはいけないとか。ソーシャルメディアは一日24時間、年中無休みたいなもの。いつ何時、どこの誰からツイートが来てもおかしくない。

前の会社では、私はあるTV番組の担当だった。そこに出演していた某有名俳優は、金曜の深夜とかに平気でツイートをしてくる人だったので、そのたびに私が対応するしかなかった。そういうのは少し嫌だったけれど、仕事自体は楽しい。いわゆる充実感をくれる仕事だ。常に気を張っていられるし、それはいいこと。だからこそ、もう少し評価されることを望んでいる。

――この仕事において、まずは何を改善すべきか?

助けが足りていない。大きなブランド、小さなブランド関係なくソーシャルメディアマネージャーはみんな、助けを必要としている。少なくともインターン、アシスタント、グラフィックデザイナーが必要だ。個人じゃなくて、体制を整えるべきだと思う。私の特定の状況について話しているように聞こえてしまうかもしれませんが、実際にこういう状況にいるソーシャルメディアマネージャーを、私はたくさん知っている。基本的に助けが足りないし、みんな、もっとしっかり助けてもらって然るべきだ。

――ソーシャルメディアマネージャーのツイートはすべてバズるべき、という思い込みが雇用主側にはあり、以前から問題視されている。それにより、ソーシャルメディアマネージャーへのプレッシャーが増しているように思うが、それについてはどう考えているか?

私は、そのようなことはあまり経験したことがない。前の職場では、かなり自由にさせてもらっていたから。それよりも、私に対する上の人間の無関心のほうが問題で、「とにかくこのブランドを良く見せろ。何をやろうが構わないし、知ったこっちゃない」という感じだった。

ブランドのマーケター勢にはソーシャルメディアの状況と、バズる仕組みを理解して欲しい。彼らは、バズるっていう言葉を自分の子どもの口から聞いたことがあるだけで、意味は何もわかってない。バズらせるというのは、それを人気にするという意味、ということさえも知らない。どうしたらそれを人気にできるのか? 彼らは勝手な憶測をするだけで結果的にソーシャルメディアマネージャーに過大な要求をする。何かを流行らせることは非常に困難なことだというのを理解して欲しい。

――どこかのブランドのSNSをまた扱いたい?

条件次第で、然るべき環境と然るべきお金が約束されるならの話だ。しかし正直なところ、もういいかな、とも思ってる。実はこうやって本音を語るのも嫌なんだ。私はもう30代。前職を始めた25歳の時は、Snapchatとかインスタグラムとか、そういう流行をちゃんと把握できていた。でも今はもう、隅から隅まで全部わかってるのが当然とされている。正直、あれは若い人のものだと思う。

[原文:‘Army of one’: Confessions of a former social media manager on the role’s biggest challenges

Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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