「オリジネーター・プロファイル(OP)」への取り組み――村井純・慶應大教授 ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2022/7/7~7/14】

INTERNET Watch

1. 「オリジネーター・プロファイル(OP)」への取り組み――村井純・慶應大教授

 7月8日付の読売新聞オンラインでは慶應義塾大学の村井純教授へのインタビュー記事が掲載されている(読売新聞オンライン)。

 そのなかで、内閣府の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の座長としての経験を踏まえ、「コンテンツと広告の関係に課題を感じる人たちが参加し、プラットフォームの構造を変える標準化の議論を進める必要がある」と指摘した。その1つの取り組みとして、「オリジネーター・プロファイル(OP)」と呼ばれる技術のコンセプトについて触れている。「ネット上のニュース記事などのコンテンツ(情報内容)について、もともと誰がどのように作ったのかが確認できる証明書のような仕組み」であり、「そのコンテンツやメディアが信頼できるかどうか判断できるし、広告主は信頼できるコンテンツや媒体に広告を出すことができる」ことを目指すものだという。実用化には「3~5年で新しい世界ができても全然不思議ではない」とも述べている。

 そして、コンテンツの信頼性の可視化は海賊版サイトにおける広告対策だけでなく、大きな課題であるフェイクニュースの対策にもつながるかもしれない。

ニュースソース

  • ネット記事・広告 信頼向上を…村井純氏 慶応大教授[岐路の資本主義]特別編 デジタル時代の情報危機[読売新聞オンライン

2. 総務省、大規模災害時の他社ローミングや無料Wi-Fi開放を検討

 先日のKDDIの大規模通信障害が記憶に新しいなか、7月7日にはNTTドコモでの通信障害が報告されている(ケータイWatch)。今回の通信障害はそれほど規模は大きなものではないようだ。しかし、こうした通信障害は「何年かに一度の極めてまれ」な事故ではないことを改めて認識すべきかもしれない。

 金子恭之総務大臣は、KDDIの通信障害を受けて、障害発生時には「臨時的に他の事業者へのネットワークへ乗り換えられるローミングも重要な課題のひとつと認識」という考えを述べている(ケータイWatch)。もちろん、「ローミングを実現するためには、ネットワーク設備の改修や、ローミングの運用ルールの策定などクリアすべき課題がある」ことから、そう簡単には実現できないが、事業者単位ではなく、産業全体としての解決策も検討する段階にあるだろう。また、IoTのインフラを提供するソラコムはマルチキャリアへの対応戦略をとっている(日経XTECH)。今回のように障害が続いたことから、こうした技術的なアプローチは他の事業者でも増えると思われる。

ニュースソース

  • ドコモ、7日夕方から通信障害[ケータイWatch
  • 金子総務大臣、大規模災害時の他社ローミングや無料Wi-Fi開放に「重要な課題のひとつ。今回の教訓活かす」[ケータイWatch
  • KDDI通信障害で企業の関心アップか、子会社ソラコムが進めるマルチキャリア対応[日経XTECH

3. スマートウォッチでのコロナ感染特定に有効性

 新型コロナウイルス感染拡大の第7波への懸念も高まりつつある。これまで以上に爆発的な感染が発生したとき、従来のような検査だけではなく、別の方法が有効になる可能性も出てきた。

 スマートウォッチで取得したデータをAIが解析することで、「発症前に感染を特定できる可能性が、新たな研究で示唆された」という研究結果が報じられている(ダイヤモンド・オンライン)。

 この研究は「3つのセンサーで5つの生理学的パラメーター(呼吸数、心拍数、心拍変動、手首の皮膚温、および皮膚灌流圧)を測定できるほか、睡眠時間と睡眠の質もモニタリング」するという方式だ。記事によると「発症前に29日間以上デバイスを身に着けていた66人(52%)を対象に解析を行った。その結果、試験開始時に比べてウイルスの潜伏期、発症前の期間、発症期、回復期のいずれにおいても、5つの生理学的パラメーターの全てが有意に変化する」ことが明らかになったという。もし、これが有効ならば、症状を感じてから、PCR検査などをする以前に自主隔離などの対応をとれる可能性がある。さらに、新型コロナウイルス感染症だけでなく、日々の健康状態の監視にも使える道もあるのではないか。

ニュースソース

4. 建築家の隈研吾氏が顧問に――サイバーエージェントのメタバースアーキテクチャラボ

 メタバースへの取り組みは各社ともに積極的である。

 サイバーエージェントはメタバース空間での建築物や空間デザインの研究・企画・制作を行う専門組織「Metaverse Architecture Lab(メタバースアーキテクチャラボ)」を設立したことを発表した(ITmedia)。その顧問には、新国立競技場の設計などでも知られる建築家の隈研吾氏が就任した。さらに、空間デザイナーやCGアーティストなど、クリエイター・デザイナー職の採用も強化するとしている。

 また、総務省も「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を8月に開始することを発表した(ITmedia)。「メタバースに関する通信行政の課題を整理するための有識者会議」で、第1回会合は8月1日に開催するとしている。

 ARについても、NTTドコモがスマートフォンを使って、デジタルと現実世界が融合した新しい世界を体験できる新感覚街遊びARサービス「XR City」を提供開始した(CNET Japan)。これは「スマートフォンを提供エリアでかざすことで、その場所に合ったARコンテンツを表示するサービス」という。

 米Magic Leapは新たなARヘッドセット「Magic Leap 2」を9月30日に発売する(CNET Japan)。価格は3299ドル(約45万円)からで、「医療、防衛および公共部門、製造および産業環境」のほか、「ロケーションベースのアートとエンターテインメントの分野」を対象とするビジネス向けの製品である。日本でも本年中には発売が予定されている。

ニュースソース

  • 総務省が“メタバース研究会”開催へ 課題の整理と影響を調査[ITmedia
  • ドコモのARサービス「XR City」が始動–デジタルと現実が融合、7月14日から7エリアで[CNET Japan
  • ARヘッドセット「Magic Leap 2」、9月30日発売へ–日本では年内に[CNET Japan
  • 隈研吾氏が顧問 サイバーエージェント、“メタバース建築”研究するラボ設立[ITmedia

5. 進展する衛星インターネット基盤

 これまでも地球上空を飛行する衛星を使う通信インフラの構築状況に関するニュースはたびたび紹介してきているが、さらに進展も見られる。

 まず、クアルコム、エリクソン、タレスの3社は衛星を活用した5Gネットワークの計画を発表した(ケータイWatch)。これが実現すると、基地局の設置が困難な地理的条件の場所でも無線通信が可能になる。また、米SpaceXは「Starlink Maritime」を発表した。これは海上から利用できる無線通信インフラである(CNET Japan)。

 日本でも、KDDIがSpaceXと業務提携をし、衛星ブロードバンドインターネット「Starlink(スターリンク)」をauのサービス通信網の一部として活用していくと発表した(CNET Japan)。楽天モバイルも米AST SpaceMobile(AST)と共同でインフラの開発を進めている(ケータイWatch)。

 こうして宇宙での通信インフラが具体化するなか、KPMGコンサルティングは宇宙システムにおけるサイバー脅威についての指摘をしている(ZDnet Japan)。

ニュースソース

  • クアルコムなど3社が衛星活用の5G網、通信障害や災害時のバックアップにも[ケータイWatch
  • SpaceX、海上インターネットサービス「Starlink Maritime」を発表–月額68万円[CNET Japan
  • KDDIが語る宇宙ビジネスの現在地–Starlinkの活用は年内をめどに[CNET Japan
  • 楽天モバイルの海外展開・衛星からの地上エリア化は?――技術戦略本部長がプレゼン[ケータイWatch
  • ウクライナ侵攻で露呈–衛星など狙うサイバー攻撃が招く大混乱の可能性[ZDnet Japan

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