バルマンは メタバース に秋のファッションショーをどう組みこむのか?:ブランド戦略の大きな節目

DIGIDAY

フランスのラグジュアリーファッションブランド、バルマン(Balmain)は今年、Web3を通じて目の肥えた顧客に体験をもたらそうと力を入れている。それには9月に行われる2022年バルマンフェスティバルが含まれる予定であり、プレミアムマーケットプレイスおよびスタジオのミントNFT(MintNFT)とのパートナーシップの成果など、ファッションショーのデジタル改革となるだろう。これは5月に発表されたバルマンの非代替スレッドプロジェクト(Non-Fungible Thread)のジャーニーを継続するものだ。

メタバースにおける非代替スレッド

バルマンの2021年のNFT戦略は、顧客に同ブランドのNFTを試してもらうことに重点を置いていたが、現在はさらに長期的な視野に注力する方向へと移行し、顧客がブランドとともにメタバースの旅に参加できるよう、専用の非代替スレッドをローンチしている。この非代替スレッドは、バルマンのメタバース・ロードマップへのアクセスポイントのような働きをするもので、顧客のバルマン購入履歴を追跡し、時間の経過とともに体験や限定特典をアンロックする。

バルマンとのパートナーシップについて、ミントNFTの創業者でCEOのジェイムズ・サン氏は、すべての人がラグジュアリーブランドとともに経験することは非代替で独特なものであると述べ、だがその経験は物理的な空間では追跡が困難だと説明した。

「誰かがドレスを購入すれば、バルマンの店舗は誰がそれを購入したかを知っている。だが(顧客)体験は、その人が購入したときと、それを着用したときの2点に委ねられ、ほとんどそれで終わってしまうことが多い。もし、ある人がそのブランドで体験するあらゆるエッセンスを、カスタマージャーニーを横断する非代替スレッドに取り込むことができるならば、その体験は変わるはずだ」。

デジタルとフィジカルを織りなすこの体験は、バルマンの物理的な製品の発売と、そのデジタルツインとなって所有権を証明し、最終的にはコミュニティの特典を解除するNFTとを組み合わせることによって示されることとなるだろう。最近では6月17日に、バルマンはアーティストのジェフ・コール氏と共同でスニーカーのユニコーン(Unicorn)をリリースした。

NFTが主流になる前からメタバースに関与

バルマンは、メタバースのゲームにもっとも長く携わっている。実際、それはNFTのコンセプトが主流になるずっと以前からだ。バルマンのCMOツサンピ・ディズ氏は、「我々にとってメタバースは、近年ローンチしたさまざまなプロジェクトで起こっていることの論理的進化にすぎない」と述べている。

2018年、バルマンはラグジュアリーブランドとして初めて、デジタルアクセサリーをフィーチャーしたSnapchatのデジタルフィルターを発表した。また同じ年にオキュラス(Oculus)とのコラボレーションで、コンセプトストアのVR体験を制作している。それ以降は、2020年にシンガポール版ヴォーグ(Vogue Singapore)で紹介されたデジタルフレームドレスのように、主要なメタバースのローンチに参加している。「これらは、現在では人々がブランドのWeb3メタバース戦略の一環だと考えているアクティベーションだ」とディズ氏は述べている。

現在、バルマンはクリエイティブ・ディレクターのオリヴィエ・ルスタン氏の指揮のもと、フィジカルとデジタルの体験の両方でメタバースの長期的な可能性を見据えている。ルスタン氏は、2011年に同ブランドに入社して以来、年間売上を7倍に伸ばした。今後バルマンは、この夏にジェンダーレスなファインジュエリーラインを発表する予定で、そこにNFTの要素を取り入れる可能性もある。

「もちろん、ジュエリーラインとともにNFTをローンチするのは明らかによい機会だろう」とディズ氏。「重要なのは、適切な機会を見つけ、それにまつわる適切なストーリーテリングを行うことによって、そのプロジェクトをより魅力的なものにすることだ」。

ブランド戦略にWeb3をどう組み込むかが大きな目標

バルマンが一般と交流する主な方法のひとつが、シーズンごとのファッションショーだ。これはいまではリブランドされてバルマン・フェスティバルと呼ばれており、チケット制のエントリーと一般向けの2度目のエントリーで、最大6000人の招待客を迎えている。3回目となる今回は9月28日にパリで開催される予定だ。「このフェスティバルのアクティベーションは、バルマンのWeb3に対する考え方や、その戦略にWeb3を取り入れるという点で方向性を示すことができるという意味で、大きな節目となる」とディズ氏は言う。「次のエピソードの始まりになる」。

ミントNFTとのパートナーシップとともに、既存の非代替スレッドホルダーとブランドのソーシャル上のファンは、このイベントと将来のフェスティバルへの限定アクセスを受け取ることができる。「我々にとってのバルマン・フェスティバルのコンセプトは、ファッションショーをファッションショーではなくするにはどうしたらよいか、そしてその代わりに、多くのデジタルオーディエンスにとってより関連性の高い、よりインタラクティブで、よりインパクトのあるものにするにはどうしたらよいかというものだ」とディズ氏は述べた。

現在バルマンは、パリのファッション・ウィーク中に開催されるイベントへのアクセスをフィジカルおよびデジタルなオーディエンスに提供するためにミントNFTと協力している。また、オーディエンスをショーに没頭させるひとつの方法として、ARも検討中だ。「将来的には、我々のNFTを持つ人だけが見られるような動画コンテンツをショーに組み込めるようにしたい」とディズ氏は語る。「我々にとって、メタバースとWeb3に関しては完全に分離した戦略を作ることが重要なのではない。メインの目標であり、課題でもあるのは、Web3をブランド戦略にどう組み込むことができるかだ」。

[原文:How Balmain will bring its fall fashion show to the metaverse]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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