ZVC Japanは、Zoom Phoneの最新アップデートについて説明。新たに国内の加入固定電話と同じ形式の電話番号(0ABJ 番号)に対応したことを発表した。
Zoom Phoneは、2021年6月から、日本でも販売を開始しているクラウド電話システムで、すでに6万以上のライセンスを販売。米国では、2019年1月からサービスを提供して以来、全世界で300万以上の利用がある。
0ABJ番号に対応することで、企業の電話のクラウド化に本格進出
ZVC JAPANの下垣典弘会長は、「Zoomは、日本が世界に遅れているクラウド電話システムに本格参入する」と宣言。「本格参入の意味は、0ABJ番号に対応することで対象となる市場規模が従来の4倍に拡大し、Zoomがそこに参入できる点にある」と述べた。
これまでZoom Phoneのサービスは、IP電話サービス向けの050番号に限定した提供となっており、0ABJ番号での利用は、中継装置であるセッション・ボーダー・コントローラーを設置しなくてはならず、約1割の導入に留まっていたという。今回のアップデートにより、法的な本人確認の手続きを行えば、同装置を設置することなく、0ABJ番号も利用できるようになる。
「IP電話の市場規模は899万件。それに対して、0ABJ番号の市場は3568万件になる。今回のクラウド電話システムへの本格参入によって、日本の企業における電話のクラウド化が提案でき、PBX(Private Branch Exchange:構内交換機)による電話のオンプレミス環境を、新たなプラットフォームへと移行できる」などとした。
「電話対応出社」のような課題もクラウド化により解決可能
ZVC JAPANの佐賀文宣社長も、「在宅勤務によって代表番号にかかってきた電話をチームで取れないという課題や、電話対応のために出社するといったことが起こっている」と、現状の課題を指摘。社員一人ひとりがスマホを所有すると、誰から誰にどんな電話が行われているのかを把握できなかったり、仕事とプライベートの時間が切り替えられないという課題も生まれているという。
こうした課題も、Zoom Phoneによって解決できるとし、佐賀社長は「代表番号にかかってきた電話にも、スマホやPCから出ることができ、会社の電話番号から発信ができる。Zoom Meetingsと同じサーバーで運用しており、従来のクラウド電話システムと比較しても、圧倒的な高音質で通話ができる。また、会社も電話のトランザクションを可視化できる」と語った。
さらに、「PBXによるビジネスフォン市場は、年間1600~1800億円といわれているが、85%の企業がオンプレミスで運用しており、クラウド化が遅れている。電話のクラウド化を推進するとともに、電話とウェブ会議、テレビ会議がひとつにできるという選択肢も提案できる。電話への自動応答にビデオを使ってメッセージを伝えるなど、肌感覚を持った新たなコミュニケーションが取れるようになる」などとした。
安定性やコスト面の優秀さもアピール。8月31日までトライアルキャンペーン
Zoom Phoneの特徴について、ZVC JAPAN Zoom Phone 日本市場展開担当の吉田馨一氏は「Zoom Meetingsによる一貫性のある使用感を実現し、Zoom Phoneの有効化によって、すぐに利用できるようになる。通話録音やグループ着信、営業時間設定など、400以上の機能を搭載しており、今後も新機能を追加していく」と述べた。
メンテナンス性の高さも特徴だとし、「Zoomの管理画面を使用して、専門知識がなくてもメンテナンスができるようになっている。初心者でも約1時間のレクチャーで使用できるようになる」とした。
サービスの安定性にも言及。「ネットワーク帯域に応じたサービス制御や、業界最高水準のサービスレベルアグリーメントを実現している。99.999%の可用性を目指した設計をしており、これは年間5分以内のダウンタイムとなる。一般的なクラウドPBXサービスは長時間電話が使えなくなることもあるが、Zoom Phoneでは、データセンター内の冗長化に加えて、東京と大阪のデータセンター間での冗長性を持ち、さらに海外のデータセンターを活用したリカバリも可能になる。2021年の稼働率は100%だった」とした。
加えて、コスト面にも触れ、「既存の通話システムに比べて、TCO(Total Cost of Ownership:導入から管理、廃棄までのトータルでの総所有コスト)は3~4割の削減ができる。初期コストも大幅な削減が可能になる」という。通話料従量制プランは、1ユーザーあたり月額2020円。国内通話無制限プランは月額2688円。契約ユーザー数が増えれば、1ユーザーあたりの価格は下がることになる。
ZVC JAPAN Zoom Phone担当SEの深海健一氏は、「経営者から見ると、電話はブラックボックスであり、設備やコストといった印象が強い。Zoom Phoneは、企業にとって、優れたコミュニケーションインフラになり、武器にもなる」と位置づけた。
同社では、Zoom Phoneの特別トライアルキャンペーンを開始。従業員10人以上の新規法人顧客を対象に行うもので、2022年8月31日までに申し込むと、最大5つのZoom Phone番号を、3カ月間無料で試すことができる。
日本におけるZoom Phoneの導入事例についても説明された。千代田化工建設では、導入していたIP-PBXの更新を控えて、次世代音声通話環境の導入を検討。BCPの観点や海外拠点との連携、通信品質の安定性、日常的にZoom Meetingsを利用しているといった観点からZoom Phoneの導入を決定し、4カ月間で5000人規模が利用できる環境を構築したという。
また、国内におけるZoom Phoneのパートナーシップも強化していることを示し、Zoom Phoneの導入支援やシステムインテグレーション、デバイスやアプリケーションの提供など、12社のパートナーとともに提案活動を進めていくとしている。
「交換機」がバランスシートから消えることが日本企業の成長機会になる
一方、ZVC JAPANの佐賀社長は、日本における状況について言及した。
これによると、Zoomによる1日のミーディング参加者数は、日本国内で延べ300万人となり、「ビジネスアプリケーションとしては、圧倒的ともいえる利用者数に達している」としたほか、国内のパートナー数は600社以上、ZVC JAPANの社員数は150人以上。顧客満足度調査では2年連続で1位となり、ウェブ会議システムのシェアは60.2%に達していることを示した。
「日本市場にあわせた戦略を実行している。米国では90%が直販だが、日本では70%がシステムインテグレータなどの販売パートナーを通じた提案になっている。利用するライセンス数が最初は少なくても、カスタマーサクセス担当者が顧客の役に立てるところまで支援することで、活用を広げていく提案が、日本における販売戦略の中心になっている。また、オフィスワーカーのためだったビデオコミュニケーションツールを、現場で働く人の利用や、企業と消費者をつなぐための利用などに広げ、利用される裾野の拡大にも注力している」とした。
そのほか、日本の顧客を対象に、東京および大阪にデータセンターを設置して、安心安全なサービスを提供していること、Zoom Meetingsの機能強化に取り組んでいることなどを紹介。「2022年春に実装されたZoom Meetingsの字幕、翻訳機能は、英語で話したことをテキスト化し、これを日本語に翻訳して表示するといったことができる。中国語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語、スペイン語のほか、昨今の社会情勢を考慮し、ロシア語とウクライナ語にも対応している」という。
また、日本における最近の企業ニーズとしては、在宅勤務を前提としたかたちでオフィスをデザインしなおす企業が増加していること、社員のエンゲージメント向上を経営課題のトップにあげる経営者が増加していること、複数のSaaSを利用して、事業を止めずにビジネスの継続性を高めるBCP(事業継続計画)に対する関心が高いことなどをあげ、「在宅勤務者とオフィスに出社している社員が共存して仕事をする環境づくりを重要視している企業が多い。Zoom Roomsではスマートギャラリービューによって、AIが顔を認識して、発言者などを拡大表示することができ、スムーズに共存した会議ができるようになる」とした。
加えて、Zoom Phoneについては、「Zoom Phoneの日本における実績は、全世界のなかで、2%程度の構成比である。Zoom全体で見ると日本の構成比は5%程度であることに比べても、日本のクラウド電話システムはこれからであることが分かる。今後3年間で、現在の10倍となる60万ライセンス、60億円の売上げ規模を目指す」としたほか、「日本でのZoom全体のビジネスは、グローバルよりも高い成長を遂げているが、そこにZoom Phoneが加わり、さらに成長を加速できる」と自信をみせた。
また、ZVC JAPANの下垣会長は、「日本の企業は、あくなき品質への取り組み、高い現場力、開発や運用を業界として支える仕組みが構築されていることが優れた点であるが、この結果、システムを手作りしたり、パッケージ適用が遅れたことで、スピードが遅れたり、クラウド化が遅れたりした。これが海外企業との差になり、競争力にもギャップが生まれた」とする。
エンタープライズ領域におけるPBXのクラウド化比率は、北米が41%であるのに対して、日本は15%と半分以下に留まり、80年代から90年代のパッケージ適用や、2000年以降のプラットフォームのクラウド化と似た状態であるという。「だが、交換機のような価値を生み出さない資産がバランスシートから消え、資産を費用化できることが日本の企業に認知されれば、トレンドが大きく動き、成長機会が生まれる」と、下垣会長は述べた。
そして、Zoom Phoneの位置づけと、日本企業にもたらすインパクトについて総括した。「ZVC JAPANのビジネスとして見れば、地域においてはアジアパシフィック全体が成長市場であり、製品という観点では日本市場にはZoom Phoneが新たに加わる。企業セグメントでは大手企業への利用促進が期待でき、成長機会も大きい。Zoomにとっては、まだ伸びるべき領域がある」と語った。