再販ECのスレッドアップ、シーインのボイコットを顧客に呼びかける:それでもファストファッションが支持される訳

DIGIDAY

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ファッション再販サイトのスレッドアップ(ThredUp)は、ファストファッション大手シーイン(Shein)の最新のポップアップショップをボイコットするよう顧客に呼びかけ、メールとソーシャルキャンペーンで、売上を中古品市場へと向けようとしている。

数十億ドル規模のオンライン小売業者であるシーインは、6月24日から26日まで、サンフランシスコの人気観光地でもあるエンバカデロプラザで対面式のポップアップストアを開催している。これに対し、サンフランシスコ・ベイエリア地域のオークランドに拠点を置くスレッドアップは、同地域の会員にプッシュ通知を送り、ポップアップストアで買い物をしないことを誓約するよう求め、メールを通じて自社サービスの割引や無料配送を提供している。

「Skip the #sheinsanfran pop-up!(サンフランシスコでのシーインのポップアップに参加しないで)」というメッセージには、スレッドアップ内で使用できる独自の割引コードが記載されている。

衣料品の廃棄問題に注目を集める

このキャンペーンは、ある小売企業がほかの企業の商習慣を名指しで非難するというユニークな例であり、アパレル企業が持続可能性という問題を利用して顧客を引きつける最新の事例でもある。しかし、消費者がファストファッションを好むことは以前から証明されており、顧客の経済的な懸念から、持続可能性は、早さ・安さよりも厳しい販売方法となっている。

スレッドアップのコンシューマーコミュニケーションディレクターであるサマンサ・ブルメンサル氏は、このキャンペーンの目的は、シーインを罵倒することではないという。その代わり、衣料品の廃棄問題への注目を集め、シーインと同じくらい手頃な価格の「責任ある代替品」を促進することをねらっているというのだ。

「我々は、ここで誰かを辱めたいわけではない。ファストファッションが、超低価格で、簡単で、便利という点において、とても魅力的であることは理解している。 しかし、再販サイトでのショッピングも同様に便利であり、また、お得な情報や低価格アイテムを見つけることもできる」とブルメンサル氏は語った。

このエッジの効いた実験的キャンペーンは、スタートからわずか数時間ですでに買い物客の間で話題になった。埋立地の写真を添えたインスタグラムの投稿では、スレッドアップのフォロワーたちが、このブランドの強い姿勢を賞賛している。「私には大胆に思える」「あの嫌なビジネスにはうんざりだ」といったコメントが寄せられた。

スレッドアップが不利であるこれだけの理由

シーインのメディア担当者は米モダンリテールに対し、同社は他社についてコメントしないと述べ、ここ数カ月で開始した持続可能性に焦点を当てた複数の取り組みについて指摘した。そのなかには、使用済みペットボトルから作られたリサイクルポリエステルなどの素材を使用した「目的にかなった」ブランドであることを意味する新ライン「evoluSHEIN」も含まれている。同社のニュースリリースによると、収益の一部は女性のエンパワメントプロジェクトに寄付されている。

同社の2021年版「サステナビリティとソーシャル・インパクト」報告書によると、シーインは、オンラインのみの小売業者であることで過剰生産を回避しているという。また、衣料品のリサイクルプログラムを開発し、自社事業における温室効果ガスの排出を削減しようとしていることなども記載されている。

たとえ実際の購買習慣がそうでないとしても、消費者心理は近年、ファストファッションよりもサステナビリティに傾いている。シュティフェル(Stifel)の最近の調査によると、81%の消費者が、企業が持続可能な行動をとることが重要であると考えており、64%が先進的な取り組みを行っているブランドにより多くのお金を払うと回答している。

一方、リサーチ・アンド・マーケッツ(Research and Markets)による「2022年ファストファッション世界市場レポート(the 2022 Fast Fashion Global Market Report)」によると、ファストファッション分野は2022年に993億ドル(約13兆4300億円)に成長し、前年からの複合年間成長率は8.8%上昇するとされている。

ジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)のシニアリサーチアナリストであるジェシカ・ラミレス氏は、買い物客は、サステナビリティや流行ファッションが環境にどう影響するかについて知識を深めているにもかかわらず、インフレや不況の懸念があるいま、消費がサステナビリティに劣る安価なアイテムに回帰する可能性があるという。

「残念ながら、製品が値上がりする傾向があるため、持続可能性は後回しにされる」と同氏は述べた。

オンライン感情追跡機関のブランドウォッチ(Brandwatch)でコミュニケーション・広報部長を務めるケラン・テリー氏は、オンラインのメンションではシーインはスレッドアップよりもはるかに人気があることを発見した。シーインに関する6月のメンションは、14万2000件を超えたのに対し、スレッドアップは1800件前後で推移しており、スレッドアップがオンラインで不買運動を展開する上で劣勢であることがわかる。

一般的に、消費者はハイエンドな小売業者よりもファストファッション・ブランドに対して否定的な感情を抱いていると、テリー氏は述べている。シーインに対する6月のネガティブな消費者マインドは72.5%だったが、その多くはファストファッションの品質に関するジョークや皮肉で、必ずしもブランド自体に向けられたものではなかった。

それでも、多くの人がファストファッションに手を出すのは、「銀行口座が空っぽではないため、ドレスや服装が長持ちしなくても構わないのだ」とテリー氏は話す。

スレッドアップの在庫は市場を反映している

一方、スレッドアップの2020年再販レポートに引用されているグリーンストーリー(Green Story Inc.)の環境調査によると、世界で毎年生産される320億着の衣類のうち、64%もが埋立地行きとなっているというのだ。

スレッドアップのマーケットプレイスにはシーインの衣服がかなりあり、最近の検索では2万4000着近くがヒットした。多くの顧客は、一度着たものであろうと、わざわざ返品する必要のないタグ付きの新品であろうと、ファストファッションを購入し、スレッドアップに送っているのだ。スレッドアップのブルメンサル氏によると、シーインを含むこれらのアイテムは、すべてのブランドに適用される「古着の品質に関する条件」を満たしている限り、同社が引き取るという。

しかし、スレッドアップが抱える在庫は市場を反映したものであり、ファストファッションがリセールサイトで買い物をする人たちをも惹きつけているのだ。

スレッドアップがシーインについて明確に言及したのは今回が初めてだが、同社がサステナビリティを推進するのは今回が初めてではない。これまでのキャンペーンでは、埋立地に捨てられる衣服の量に着目してきた。最近のアースデイでは、古着をインタラクティブでインスタ映えする「Tunnel of Pre-Loved(昔懐かしいトンネル)」として、衣服が地球に与える物理的負担に対する意識を高めるインスタレーションを行った。

「スレッドアップの使命は、ファストファッションと戦うことだ」とブルメンサル氏は言う。「すでに世界にはたくさんの服が存在している。常に新しいものをたくさん作る理由はないのだ」。

[原文:DTC Briefing: ‘Some canaries in the coal mine’: Startups brace for VC slowdown]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via ThredUp

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