農地にこつぜんと登場する名店「東千歳バーベキュー」で人生最高の鶏を焼いた話

ロケットニュース24

「繁盛店に立地は関係ない」という言葉がある。美味しくて価格に見合っていれば人は集まる、立地の悪さを言い訳にしてはいけないという教訓だろう。

とりわけ北海道では、広大な農地でたった一軒営業する「農家レストラン」や、平日のひっそりした温泉街なのに大行列のラーメン店などに出会った。

しかし、ここまでその言葉を体現している店があるだろうか! 千歳の人気店「東千歳バーベキュー」である。


・「東千歳バーベキュー」(千歳市)

北海道千歳市の国道234号沿い、田園風景が広がる中に店舗がある。周囲は観光地でもなければ商業地でもない。雄大な大地のところどころに住宅や納屋が点在する北海道らしい風景だ。

インターチェンジが近いので車なら便利だが、公共交通機関での訪問はかなり難しいと想像する。

現れるのは体育館のような「かまぼこ型」の建物。初見だと飲食店には見えないが、休日や昼時には行列ができるという。

中に入ると、頬を焼くような炭火の熱気に圧倒される。店の奥まで続く二列のかまど! ドームのように天井が高く、およそレストランらしからぬ内装だ。長い歴史を感じさせる昭和レトロな雰囲気がただよう。

テーブルはなく、無骨なかまどの前の長椅子に腰かける。メニューはシンプルそのもの、「バーベキュー」(税込1000円)のみ!

食べたい量を「○人前」と注文する。あとはご飯の有無、野菜の有無を答えるだけだ。飲み物はセルフサービスだそう。自分で冷蔵ケースから取り出し、会計時に申告する。

ところでバーベキューといえば、肉や野菜や海鮮などいろいろな具材を彩りよく焼いて食べる料理を想像する。甘酸っぱいアメリカンなバーベキューソースも定番だ。


が、ここでは違う。


運ばれてきたのは大きなかたまりの鶏肉! もも肉&むね肉セットで一人前。結構なボリュームだ。

それを炭火で豪快に焼き上げる。調味料を振りかけるところまでは店員さんがやってくれ、残りはセルフサービス。焦がさないよう、こまめに返すのがよいそう。

もくもくと煙が出て、ときに灰も飛ぶのでドレスアップしての入店はオススメしない。けれど炭火で顔を熱くしながら、簡素なベンチで肉が焼けるのを待つ時間は、なぜか心の底から解放感があり気持ちいい!

おそらく混雑時には、知らない人と肩を並べて肉を焼くのだろう。かつて我々の先祖が大勢で焚き火を囲んでごちそうを分け合ったような……「食べる」という行為の根源を感じる。まだか、まだかと待つ時間も楽しい。


・焼き上がり

15分ほどかかっただろうか。先にもも肉が焼けた!


どうやって食べるのか一瞬迷ったが、これはもう、ワイルドにかぶりつくべきだと思う。肉汁が膝にしたたるのを覚悟で、手づかみで口に運ぶ。

美味い!


というか美味すぎる!!


大げさでなく過去に食べた鶏肉史上、一番美味い! これまで食べてきた焼き鳥はなんだったのかという衝撃。もも特有のジューシーな肉汁が口の中にあふれる。プリップリの食感だ。

カリカリに焼けた皮には、パンチの効いたスパイスが染み込んでいる。火傷しそうに熱いけれど、はふはふ言いながら食べるのが最高だ。こうやって記事を書きながら味を思い出していると、ヨダレがわいてくるほど。

少し時間をおいて、むね肉も焼けた!


こちらは淡泊でさっぱりした味わい。ちょっぴり焦がしてしまったが、それすらも香ばしくアクセントになっている。もも肉よりもボリュームがあるが、あっさりしているから脂も気にならない。慣れていないせいで、骨から身をうまく外せないのがもどかしい!

絶妙な塩加減に、ご飯が止まらない。食べきれない可能性があったため「ご飯は余計だったかな?」と思ったが、オーダーして本当によかった。相乗効果で何倍にも互いの美味しさを高め合う。ペロリと食べきってしまった。


実は常連さんらしき人達がこぞってオーダーしていた「野菜炒め」も負けず劣らず美味しいらしい。クチコミでは「肉よりも好き」という声まで! 筆者はひとりだったので腹具合を考えるとオーダーできなかった。それだけが無念だ……。

これだけ食べても、会計は1200円! 炭火の世話などの手間賃も入っていることを考えると、信じられない価格だ。ちゃんと儲け出てる!?


・唯一無二の個性

今回筆者は北海道周遊の途中に立ち寄っており、しかもたまたま車だったから行けたので、次にいつ再訪できるかわからない。もしかしたら一生行けないかもしれない。

けれど「わざわざ時間を作ってでも訪ねる価値のある」唯一無二のお店だった。

良心的すぎる価格設定であること。昭和のまま時間が止まったかのような素朴な空間が、どこか懐かしく落ち着くこと。火を使って自分で肉を焼いて食べるという行為に根源的な楽しさがあること。なにより美味しいこと。

人気店になるのが納得の理由ばかりだ。かつ話題性を狙っているのではなく、よいと思うことを続けてきただけ、というシンプルな実直さが店舗全体から感じられる。

よい店に立地は関係ない。それどころか、おしゃれなインテリアも、SNSでのセルフプロデュースも、プレミア感を高める演出も関係ない。それを実感するすごいお店だった。いま筆者は千歳市民が心の底からうらやましい!


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 東千歳バーベキュー
住所 北海道千歳市東丘920-3
時間 10:30~17:00(売り切れ次第終了/不定期に休憩時間あり)
休日 水曜日
備考 農繁期や家庭の事情などで臨時休業あり

※記事掲載については店舗の承諾を得ていますが、内容に誤りがあった場合はすべて執筆者によるものです。

執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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