ブランドがエンタメとの 共同マーケティング を進める理由:「広告を『コンテンツの邪魔者』ではなくしたい」

DIGIDAY

保険会社のリバティ・ミューチュアル(Liberty Mutual)は6月、おなじみのアニメキャラクター「ミニオンズ」を起用した新しい広告を展開する。これは、リバティ・ミューチュアルの商品と、ミニオンズの新作映画『ミニオンズ フィーバー』を宣伝する共同マーケティング活動の一環だ。

広告でエンターテインメントプロパティと提携するのは、リバティ・ミューチュアルだけではない。ブッキング・ドットコム(Booking.com)や、ウイスキーブランドのブッシュミルズ(Bushmills)などのブランドも最近、6月の販促キャンペーンで同様の手法を用いた。マーケターは、認知度の高いキャラクターを擁するエンターテインメントプロパティと手を組み、共同マーケティングに登場するキャラクターとのつながりを人々に感じさせることで、雑然として騒がしく、細分化が進む一方の広告環境において、自社ブランドを目立たせることができると考えているのだ。

「最近の消費者は、ひとつまたは複数のフランチャイズから、キャストやキャラクターが寄り集まっている映画を楽しんでいる」と、リバティ・ミューチュアルで米国グローバルリテール市場を担当する最高マーケティング責任者のジェナ・レベル氏は話す。「我々が思うに、消費者は、広告でも同じものを目にすること、そして広告が、ストリーミングで見たいコンテンツを邪魔するものから、もう少し楽しいものになることを望んでいる」。

過飽和状態にある広告市場において、ブランドは、これまでのやり方とは異なる革新的な方法で消費者にリーチする必要があると、レベル氏は述べている。「広告の世界が混みあってくるのに伴い、動画の消費は非常に細分化されてきている」。

ミニオンのキャラクターを使ったリバティ・ミューチュアルのスポット広告は、イルミネーション(Illumination)による最新作『ミニオンズ フィーバー』の7月1日公開を挟んだ8週間の期間にわたり、テレビ、オンライン動画、ソーシャルメディアなど、様々なプラットフォームで展開される予定だ。リバティ・ミューチュアルが数字を明かさなかったため、このマーケティング活動にどれだけの費用をかけたか、あるいは同社と映画スタジオが広告費をどれだけ節約できたかは不明だ。リバティ・ミューチュアルは、2021年公開の映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも、ソニーと共同マーケティングを展開している。

ホテル宿泊や限定版ウイスキーなども

共同マーケティングは、必ずしも伝統的なスポット広告ばかりではない。ブッキング・ドットコムも、6月にワーナー・ブラザース(Warner Bros)の『エルヴィス』と共同マーケティングを展開したが、こちらは同伝記映画の6月24日の北米公開に合わせて、メンフィスにあるホテル「ザ・ゲストハウス・アット・グレースランド」に宿泊するチャンスを「究極のエルヴィス体験」としてファンに提供した。そのほか、ブッシュミルズとエンターテインメントAI企業のBENグループ(BEN Group)は、ドラマシリーズ『ピーキー・ブラインダーズ』と提携し、Netflixにおける同番組の最終シーズンの初放送を記念する限定版ウイスキーを発売した。BENグループによるインフルエンサーマーケティングキャンペーンも展開され、発売をさらに後押している。

マーケターとエージェンシー幹部たちは、ブランドが目立って消費者の注目を集めるという、近年困難の度合いを増す取り組みの手立てを模索するなかで、ブランドとエンターテインメントプロパティが手を組む共同マーケティングは今後も成長し、進化を続けていくとみている。

消費者のトップ・オブ・マインドであり続ける

マーケターたちは提携のねらいについて、単に広告費を節約することではなく(彼らは提携の金額や、提携がもたらす節約効果について、具体的な数字を明らかにしなかった)、消費者のトップ・オブ・マインドであり続けることだと話す。BENグループでクライアントサービス担当シニアアカウントディレクターを務めるケイティ・ウルフ氏は、ブランドと組んでエンターテインメントプロパティを取り込むことについて、「これは本当にチャンスであり、我々が仕事をする多くのブランドにとって、二重の戦略になっていると思う」と述べている。「彼らは、従来の広告とそこでの広告枠購入を継続するつもりだが、同時にコンテンツのなかに入りたいとも考えている」。

レベル氏は、ブランドが名前を売ることに重点を置くなら、このようなパートナーシップは、収益を超えた大きな機会をもたらすとみている。「我々は、どうすればお金を節約できるかを考えていたわけではない。どうすれば市場で最もインパクトのある広告にできるかを考えていた」。

共同マーケティングの効果を測定するために、マーケターたちは、広告がブランドメッセージをどれだけうまく伝えているかに加え、広告がどれだけ記憶に残るかを追跡しているという。メタフォース(Metaforce)の共同創設者アレン・アダムソン氏は、このような取り組みが、長期的にブランドが記憶されるきっかけになると考えている。「(ブランドが)すべての人の注目を集めることは難しく、そこはやはり本物のエンターテインメントに近づいていかなければならない」。

BENグループのウルフ氏も同意見だ。「こうした取り組みはオーディエンスを、彼らがすでに愛している物語やキャラクターと強く結びつけている。そしてそれこそが、社会的、文化的な話題を生み出している。だからこそ、エンターテインメントやハリウッドと手を組むことには、とてつもなく大きなパワーがあると思っている」。

[原文:‘Making advertising a little bit more entertaining’: Why brands like Liberty Mutual, Bushmills and Booking.com are partnering with entertainment on co-marketing efforts

Julian Cannon(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)

Source

タイトルとURLをコピーしました