通学路で金閣寺に行く

デイリーポータルZ

中学の校区内に金閣寺があった。

中学の頃は「金閣寺=お寺その1」という認識だったが、今となっては「金閣寺=すごいお寺」である。

懐かしさと新しさを求め、通学路で金閣寺を目指した。

京都出身のライターです。趣味は食レポを読んだり書くことです。

前の記事:アメリカの牛角で「フュージョン」をあばいていく

> 個人サイト がぅちゃんのブログ Sushi Sandwich

金閣寺は有名

幼時から父は、私によく、金閣のことを語っ……たりはしなかったけれども、金閣寺は日本を代表する文学作品になるくらいには有名だ。

令和の本屋でも堂々と売られる、三島由紀夫の「金閣寺」。主人公が金閣寺に放火する話で、1950年の「金閣寺放火事件」を参考にしたストーリーとなっている。

金閣寺は、京都に17件ある世界遺産の中でも別格の存在だと思う。「金のお寺」で伝わるから、説明も記憶もしやすい。その存在感に金メダルを贈呈したいです。

金閣寺で買ったうちわ。金の部分の「金閣」が、実物より視認しやすくて嬉しい。金閣寺の名称は、厳密には「鹿苑寺/ろくおんじ」というそう。

金閣寺に向かう(観光ルート)

通学路で金閣寺に向かう前に、「金閣寺に向かう」が一般的にどういう状態なのかをデモンストレーションしたい。

観光地として向かうのが一般的だと思うので(というか今となっては私にとっても観光地だ)、オーソドックスなアクセス方法を選んだ結果、京都市バスで向かうことになった。

A→Dの道のり。A.下柏野児童公園(しもかしわのじどうこうえん)→B.バス停(乾隆校前/けんりゅうこうまえ)→C.バス停(金閣寺道)→D.黒門(くろもん)。

なお、下柏野児童公園は、通学路のルートと共通のスタート地点である。

スタート地点の下柏野児童公園。こうらくびよりな土曜日の昼。
3分くらいでバス停「乾隆校前」に到着。
金閣寺に向かう59番を待つ(206番でも行ける)。
京都市バスの最接近を示す「まもなくきます」が点灯。
乗りこんでいく。
意外と混んでいない。
4駅と8分で目的地へ。
降りるとそこは、韓国家庭料理店。これは予想外で、絶妙に旅行のスイッチが入った。
振り返って撮った、バス停「金閣寺道」の様子。ここで降りました。
近くには、日常生活で使ったことのない路線のバス停があった。「金閣寺テンプル」とある。
標識は「世界文化遺産・金閣寺」と言い切っている。

バスを降りてすぐはそうでもないが、金閣寺に近づくにつれて京都観光の気配が強まる。ゴールの黒門へ続く交差点「金閣寺前」あたりで、その気配がピークに達した。

交差点の「金閣寺前」。京都のお土産の定番「あぶらとり紙のよーじや」が見える。京都観光という概念世界へログインした気分である。
交差点から約100メートル先に、黒門がある。普通に歩けば1分くらいで着く。
道中の「金閣そふと」。
外国人観光客を対象にしていると思われる、アンティーク&キモノのお店。
「ウェルカム・トゥ・キョウト!」と書かれた、自動販売機。
ジャパンのキュレーションが適切な、お土産屋さん。
また金のソフトクリームが売られている。
ゴールの黒門。この先に2つある門をくぐって、金閣寺に入場となる。
無料で入れる1つめの門「総門」の前は、記念撮影スポットとなっている。

観光ルートで通過した金閣寺周辺は、地元の人を対象にしていない空気があった。近所なのに、近所にいる感じがしない。

家の近くでガッツリ旅行気分に浸れるというのは、ある意味すごいのかもしれない。そうさせる金閣寺は、やはりすごいのだろう。あと、金色の食べ物が当然のようにあってすごい。

いったん広告です

通学路で金閣寺に向かう

観光ルートで金閣寺に向かった時と同じ出発地点「下柏野児童公園/しもかしわのじどうこうえん」からスタートする。通学路を使って、通っていた衣笠(きぬがさ)中学校を経由し、金閣寺に向かう。

中学の頃の記憶を頼りに通学路の雰囲気を予想すると、普通で平和な景色が展開しているはずだ。懐かしさを確かめたいのと同時に、新しいものにも出会いたい。これみよがしな金閣寺らしさなどあっても面白いと思う。

ルートはA→G。A.下柏野児童公園→B.わら天神前→C.木辻馬代(きつじばだい)→D.衣笠中学校→E.金閣寺の裏→F.きぬかけの路→G.黒門という道のり。

A→B 下柏野児童公園〜わら天神前

平日の朝の、下柏野児童公園。天気は良い。
小学生、中学生、社会人etc。みんなの人生が交差している。

中学の頃は「私の通学路」ということに気を取られていたが、大人な見方をすると、いろんな人の道だとわかる。一方通行の狭い道で、多様な目的がひしめき合っている。

おそらく高校生。
おそらく大学生。
京都の景観と言いたくなる頻度で見かける「ヤサカタクシー」とすれ違う。
マクドナルドのバイクともすれ違う。当時はありえなかった現象だ。
狭くて交通量が多い道なので、電柱幕に相変わらず年季が入っている。

B→C わら天神前〜木辻馬代

マクドナルド・金閣寺店(通称:わら天のマクド)によって、金閣寺の存在感が強まる交差点が「わら天神前」。

このエリアにおける私の子供時代の思い出の8割はわら天のマクドが占める……なんて言いたくなってしまう場所だ。

わら天神前の様子。
わら天のマクドこと、マクドナルド・金閣寺店。あの頃より小さくなった。
わら天のマクド、思い出だけなら京料理の域である。

大人になってわかったことがある。わら天のマクドより衣笠中学校より、同じエリアにある「立命館大学/りつめいかんだいがく」のほうが、存在感が強いということだ。

立命館大学と衣笠中学校は通学路を共有しているが、わら天神前の交差点を渡ると、立命館大学のテリトリーに入る感覚がある。

衣笠中学校のほうに向かう京都市バスだが「立命館大学」とある。
道中のバス停。
えらいもんで、みんな立命館大学を目指している。立命館大学、バスターミナルなのでは?
立命館大学からやってきたと思われる、京都市公営交通の100周年を記念するレア車両。
まっすぐ行くと立命館大学。右に曲がると衣笠中学校(と金閣寺)。
曲がり角の看板では、金閣寺が立命館大学の敷地内みたいなことになっていた。

C→E 木辻馬代〜衣笠中学校

右に曲がって衣笠中学校へ。衣笠中学校の生徒が歩いている。
約100メートル先の左に、衣笠中学校がある。
衣笠中学校が見える。行ける所まで行きたい。
正門まで来たとき、なつかしさに寂しさが勝った。ここはもう、私の居場所ではないのだ。
もう中学生! ではねぇ。

衣笠中学校までの通学路、普通か普通じゃないかだと、普通だった。金閣寺を意識している様子がなく、何か金色だったりもしない。ただし立命館大学の存在感はすごかった。あと、今だからこそ寂しさを感じたという意味では、新しいのかもしれない。

いったん広告です

金閣小学校の通学路へ

衣笠中学校を過ぎると、金閣小学校のテリトリーに入っていく。私は金閣小学校の生徒ではなかったので、ここから先は他人の通学路となる。平たく言えば、新しい世界だ。

私が三島由紀夫の金閣寺の主人公なら「どんな認識や行為にも、出帆(しゅっぱん)の喜びはかえがたいだろう」とか語りかねない気分である。

E→D 衣笠中学校〜金閣寺の裏

左に衣笠中学校。右に金閣小学校。金閣寺の裏まで、まっすぐ230メートルほど。
火の用心、金閣……。大人になって余計な知識を蓄えた私は、放火を連想してしまった。
とはいえ金閣消防分団、放火は警戒していない。私の考えすぎだったようだ。
現実では、放火より交通を警戒すべき、といった様子。
金閣寺の裏に出る。
地図上では、この標識の約200メートル先に、金閣寺の金閣がある。
しっかし金閣寺、まったく見えない。

D→F 金閣寺の裏〜ゴールの黒門

住宅街を道なりに進む。
「きぬかけの路」という有名な道に出る。まっすぐ行けばゴールの黒門。
黒門の角へ。
ゴール。(観光ならばこの黒門はスタート地点である)
えらいもんで、黒門の警備は厳しめだ。
右から学生たち。
いや、修学旅行生のようだ。やはり金閣寺は観光地だ。

衣笠中学校の通学路では、特に金閣寺を感じなかった。ただし通学路を共有する金閣小学校の掲示物などから、言葉で「金閣」が迫ってくる感覚はあった。

金閣小学校の看板。衣笠中学校の文字も金色だが、こっちのほうが説得力がある気がする。

金閣寺をタダで見たい

ここからは余談となるが、金閣寺、なんだったら金閣小学校の通学路から見えるらしい。すごいな金閣小学校……。せっかくなので見てみたい。

この道から金閣寺が見える。

さっき右折した、金閣寺の裏。こんどは左へ。
右に金閣寺の壁。
この先に金閣が見えるはず。どこだ……。
ズームすると、ちらちら見えてはいる。でも葉っぱの黄色と同化していて見づらい。
もっとズームすると、かすかに金が見えた!
そんなことより、金の車が銀の車とすれ違ったりして、思うところあった。
車には気をつけたい道です。
金閣寺と記念撮影を試みたものの、余裕がなかった。

通学路そのものはふつうでした

私の中学時代の通学路は、すごいかすごくないかだと、すごくない。金閣寺に近いからといって、これみよがしに金閣寺を彷彿とさせるような物も無い。

衣笠中学校より、立命館大学と金閣小学校が目立っていてすごい……と感じられたのは発見だったと思う。

衣笠中学校の前の道。蜃気楼が見える。

衣笠中学校にたどり着いた時、懐かしさをこえて寂しくなったのは予想外だった。「通学路」というものの真価を味わえた気がする。これが大人の味だろうか。

エモくなってしまい、三島由紀夫の金閣寺の主人公きどりで「居場所じゃない場所にわざわざ行くという切ない行為によって懐かしい世界が変ぼうした。」とか言いたい気分である。

下校時、事件が発生していた。木の枝に靴が引っかかったらしい。というか制服も体操服もあの頃のままだ。大人の私は、腰かけてビール飲んで眺めてたってよかった。

タダで金閣寺が見られるおすすめの場所

金閣寺の総門付近や左大文字(ひだりだいもんじ)が有名ですが、私は大真面目にホームページのライブカメラをおすすめしたいです。なぜなら見やすいからです。

この地球のどこからでも、生きた金閣を観察できます!

Source