中国が発展途上国向けに提案している「IPv6+」について「IPv6とは似て非なるものなので要注意」と専門家が警告

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インターネット上の住所のような存在であるIPアドレスはIPv4アドレスの枯渇問題が叫ばれており、IPv6への移行が世界中で進んでいます。そんな中、中国がIPv6の拡張バージョンとして「IPv6+」の導入を発展途上国に推進していることが報じられました。IPv6とIPv6+は名前はソックリですが実情はまったく異なるプロトコルであるとして専門家が警鐘を鳴らしています。

China rebrands proposal on internet governance, targeting developing countries – EURACTIV.com
https://www.euractiv.com/section/digital/news/china-rebrands-proposal-on-internet-governance-targeting-developing-countries/

IPv6はIPv4アドレスの枯渇問題を背景に策定されたプロトコルで、世界中でIPv4からIPv6への移行が進んでいます。しかし、IPv6への移行度合は地域によって異なり、移行が遅々として進まない状況も報告されています。

そんな中、中国の大手テクノロジー企業・Huaweiは2019年に「新たなインターネットプロトコル」の開発を発表し、2022年にはIPv6+を発表しました。このIPv6+についてHuaweiは公式サイトで「IPv6をアップグレードしたプロトコル」だとアピールしています。


また、HuaweiはIPv6+の特徴として帯域幅の広さや遅延の少なさ、安全性の高さなどを挙げています。


IPv6+に関するHuaweiの紹介ページは以下のリンク先で確認できます。

IPv6+, Intelligent connectivity infinity
http://web.archive.org/web/20220129232859/https://www.huawei.com/minisite/ipv6-plus/en/

中国政府は2022年6月にルワンダで開催された国際電気通信連合(ITU)の定例会議で採択された決議の修正としてIPv6+の導入を求めました。海外メディアのEURACTIVが入手した文書によると、中国政府はIPv6+について「ネットワーク全体での効率的な情報の割り当て」「他のテクノロジーとの統合によってネットワークリソースの編成を可能にする」「革新的なソリューションの統合」といった点を挙げているとのこと。

デジタルにおける人権に関する非営利団体「ARTICLE 19」の責任者であるMehwish Ansari氏は「中国がIPv6+の導入を途上国に提案することは、先進国との格差の拡大を懸念する途上国のニーズに合致するため賢い戦略と言えます。途上国がIPv6+を受け入れれば、Huaweiは途上国の数多くのインフラ整備プロジェクトに関与できるようになります」とIPv6+の拡大がHuaweiに大きな利益をもたらす可能性に言及しています。

また、非営利団体「Center for Democracy and Technology」の技術責任者を務めるMallory Knodel氏はIPv6+がHuaweiによって開発されたプロトコルであることに着目して「IPv6+はIPv6のような国際的な技術標準ではなく、企業によって開発されたものです。中国による宣伝は誤解を招く『マーケティング言語』です」と述べ、中国がIPv6+を技術標準のようにアピールしていることに苦言を呈しています。

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