【バンドマンのその後】第2回:何もなかったからこそ開けた「映像監督」への道

ロケットニュース24

1度きりの人生、悔いがないように生きたい。10代の頃、そう思った私(中澤)は、ギターを手に取りバンドを始めた。大学卒業後、上京してバンド活動を続けた理由もそれに尽きる。多くのバンドマンは多かれ少なかれ同様の想いを抱いているに違いない。

そんなバンドマンたちがバンドを離れる時、そこには必ずドラマがある。人知れず繰り広げられた人生のドラマを聞くのが本連載『バンドマンのその後』だ。第2回目は下北沢のギターロックバンド・皆様ズを率いたボーカリスト・パラダイスさんである。

・皆様ズとは

今は無き伝説のライブハウス下北沢屋根裏をはじめ、渋谷club乙、大宮ヒソミネなどを中心に2011年から約5年間活動を繰り広げた皆様ズ。ライブ活動だけではなくネットでの発信にも積極的で、自主企画イベント『24時間ネットテレビ』では、当時まだ珍しかったライブイベントの生配信なども行っている。

しかもただのライブイベントの配信ではなく、その名の通り24時間生配信だ。そもそもインディーズバンドの自主企画イベントが24時間あるという時点で珍しいのだが、ライブだけではなくレコーディングなども行い生配信したというから新しさ以上にエクストリームさが目立つ。

下北沢屋根裏は、こういったエクストリームなガムシャラさのあるバンドが集まるライブハウスだった。最近で言うと神聖かまってちゃんとか。メインストリームではないゆえに、自分で立ち上がって新しいうねりとなり天井を打ち破るような音楽が生まれる場所だったと思う。そう言えばHi-STANDARDも屋根裏か。

しかし、ガムシャラであれば誰しもが天井を打ち破れるのかと言うとそういうわけではない。むしろ、ほとんどの場合発見されずに埋もれてしまうものだ。そんな皆様ズ・パラダイスさんは今……


こうなってます

会社員の傍ら、映像監督として数々のアーティストのミュージックビデオを手掛けるパラダイスさん。手掛けた映像は約260本ほどになり、その中には42万再生を超えるものもある。まずは、バンド人生の始まりから聞いてみた。

・バンドをやり始めたキッカケ

パラダイスさん「ずっと自分には何もないなあって感じてて。大学を卒業して就職したんですけど、このままじゃただ生きてるだけっていうか、息をしているだけで生きてさえいない気がして。音楽は好きだったので、GarageBand(音楽製作ソフト)で1人でコツコツ曲を作り始めたんです。

そんな時に、同窓会があって「これや」と。曲はあるしバンドを始めるしかないとメンバーを勧誘しまして。僕は楽器ができないのでボーカルになりました」


──歌が得意だったからとかではなく?


パラダイスさん「ないです。とにかくバンドがしたくて。バンドで何かを創ることができれば、何もない自分ではなくなるのではないかと思いました。だから、バンドさえできれば僕はどのポジションでも良かったんです。でも、楽器ができなかったのでボーカルになりました。幸い、歌は歌えたので」

・バンドの終焉

前回のNGさんのようにプレイヤーとしてプロになるために活動する人もいれば、パラダイスさんのように自分の人生を生きるためにバンドを始める人もいる。ライブハウスのステージに立つ理由は様々だが、1つ言えることは、誰もが闘っているということ。パラダイスさんが映像監督への道を歩み始めたキッカケもまさにバンドをどうにかしようという闘いからだった。


パラダイスさん「最初は自分のバンドのMVを創ろうと思ったんです。誰も創ってくれないから自分で創ろう……と。それで実際ストップモーションで創ってみたのが最初です。10年くらい前かな? 今見ると拙(つたな)いですけど、愛おしいですね(笑)」


──上記の通り、バンドのために完全に独学で入った映像の世界。そんな時だった。バンドが休止してしまったのは。


パラダイスさん「まず、メンバーが1人離島に移住したんですね。思えば、この時点でもう結構厳しかったんですけど、他のメンバーにも子供ができたり、僕の義理の父も倒れたりして、少しずつスタジオに入ったり連絡を取る回数が減っていきました」

・少しでも音楽やバンドの傍にいたくて

話し合いがあったわけではなく自然と休止になったという皆様ズ。一方で時は動画の時代。パラダイスさんは知り合いから頼まれるものを制作しているうちに動画制作者としてバンドマンの間で知られるようになっていく。

パラダイスさん「少しでも音楽やバンドの傍にいたくて動画制作の依頼は断りませんでした。するとそのうち、お金がもらえるようになって、グラデーションみたいな感じで仕事になって。お金をもらいだしたのはここ4~5年で、黒字になったのは一昨年です!」

・バンドをやって良かったか

今では、メジャーアーティストの作品のディレクションから、音楽番組のライブパート撮影まで、様々な仕事を請け負うパラダイスさん。最後に、そんなパラダイスさんに「バンドをやって良かったか」を聞いてみたところ……


パラダイスさん「それはもちろん! バンドをやってなかったらただ生きてるだけになっちゃう。というか、過去系になってますけど、バンドは絶対に復活させます。燃え尽きるほどやり切れていないので、まだまだ不完全燃焼なんですよね。

復活に向けて、とりあえずオケも全部作って1人でライブできるシステムを整えようかなと。そしたら、メンバーがライブに参加できるときに柔軟に形態を変えて出られそうだし……。外堀から埋めてるみたいで遠回りかもしれませんが、地道に目指そうと思います」


──生きるって何だろう? それは今でも分からないけれど、少なくとも今の彼を見て「何もない」と思う人はいないに違いない。人生いろいろ~♪

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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