課題を捉え、議論と思考を促すメディアを目指して: DIGIDAY[日本版] 編集長就任にあたって

DIGIDAY

2023年は大きな変化の年−−ここ数年は毎年そう言われているように感じるが−−だという。2023年になると本当に何かが起きるかはさておき、これまでの「デジタルの常識」を覆すことになるさまざまな事象が、いままさに積み重なりつつあるのは事実だ。

プライバシー規制に端を発するサードパーティCookieの終焉。そこから派生するターゲティングから測定、ファーストパーティデータやIDに至るデータにまつわる混乱。メタバースをはじめとする新たな技術が次々と登場する一方で、テレビやインターネットに匹敵するような確立された存在となるかは不透明だ。

広告やコンテンツの「流通」においてプラットフォームは存在感を持ち続けているが、そのプラットフォーム自体も激しい競争を続けている。残念ながらそこでは、プラットフォーム以外は基本的に傍観者だ。

社会と経済は不確実性を強め、パブリッシャー、ブランド、エージェンシー間のパワーバランスは不安定さを増している。オーディエンスの価値観はこれまで以上に多様化し、その行動はますます捉えにくくなり、デジタルコンテンツとデジタル広告はかつてないほどにそのあり方を問われるようになった。もちろん、デジタルマーケティングもだ。

書き連ねていくとキリがないが、そんな大小の変化が押し寄せるなか、2022年6月1日からDIGIDAY[日本版](以下、DIGIDAY)の編集長となった。

これからDIGIDAYが提示するもの

そんな変化のときに、DIGIDAYはどうあるべきなのか。編集長として目指したいと考えているのは、「課題を捉え、議論と思考を促すメディア」だ。

振り返ればDIGIDAYはローンチ以来、メディアとマーケティングのコミュニティに身を置き、デジタルコンテンツとデジタルマーケティング、両者をつなぐデジタル広告の潮流を読み解き、変化を生み出すことに努めてきた。そして現在、前述の通り、テクノロジーの進化や人々の価値観の変化など多様な要因によって「デジタル」の存在感と領域は急速に拡大している。

デジタル然とした分野のみならず、ファッション、ビューティ、リテール業界にとっても不可欠となった反面、直面する課題も深刻化し、混迷の度合いはますます深まっている。こうしたなか、DIGIDAYをはじめGLOSSY、モダンリテール[日本版]が果たす役割もこれまで以上に重要になるだろう。

私たちは「解決法」や「正解」を示さない。ただニュースを伝えることも、ケーススタディを並べることもない。その代わり、コンテンツやイベントを通して私たちが直面する課題を正確に捉え、共有していきたい。そして、これまで以上にコミュニティでの活発な議論を促し、実用的なインサイトへと導くメディアでありたい。「課題を捉え、議論と思考を促すメディア」は、そのステートメントだ。

変わらないが、変わる

DIGIDAYが取り扱う、デジタルコンテンツ、デジタルマーケティング、デジタル広告という領域はこれからも変わらない。課題を提示するという編集スタンスも同様だ。

一方で、繰り返し述べている通り、これまでのデジタルのあり方は崩れ、複雑さを増している。課題の可視化はDIGIDAYの価値のひとつではあるが、それだけではこの領域のプレイヤーが思考を深め、その先にある洞察にたどり着くことが困難になっているのも事実だ。

必要になるのは、コミュニティでの対話や議論の活性化ではないだろうか。最適化された情報は容易に手に入るが、それだけでインサイトは得られない。

何をどう考え、どのような答えを見出すのか。そのための議論の機会を、今後DIGIDAYが提供していく予定だ。ぜひ、私たちと議論の輪に加わってほしい。

Written by 分島翔平

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