世界最大級の匿名掲示板「4chan」の影にいる日本企業とは?

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月間ユーザー数が2000万人以上、月間ページビューは6億以上という英語圏を対象とする匿名掲示板が「4chan」です。そんな4chanの影に日本企業の存在があることが指摘されています。

Who owns 4chan? | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2022/05/who-owns-4chan/

4chanは陰謀論者集団のQAnonやオンライン上で行われる人種差別攻撃やテロ攻撃などとの結びつきを常に指摘されてきた匿名掲示板です。4chanの悪評は高まり続けていると指摘するジャーナリストのジャスティン・リン氏は、間違いを指摘するためにも「謎に包まれた正体を解き明かす必要がある」と述べています。

2015年、ひろゆきこと西村博之氏が4chanを買収したことが大々的に報じられましたが、リン氏によると、4chanの買収には日本の大手玩具メーカーであるグッドスマイルカンパニーも大きな役割を果たしているとのこと。

グッドスマイルカンパニーはディズニーやワーナー・ブラザースのような世界的なエンターテインメント企業とライセンス契約を結び、アニメやゲーム関連のフィギュアの制作・販売を行っていることで知られています。グッドスマイルカンパニーは4chanとの関係について、2021年に「当社は4chanの受動的な投資家です」とだけ述べていたのですが、リン氏が独自に入手した秘密保持契約から、2015年のひろゆき氏による4chan買収にはグッドスマイルカンパニーとドワンゴが関与していたことが明らかになっています。

また、The Hollywood ReporterKotakuが報道した4chan買収に関する法廷記録によると、グッドスマイルカンパニーの従業員は同社がKotakuの買収に関与していることを知って心を痛めているそうですが、同社の幹部はそのことを無視したとされています。


ひろゆき氏は1999年、アメリカ・アーカンソー州で匿名掲示板の「2ちゃんねる」を開設しました。2ちゃんねるはテキストベースの掲示板の成功例をベースに構築されていますが、独自のエッセンスとして「完全匿名」という特徴を持っています。ひろゆき氏は2ちゃんねるについて、「バカがバカになれる場所であり、責任を取らずに言いたいことが言える場所です」とThe Japan Timesのインタビューで答えています。このような自由さが日本で大好評となり、「10年も経たないうちにひろゆき氏は日本メディアにとっての悪童となった」とリン氏。

2ちゃんねるは英語圏ではほとんど受け入れられなかったものの、一部のユーザーにはカルト的な人気を誇っていたそうです。そんな英語圏では珍しい2ちゃんねるユーザーのひとりが、4chanの設立者であるクリストファー・プール氏でした。プール氏は2ちゃんねるのソースコードを入手し、これをベースに4chanを開設しています。

初期の4chanユーザーは白人至上主義者であるラジオパーソナリティーに嫌がらせをしたりメールをハッキングしたりする程度でしたが、当時から児童ポルノに関する問題とのつながりが指摘されており、4chanの匿名性を利用した悪事が問題になることもありました。そんな中、2015年初頭にプール氏は突然4chanの運営から手を引くことを発表し、ひろゆき氏に同プラットフォームを売却しました。プール氏は4chanの売却について、「4chanは確かに私にある程度の悪評を与えてくれましたが、それは私に富を与えることとはなりませんでした」とRolling Stoneのインタビューで語っています。

4chanの新しい所有者となったひろゆき氏は、同掲示板上で質疑応答を行っており、この中で買収資金をどのように集めたのかという質問に「借りた」と答えていました。


ひろゆき氏による買収後、4chanは高すぎる運営コストを広告収入でまかなうために、ポルノコンテンツを受け入れる「4chan」と、ポルノコンテンツを除外することで広告主にとって安全な「4channel」の2つに分離しました。ただし、基本的にはどちらもセルフサービス型の広告プラットフォームに依存しており、4chanでは主にポルノ関連広告が、4channelではSteamや仮想通貨、NFTといったコンテンツの広告を掲載しているそうです。分析会社・Similarwebによると、4chanと4channelはどちらも世界で最も人気のあるウェブサイトのトップ1000にランクインしているとのこと。

そんな4chanはアメリカのデラウェア州で法人化されており、ニューヨーク州・バージニア州・オハイオ州でも事業を展開しています。4chanの所有者として登録されているのは「4chan Community Support」という企業。また、ニューヨーク州およびアメリカ特許商標庁に提出された書類によると、4chanの本社はアメリカ・ロサンゼルスにあると記されています。

しかし、実際には4chanはアメリカに独立した物理的なオフィスを所有しておらず、従業員もいないとリン氏。ただし、アメリカ・ロサンゼルスにオフィスを抱える日本企業が存在しており、それがグッドスマイルカンパニーであるとリン氏は指摘しています。リン氏はグッドスマイルカンパニーについて、「グッドスマイルカンパニーのフィギュアの多くは未成年の少女を表現したものであり、性的に示唆に富む言葉を含んで販売されています。また、4chanでは性描写のあるアニメが非常に人気です」と記しました。なお、グッドスマイルカンパニーの内情に詳しいという情報筋は、リン氏に対して「グッドスマイルカンパニーは4chanの一部を所有している」と語っています。

さらに、リン氏はグッドスマイルカンパニーの内部文書を独自に入手しており、2015年4月に結ばれた秘密保持契約書の存在を指摘しています。この秘密保持契約書が記されたのは、プール氏が4chanを離れると発表した数カ月後であり、ひろゆき氏が同掲示板を買収する5カ月前のこと。この秘密保持契約は、ドワンゴ・未来検索ブラジル・ひろゆき氏が「4chanに関するM&Aの検討」に関する秘密を守るために結ばれたもので、取引の責任者にはグッドスマイルカンパニーの安藝貴範CEOの名前が記載されています。

この秘密保持契約に書かれたすべての関係者が4chanの買収に携わったか否かは不明ですが、秘密保持契約の開始日は署名された翌月の2015年5月からとなっています。なお、ドワンゴが現在も4chanの運営に関与しているのか否かは「不明である」とWIRED。ただし、2016年にドワンゴがニコニコ生放送のゲストとしてひろゆき氏を招待した際、同氏の肩書を「4chan管理人」と記しています。

秘密保持契約に名前のあるもうひとつの企業の未来検索ブラジルは、ひろゆき氏が設立した会社。同社のウェブサイトには「オンライン・コミュニティに関するさまざまなノウハウを提供する企業」と記されていますが、サービスを受けるにはクライアントが同社と秘密保持契約を結ぶ必要があるとされています。なお、未来検索ブラジルは東京の渋谷区に本社を構えているとされていますが、住所はグッドスマイルカンパニーがあるビルと同じになっているそうです。


4chanとグッドスマイルカンパニーの関係は、グッドスマイルカンパニーが元従業員3名をロサンゼルス郡裁判所に提訴したことから明らかになりました。訴えを起こされた3人の元従業員は、元々4chanで働いていたという人物。同氏らはグッドスマイルカンパニーのアメリカ事業を統括するホズミ・エナ氏から「安藝CEOが直接または間接的に4chanに資金を提供していると言われた」と、訴訟の中で主張しています。さらに、元従業員たちは「4chanの非公式マスコットキャラクターとして人気の高い小岩井よつばを使ったファンデザインコンテストに協力しないかとまで言われた」とも語っています。

なお、8chanの元所有者であるフレドリック・ブレンナン氏は、グッドスマイルカンパニーと4chanのつながりについて「4chanの存在がグッドスマイルカンパニーのウェブサイトへのトラフィックと売上を促進するとすれば、(4chanを買収するという)投資にも価値があると考えられます」と語りました。

リン氏は「グッドスマイルカンパニーの製品に違法性はありません。また、性描写のあるアニメを提供する会社も世の中には多数あります。グッドスマイルカンパニーがユニークなのは、4chanに出資している点と、世界で最も有名な企業(ディズニーやワーナー・ブラザースなど)とライセンス契約を締結しているという点です」と指摘しています。

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