共和党員はトランプに好感は持っているが従順ではない

アゴラ 言論プラットフォーム

ジョージアにてトランプ大敗

トランプ氏 公式HPより

トランプ前大統領は現職のケンプジョージア州知事が2020年の大統領選で州の選挙結果をひっくり返さなかったことを未だに根に持っている。そのために、ケンプ氏の対抗馬としてジョージア州知事選の共和党予備選に出馬する上院議員だったパデュー元上院議員を熱烈に支援してきた。トランプ氏はパデュー氏のためにこれまで大量の資金を投入しており、それだけではなくパデュー氏を支援する団体への支援も惜しまなかった。

しかし、結果は無残なものだった。結局、パデュー氏はケンプ氏に3倍以上の得票差を付けられ大敗した。

ジョージア州の選挙法でよると50%に満たす候補が居なければ得票数のトップ2名で再投票が行われるが、ケンプ氏は対抗馬を完膚なきまでに叩き潰し、2018年の知事選ではデッドヒートを繰り広げた公民権運動家のスティシー・エイブラムズ氏との再戦が確実となった。

この結果を受けて、各メディアはトランプ氏の影響力が減退している兆候が見えるとしているものがあるが、それは安易な分析である。

トランプ推薦候補の敗因

トランプ推薦候補が敗北したのはケンプ知事のしたたかな選挙活動、そして保守政治家としての紛れもない実績に完敗したからである。

ケンプ氏は予備選の約9か月前からパデュー氏と近しい人物たちを要職に任命し、パデュー陣営の綻びを狙った。ケンプ氏はパデュー氏の人材のネットワークだけではなく、結果的には資金源を断つことにも成功した。さらに、ケンプ氏はパデュー氏の選挙活動を支えるための選挙資金を提供していたドナーたちを翻意させ、自らに献金が集まるように動いた。最終的にケンプ氏はパデュー氏の6倍近くの軍資金を集めた。

それだけではなく、ケンプ氏は共和党有権者に対する配慮も抜け目が無かった。トランプ氏はジョージア州での勝利を自身に献上しなかったケンプ氏を「名ばかり共和党員」だとし批判するも、彼の知事としての実績は正真正銘の保守政治家そのものである。

例えば、彼はトランプ氏の不正選挙運動キャンペーンに同調して投票方法や期間を制限する選挙法を可決し、厳格な中絶法も成立させ、予備選の一か月前には減税を実施するというしたたかさを見せた。ケンプ氏は選挙戦を通じて一切トランプ氏は強く批判することはせず、そうすることによって熱烈なトランプ支持者の離反を抑える芸当も見せている。

これまでケンプ氏の残した実績は保守的な共和党支持者たちが喜ぶ政策のオンパレードであり、ここまでしてくれた知事をトランプ氏の復讐心のために引きずり下ろすことは勿体ないとジョージアの共和党員は考えたのであろう。

一方、上記の分析は2020年大統領選への固執だけが共和党が支持層を盛り上げる要因にはならないことを示している。断っておくが、トランプ氏は依然として最も人気な共和党政治家であり、今の共和党を見渡しても個人的なカリスマだけで20万人近い有権者を動員できることに驚嘆に値する。同じジョージア州で2年前まで民主党員だった候補を再投票まで持ち込ませたこともトランプの影響力の強さを証明している。

だが、共和党支持者はトランプ氏には好感は持っているが従順ではない。2020年大統領選が不正だったかどうかという過去のことより、今自分の価値観、利益にあった政策が実施されているかどうかを基準に共和党支持者は投票した。それは至って合理的なことであり、有権者のニーズに応える選挙戦が展開できていたケンプ氏の方が一枚上手だったようだ。

トランプ党変わらず

中間選挙を展開を占うこれまでの共和党の予備選の動向は共和党が未だにトランプにハイジャックされているという筆者の見方を強化している。ペンシルベニア州やオハイオ州での予備選で見られたようにトランプ氏の推薦を受ける、受けないに関わらず、ほとんどの候補がいかに自分が「トランプ的」なのかを競い合っているのが現在の共和党の見慣れた姿である。

また、上記で述べたようにケンプ氏が選挙期間中に公にトランプ氏を批判しなかった事実もトランプ氏の影響力を図る上で重要な判断材料である。

これからの予備選でも、トランプ氏が推薦する候補が今回のジョージアでの事例のように大敗する場面も出てくることが予測される。しかし、その中でも、変わらないトランプ支持が共和党に力強く根を張っている兆候も目をこらして見る必要がある。

2024年のトランプ再選は現実になりうるのである。

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