人口急減問題と補正予算衆院通過

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石破茂です。

電気自動車企業テスラの創業者であり、世界一の大富豪とも言われているイーロン・マスク氏が、日本の連休中の5月7日、自身のツイッターに「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」と投稿して話題となりましたが、それは随分と以前から日本国内で指摘されていることです。

石破茂氏Twitterより 編集部

前回も触れましたが、日本で出生数が最多だったのは昭和24(1949)年の269万6638人、婚姻組数が最多だったのは、この時期に生まれた人たちが適齢期となった昭和47(1972)年の109万9984組でしたが、2020年は出生数が84万832人、婚姻組数が52万5507組といずれも過去最低。出生数はピークの3分の1、婚姻組数は2分の1以下となりました。

この傾向が続く限り日本の人口は加速度的に減少し、22世紀の初頭には今の半分の5200万人、200年後には10分の1の1000万人強、300年後には30分の1の400万人強になってしまうことは、少し考えてみればわかることです。

人口急減問題は地方創生が唱えられ始めた頃は随分と議論されたのですが、最近は急速に危機感が失われつつあり、予算委員会でも殆ど議論されることはありませんでした。ハンガリーのオルバーン政権の外交・安全保障政策には多くの議論がありますが、同政権の人口政策は「ここまでやるのか」と思わせられるほど徹底したものがあり、我が国も学ぶべき点が多々あるように感じられます。

令和4年度の補正予算が本日衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。

予算委員会の審議を聴いていると、何の波乱も無く、淡々、粛々という言葉がこれほど相応しいと思われることがないほど平穏に時間が経過しましたが、本当にこれでよいのでしょうか。野党の諸兄姉は「批判ばかりしている」と言われるのを怖れるあまりか、穏やかな質問に終始し、鋭く厳しい議論を展開する場面がほとんど見られませんでした。

政府・与党にとっては有り難いことですが、これでは国民に対する野党の責任は果たせません。中選挙区制下ではあっても、「55年体制」の日本社会党の方がよほど野党らしかったと妙に懐かしく思われるほど、今の多くの野党の無気力ぶりは際立っています。たまに鋭い指摘をする野党議員もいるのですが、二の矢、三の矢を放つことがないために議論が深まらないままになってしまうのはとても勿体ないことです。

そんな中、今日の予算委員会の野党質問は久々に聴き応えのあるもので、中でも維新の会・足立康史議員、有志の会・緒方林太郎議員の憲法論、安全保障論には内容と迫力がありましたが、これも議論として深まらなかったことが残念でなりません。

拡大抑止について、NATOの体制をよく検証することは極めて重要ですし、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)的なシステムの検証、導入の可否についても、予断を交えることなく検討すべきものです。従来の政府の立場との整合性を重んずるあまり、安全保障が疎かになるのでは、本末転倒の極みと言う他はありません。

「ラーメン議連」ほど注目はされませんが、今週超党派の「菜の花議連」が再起動し、会長に就くことになりました。かつては完全自給であった菜種油も、1963年の関税撤廃によって自給率はほとんどゼロにまで下がってしまいました。

「菜種梅雨」との言葉や唱歌「朧月夜」に見られるように、日本の風物詩そのものといえる菜の花の栽培と菜種油の生産を、耕作放棄地などを活用し、搾油率を向上させることによって復活させることを目指しています。菜の花が咲き、地元の食材を地元の菜種油で天麩羅にして揚げて供するようになれば良いなと思っています。

ウクライナ事変が食用油の世界的な需給に大きく影響していますが、自給体制を向上させることは一つ一つの作物から地道にやっていかなくてはなりません。

便利な世の中になったもので、YouTubeで過去の膨大な映像が観られるようになり、学生時代に好きだったクラシック音楽、特に交響曲をたまに聴くのがささやかな楽しみとなっています。

モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスもよいのですが、これらに比べればややマイナーではあっても、メンデルスゾーンの第3番「スコットランド」、第4番「イタリア」、シューベルトの第8(9)番「ザ・グレート」、ブルックナーの第4番「ロマンティック」など、久々に聴いてみると新たな感動を覚えます。

メンデルスゾーンはオットー・クレンペラー盤、シューベルトとブルックナーはカール・ベーム盤が好きでした。いつかそれなりのオーディオで聴いてみたいものだとひそかに願っています。

元東京地検特捜部長で弁護士の熊崎勝彦氏が逝去されました。昨年、BS-TBSの番組で二度ほどご一緒し、会食させて頂く機会もあったのですが、権力に媚びない、正義感の極めて強い、それでいてとても温かで人間味あふれる方でした。

またお話する機会を約していたのですが、叶わないことになってしまい残念でなりません。御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。

29日日曜日は、宮城県岩沼市長選挙に自民党宮城県連推薦で立候補する予定の、村上智之・前宮城県議会議員の応援に参ります。街頭演説を5会場行った後、個人演説会2会場に参加する予定です(午後5時半~玉浦西地区中集会所、午後6時~岩誓寺))。

岩沼市議会議員7年、宮城県議会議員15年の経験を持ち、高い見識と正義感、実行力を持つ村上氏は、被災地である岩沼市から新しい日本を創る高い志を持った立派な候補者です。10年以上のお付き合いになりますが、厳しかった自民党総裁選挙の折も、宮城県議会議員の中でただ一人、表に立って私を応援してくれました。

「選挙の借りは選挙で返す」という政治の世界の掟(中にはそうでない人も居られますが)を引き合いに出すまでもなく、出来る限りのお手伝いをしたいと思っております。

31日火曜日は、BSテレ東「日経ニュースプラス9」に拡大抑止をテーマに出演する予定です。

来週はもう6月、関東地方も中旬には梅雨入りが予想されています。

紫陽花が綺麗な季節でもあり、大学1年生の頃(昭和40年。47年前!)、鎌倉に紫陽花見物に行った時のことが妙に懐かしく思い出されます。

国会も終盤となり、補正予算の成立後は参議院選挙モードに突入します。選挙の結果次第ではありますが、選挙後は少し落ち着いた日々を過ごしたいものです。

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2022年5月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。