公表された重症化予防効果から「64歳以下では3回目接種の意義がない」ことが判明

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今回は、新型コロナワクチンの3回目の接種をする意義について考えてみます。厚労省のデータよりイギリスのサーベイランスレポート(5/12/2022)の方が有益なデータが多いため、後者のデータを用いて分析してみます。

まず、18~64歳の重症化予防効果のデータです。 右側の欄が、酸素吸入、人工呼吸器管理またはICUを必要として2日以上入院した時のデータ、即ち重症者のデータです。

2回目接種後175日以降で、重症化予防効果は82.3%です。これに対して、3回目接種後105日以降の場合、重症化予防効果は75.9%です。後者の数値の方が低いため、3回目接種の意義は認められません。何故なら、3回目接種により重症化予防効果は接種直後は一時的に上昇しますが、 時間が経つと最終的には2回目接種のそれより低下してしまうからです。

3回目接種の重症化予防効果の95%信頼区間の下限値が15.8%と非常に低くなっている点も問題です。おそらく64歳以下の重症者は少ないため、95%信頼区間の幅が大きく広がったと推測されます。今後、新規の重症者が追加された場合、重症化予防効果は大きく変動する可能性があり、注視が必要です。

次に、65歳以上の重症化予防効果のデータです。

2回目接種後175日以降で、重症化予防効果は73.4%です。これに対して、3回目接種後105日以降の場合、重症化予防効果は86.8%です。後者の数値の方が若干高いため、3回目接種の意義をそれなりに認めます。

次に、発症予防効果のデータを見てみます。ワクチンの種類別にデータが公表されています。

まず、1、2回目がモデルナの場合に、3回目接種をした時の発症予防効果のグラフです。

2回目接種後25週以降(左側)で、発症予防効果は20%強です。これに対して、ファイザーで3回目接種をした場合(中央)は15週~19週で約50~60%で、モデルナで3回目接種をした場合(右側)は50%前後です。現時点では、発症予防効果は30~40%上昇しており、3回目接種の意義をそれなりに認めます。

次に、1、2回目がファイザーの場合に、3回目接種をした時の発症予防効果のグラフを見てみます。

2回目接種後25週以降(左側)で、発症予防効果は20%弱です。これに対して、ファイザーで3回目接種をした場合(中央)は20週以降で10%をきっており(赤枠)、2回目接種後の場合より発症予防効果は低下しています。モデルナで3回目接種をした場合(右側)は約20%ですが、95%信頼区間の下限値がマイナス(青枠)となっています。このグラフのデータからは、3回目接種の意義はあまり認められません。

最後に、1、2回目がアストラゼネカの場合に、3回目接種をした時の発症予防効果のグラフを見てみます。

2回目接種後25週以降(左側)で、発症予防効果は約5%です。これに対して、ファイザーで3回目接種をした場合(中央)は20週以降で約2%であり(赤枠)、2回目接種後の場合より発症予防効果は低下しています。モデルナで3回目接種をした場合(右側)は約10%ですが、95%信頼区間の下限値がマイナス(青枠)となっています。このグラフのデータからは、3回目接種の意義はあまり認められません。

【まとめ】

  • 重症化予防効果のデータから、64歳以下では3回目接種の意義は認められない。
  • 発症予防効果のデータから、1、2回目の接種がモデルナの場合は、3回目の接種の意義は認められるが、1、2回目の接種がファイザーまたはアストラゼネカの場合は、認められない。