「サプライチェーン危機」に役立つツール、オムニコムが提供 : 在庫データを利用し広告支出を迅速に最適化

DIGIDAY

サプライチェーンの危機が、マーケティングを通じて商品を販売するすべての業界にもたらした混乱が長引いている。そのなかで、オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group:以下、OMG)は、サプライチェーンの問題に応じてブランドが広告費をいつどこに振り替えるべきかを判断するためのツールを開発した。供給が逼迫している商品の広告支出を単純にストップするよりもスマートな方法だ。

現在進行形のサプライチェーン危機は、ほとんどの業界に損失をもたらしており、その要因についてはいくらでも議論できる。だが、事態が一朝一夕には終息しないことは、議論の余地なく明らかだ。こうした現実は、マーケターの広告費の使い方に重大な影響を及ぼしており、メディアエージェンシーは風向きの変化にできるだけ速く適応し、最適化することを迫られている。

無駄を省いて効率と効果をアップ

OMGが開発したサプライチェーンIQスコアは、商品の在庫保管単位(SKU)データにアクセスし、分析を経て算出される指標だ。データの取得は、クリスプ(Crisp)という在庫データプラットフォーム企業との提携を通じて行われる。クリスプは、食料小売店およびディストリビューター全体の約80%から、データをインポートしているという。ウォルマート(Walmart)、Amazon、ターゲット(Target)などの小売企業からほぼリアルタイムで得られる情報は、クリスプが収集し、OMGのマーケティングオーケストレーションプラットフォームであるOmniに供給される。このプラットフォーム上で、広告支出データやマーケットバスケット解析の結果と統合することで、種々のインサイトが得られ、最終的にIQスコアが算出される。

「広告戦略とプランニングのあいだにはギャップがあり、同じことが広告展開の実施とサプライチェーンのあいだにもいえる」と、OMGでコマース担当マネージングディレクターを務めるジョン・ショア氏はいう。「したがって(サプライチェーンIQスコアは)無駄を省いて効率と効果をアップさせる、ブランドにとってウィンウィンの状況をつくりだせる。ここ数年、我々のクライアントが、商品の在庫状況に従って広告展開を全面的にストップさせることが度々あった。商品がどこで入手可能であるかを把握できていなかったためだ」。

インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)のデジタル広告およびメディアアナリスト、イブリン・ミッチェル氏は、こうしたギャップを埋めることには本質的にプラスの効果があると述べる。「データを計画プラットフォームに統合することで、広告支出の観点から見たデータの戦略的利用が容易になる」と、ミッチェル氏はいう。「短期的には、在庫切れ商品の広告への支出をカットすることで広告費の節約につながる。長期的には、消費者のブランドに対する信頼を守ることにも貢献する。というのは、どこにも売っていない商品の広告を消費者に提示すれば、ブランドイメージが損なわれる可能性があるからだ」。

クリスプとのパートナーシップ

クリスプとのパートナーシップは、在庫データの主要部分へのアクセスを意味し、OMGにとって不可欠な要素だ。クリスプの創業者でCEOを務めるアーレ・トラースダール氏は、モバイルアドテク企業タパッド(Tapad)の創業者兼CEOだった時代からOMGと長年の関係を築いており、これが提携にプラスに働いた。トラースダール氏が在庫データをマーケターのために戦略的に利用するという発想に至ったのは、あるブランドの最高マーケティング責任者とのミーティングの際、「棚にないものは売れない」と話すのを聞いたのがきっかけだった。

「このデータは広告およびマーケティングサイドにとって大きな価値を持つと、その瞬間にひらめいた」と、トラースダール氏は語る。

「効率の観点からいえば、アクセスの容易さが鍵だ。誰もがどこからでもログインでき、リアルタイムで更新されるスコアにアクセスして、広告展開のプランニングや、投資の最適化のための意思決定に利用できる」と、OMGの投資アクティベーションおよび分析担当シニアバイスプレジデントを務めるマーク・ロッセン氏は説明する。

ショア氏によれば、OMGのある消費財(CPG)分野のクライアントはすでにIQスコアを利用しており、同クライアントは6月に18~20の地域市場で新商品の発売を計画しているという(ショア氏はクライアントや商品の具体名を明かさなかった)。

「我々はメディアやメッセージをさらに精緻化できる。これはプログラマティック、検索、ソーシャルなど、どんなデジタルチャネルにもあてはまる」と、同氏はいう。

「異質な部署同士がいまでは協働」

新商品がいずれかの市場で入手難となるか、あるいは売上が低迷した場合、24時間以内に広告展開に手を加えることができると、ショア氏はいう。従来こうした意思決定には、情報のサイロ化のせいで数週間の時間を要した。

「売上、オペレーション、物流チームはいずれも在庫データを扱っていたが、ブランディングやマーケティングの担当部署と交流がなかった」と、ショア氏は語る。「かつては切り離されていた異質な部署同士が、いまでは協力し協働するようになってきている」。

[原文:Media Buying Briefing: Omnicom Media Group tackles supply-chain challenges for its clients

Michael Bürgi(翻訳:的場 知之/ガリレオ、編集:長田真)
Illustration by Ivy Liu

Source