映画館広告、新ツール導入でパンデミック前の収益回復を狙う:「 動画広告 キャンペーンを補完する魅力を備えた存在だ」

DIGIDAY

マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe)の最新作である「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(Dr.Strange in the Multiverse of Madness)」が北米での週末興行収入で1億8500万ドル(約231億円)を獲得した。このことは映画館広告を運営するスクリーンビジョン(Screenvision)にとっては非常にいい知らせだ。

映画館広告・コンテンツ会社である同社は、5月10日、初の年次アップフロント・プレゼンテーションをおこなった。ドクター・ストレンジの新作の好成績は同社や、同様のアップフロント・プレゼンを7週間前に行った同業者ナショナル・シネメディア(National CineMedia:NCM)の今後の展望にとって大きな後押しとなるだろう。

パンデミックのなか、全米の映画館は2年間干ばつのような状況を経験した。その後にやって来たドクター・ストレンジの大ヒットは、再び「豊作の夏」が訪れる前触れとして期待されている。

「パンデミック前に戻るには、もう1年必要」

映画館広告の見通しは、映画館の利用客が大きく増え始める前から上向きであった。IPGのマグナ(Magna)は、米国の映画館広告は2022年に168%成長し、4億4400万ドル(約570億円)に達すると予測している。(スタティスタ[Statista]によると、北米の映画館広告は約7億ドル[約899億円]に成長すると予測しているものの、これはパンデミック前の2019年に達成した10億ドル[約1285億円]超には遠く及ばない)。

電通メディアUS(dentsu Media U.S.)のビデオ投資部門エグゼクティブ・バイスプレジデントのデイブ・シダーバウム氏は、「映画は、当社の総合的な動画(広告)バイイング購入戦略において、常に重要な役割を果たしてきた」と述べ、「興行収入が回復の良い兆候を示し続けているなか、映画には前向きな勢いと自信があると感じている」と語る。

パブリシス・メディア・エクスチェンジ(Publicis Media Exchange:PMX)で投資業務担当ディレクターとエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるトレイシー・チャヴェス氏は、「映画が顧客のメディアミックスのなかで重要な役割を果たす理由はいくつもある。大画面での視覚、音、動きを使うことは常に、広告メッセージの認知度を高め、総合的な動画広告キャンペーンを補完する魅力的な方法だ。物理的な距離の近さは、当社が抱える多くの実店舗のクライアントにとっても強力な推進力となっている」。

スクリーンビジョンのCEOであるジョン・パーティラ氏は、2022年の広告収入は2021年の倍以上になるにもかかわらず、パンデミック以前の水準には戻らないことを認めた。「2019年当時の状態に戻るには、もう一年かかるだろう」。

しかし、インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)のアナリスト、ロス・ベネス氏は、喜ぶ理由はあまりないと考えている。「この業界は成長しており、チャンスもあるが、従来のテレビ広告のようになることはない」とベネス氏は言う。「大画面に映し出され、飛ばすこともできず、威信もあるので、大金をかけられるブランドマーケターにとっては、ニッチで貴重な機会になる。しかし、その露出には明らかに限界がある」。

各社は新たなツールを導入予定

スクリーンビジョンもNCMも、新しい製品やサービスを投入して、動画やモバイル広告の競争力を高めようとしている。同社は、プライベートPMPを通じて、トレイラーパック(Trailer Pack)と呼ばれるアプリを導入する。これは6月にCTVプラットフォームのロク(Roku)でローンチされる予定だ。同アプリは映画の予告編を紹介するが、ユーザーの映画の好みを学習し、ブランドがスポンサーとなることのできるカスタマイズされた予告編映像を作成するという、AIを活用した仕様になっている。

スクリーンビジョンのCROクリスティーン・マーティノ氏によると、同社はトレイラー・パックやそのほかのチャネルで集めた自社所有のデータを、セカンドパーティのロイヤルティデータやサードパーティのロケーション、行動ターゲティングとブレンドした、シネリティクス(Cinelytics)と呼ばれる新しいDMPも導入する予定だという。また、同社のライブランプ(Liveramp)アトリビューション・プラットフォームを通し、カタリナ(Catalina)からのデータを使ってCPGブランドのクライアントでテストしたところ、4.5%の売り上げ増加を確認したという。クライアントの名前は明かさなかった。マーティノ氏は「映画館に投入する広告費が、メディアプランのなかでもほかよりも機能していることを実際に示すことができれば、多少割高になっていたとしても問題はないだろう」と語る。

一方のNCMは3月、データ・インテリジェンス・プラットフォーム「NCMX」を発表した。映画館に行く前、鑑賞中、鑑賞後の視聴者の動きをより包括的に把握できるよう、自社、セカンドパーティ、サードパーティのデータの連携を強化するものだ。

採用されつつある映画館広告

この2年間はスクリーンビジョンにとってもNCMにとっても厳しい時期であった。従業員は解雇され、会社は最低限の収入しか得られないなか、なんとか前に進もうとしていた状態だ。

デジタルOOHの業界団体であるプレイスベース・デジタル広告協会(Digital Place-based Advertising Association:DPAA)のCEO、バリー・フレイ氏は売上増加を必要とするほかのDPAAメンバーと両社が提携し、映画館広告の営業チームを雇用し続けてくれた点について、両社に謝意を表した。「魚介における素晴らしいパートナーシップで、その多くは今日も続いている」とフレイ氏は語る。

同氏はまた、映画会社がプログラマティック広告の販売機会を増やしている点、それによって映画がモバイルや動画の予算と並んで検討されるようになっていることにも言及した。「ビジネス・ストラテジストたちとエンジニアたちは、(パンデミックのあいだに)プログラマティック広告のエコシステムと深く繋がる機会を得た。その結果を今目にしている」。

一方、インサイダー・インテリジェンスのベネス氏は、プログラマティックは、屋外デジタル広告事業の取引におけるごく一部にとどまっていると述べた。

それでも、今は映画館広告会社にいい流れが生まれている。映画館を訪れる視聴者は、広告、予告編、コンテンツを組み合わせて提供される映画上映前の広告体験に慣れているからだ。消費者インサイトを提供するプラットフォームDISQOは、同社のフィードバックループ(Feedback Loop)を通じて168人の回答者に映画館広告について質問した。過去6カ月の間に映画館で映画を見たことがあると回答した全体の73%のうち、84%が映画の前、上映中、または後に表示された広告に目がいったという。そのなかで、映画館での広告が好きだと答えた人は62%、意見がないと答えた人は20%、好きではないと答えた人は18%だった。

[原文:Cinema advertising hopes to get close to pre-pandemic ad revenue totals with new tools, services

Michael Bürgi(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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