「景気後退時は最悪の事態に備えるべき」と投資企業のYコンビネータがスタートアップ創業者にアドバイス

GIGAZINE
2022年05月20日 16時00分
メモ



2022年はロシアのウクライナ侵攻や物価上昇、依然として残る新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などにより、世界経済の減速懸念されています。実際に5月19日のニューヨーク株式市場でもダウ平均株価が急落する中で、Dropbox・Airbnb・Redditといったスタートアップへの投資を行ってきたYコンビネータが、支援するスタートアップの創業者に向けて「経済がどれほど悪化するかは予測できず、最悪の事態に備えて計画を立てるべき」とアドバイスするメールを送ったことが判明しました。

YC advises founders to ‘plan for the worst’ amid market teardown | TechCrunch
https://techcrunch.com/2022/05/19/yc-advises-founders-to-plan-for-the-worst/

Y Combinator warns startup founders to be wary of economic downturn – SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2022/05/19/y-combinator-warns-startup-founders-wary-economic-downturn/

2022年はインフレや金利上昇、ウクライナの戦争、COVID-19による中国のロックダウンなど、さまざまな要因が重なって景気後退の懸念が強まっています。すでにShopifyやNetflix、Metaなどの大手企業の株価が急落するといった影響も出ている中で、Yコンビネータは支援しているスタートアップの創業者に向けて「最悪の事態に備えるべき」とアドバイスする電子メールを送信しました。メールの中でYコンビネータは、不景気な時こそ考え方を素早くシフトし、先を見通して計画を立てるべきだと主張しています。

実際にTechCrunchが入手した電子メールに記されていたアドバイスは以下の通り。

◆1:見通しは暗い
経済がどれほど悪化するのかは誰にも予測ができませんが、良い方向に進む可能性は低いとのこと。

◆2:将来に備えて計画を立てる
Yコンビネータは「安全な動きは、最悪の事態に備えて計画を立てることです」と述べ、今後30日以内にコスト削減を行って、キャッシュ不足に陥る期間(ランウェイ)の延長を図るべきだと主張。会社の支出が一定かつ収益が伸び続けている「デフォルト・アライブ」の状態を目指すべきだと述べています。


◆3:早めに資金調達に動くべき
もしデフォルト・アライブに到達する前に資金が尽きてしまう可能性が高く、既存の投資家や新しい投資家からの投資が見込める場合は、早めに資金調達に動くことを検討するべきだそうです。

◆4:今後2年間は生き残れるように
Yコンビネータは創業者に対し、今後24カ月間にわたり資金調達できなくても会社が生き延びられるようにするべきだと述べています。

◆5:ハイテク企業の業績不振が悪影響を及ぼす
さまざまな大手ハイテク企業が業績不振に陥ると、それらに出資しているベンチャーキャピタルの投資戦略に影響が及びます。景気後退時には多くの資金を持つベンチャーキャピタルでさえ資本展開が鈍り、小さなベンチャーキャピタルは投資を停止したり倒産したりします。そのため、すでに高い業績を挙げている企業に資本が集中しやすくなり、スタートアップへの新規投資件数や投資額が減少してしまうそうです。また、投資家のミーティング参加件数は投資総額の減少に比例して減るわけではないため、「たくさんミーティングが開かれているから積極的に投資しているのだろう」と推測するのは間違っているとのこと。

◆6:これまでの資金調達環境は常識ではない
景気が上向きだった過去5年間にスタートアップを始めた創業者は、これまでの資金調達環境が当たり前のものではなかったと考えを改める必要があります。Yコンビネータは電子メールの中で、「あなたの資金調達経験は普通のものではなかった可能性が高く、今後の資金調達はより困難になるでしょう」と述べています。


◆7:資金調達ラウンドが鈍る
もしスタートアップがビジネスを開始した初期段階で行われるシリーズAの資金調達ラウンドを終えている場合、製品が適切な市場で受け入れられている状態を指す「プロダクトマーケットフィット」を達成するまでは、次の資金調達ラウンドが起きないと想定するべきだとのこと。

◆8:資金調達プランの変更
Yコンビネータは「あなたが今後6~12カ月で資金調達を行うと計画しているならば、不況のピーク時に資金調達することになるかもしれません。あなたの会社がうまくいっていても成功のチャンスは非常に低いことを忘れないでください。計画の変更をお勧めします」と述べています。

◆9:生き延びることが最優先
不況時において、多くの企業は十分な計画を立てずにたくさんの支出を続け、次の資金調達ラウンドを始めようとした時に失敗したことを理解するとのこと。Yコンビネータは創業者らに対し、「不況下では生き残るだけで大きなマーケットシェアを獲得できることがよくあります」と述べ、景気後退時は会社の存続に焦点を当てた方がいいと主張しました。

また、Yコンビネータは創業者らに対し、起業家でありYコンビネータのパートナーでもあるダルトン・コールドウェル氏と、Yコンビネータのマネージングディレクターであるマイケル・サイベル氏が「景気後退時にスタートアップを守る方法」について語った以下の動画を視聴することも勧めています。

Save Your Startup during an Economic Downturn – YouTube
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