リコー、PFU買収の狙いを説明。キーボード事業も継続を明言

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 株式会社リコーは28日、株式会社PFUの株式取得について緊急記者会見を開催した。PFUの株式は富士通が100%保有していたが、リコーはこの内80%を840億円で取得し、子会社化。残りの20%はそのまま富士通が保有する。リコーの代表取締役社長執行役員の山下良則氏は、「富士通とは過去から連携を行なっていたが、これまで以上のアライアンスができる関係を目指す」と説明した。PFUがリコーの子会社となった後も、全社員の雇用を維持し、「PFUという社名は今後も継承していく」という。

 HHKBなどキーボード事業についても、「熱烈なファンを持つ製品であることは我々も承知している。リコーのビジネスにとっても、オフィス以外のワークフロムホームに該当する製品で、顧客拡大につながる」(リコーコーポレート上席執行役員リコーデジタルプロダクツビジネスユニットプレジデント中田克典氏)と尊重する姿勢を強調した。

株式会社リコー代表取締役社長執行役員山下良則氏

株式会社リコーコーポレート上席執行役員リコーデジタルプロダクツビジネスユニットプレジデント中田克典氏

 リコーでは28日の取締役会で富士通から株式を取得することを決定。同日は富士通の決算発表日で、富士通からもPFUの株式を売却することが発表された。株式取得金額は840億円だが、PFUは現金など約380億円を保有しており、経営体制は健全だという。

 説明会にはPFU側の参加者はいなかったものの、PFU代表取締役社長の長堀泉氏からの「リコーグループの一員となることで、多くのシナジーが見込まれると考えており、当社の成長と共にリコーグループの発展に寄与できると思います」という言葉が紹介された。

 同日に行なわれた富士通の決算説明会では、代表取締役社長の時田隆仁氏が、「PFUは今まで富士通の中でしっかりとしたビジネスをしてきてくれた大事な会社だった。PFUは強みがあるドキュメントスキャナなどハードウェア事業を手掛けているが、富士通はDX事業への変革を進めている。そういった中で、PFUにとっていかなる歩み方が良いのかを考えたことが今回の売却につながった。

 また、リコーがデジタルサービスにつながるエッジデバイス強化を進めており、PFUの事業との親和性が高い。両社は良い組み合わせであり、当社がリコーとの協業を強めていくことで、お客様にエンド・トゥ・エンドで新しい価値を提供していくことにつながると考えた」とPFU売却の背景を説明した。

 リコーはコピー機と呼ばれるオフィス用の大型MFP(複合機)など、オフィス向け製品をコア事業としてきたが、ペーパーレス化など社会環境が変化していることを受け、デジタルサービスビジネスへのシフトを進めている。3月に開催された中期経営計画では、ワークプレイスの広がりとしてオフィスに加え、建設現場のような現場、社会への拡大に対応するとともに、顧客価値を高める4つの注力領域を策定。ワークフローのデジタル化、ITインフラの構築、現場のデジタル化、新しいはたらき方の実現という4つの領域に注力していくと説明していた。

 一方、PFUの事業は、世界シェアナンバーワンのドキュメントスキャナを代表とするドキュメントイメージング事業が売上の40%、マネージドセキュリティサービスに強みを持つ国内ITサービスを手掛けるインフラカスタマサービス事業が45%、国内シェアナンバーワンの産業用コンピュータを手掛けるコンピュータプロダクト事業が15%。

 山下氏は、「この3つの事業が当社の注力領域とベストマッチング。ドキュメントイメージング事業は、ワークフローのデジタル化のための入り口部分で一緒にビジネスを進めることが可能で、さらに現場のデジタル化についてもさまざまな紙をデジタル化する際に大きな力を発揮することになる。

 インフラカスタマサービス事業は、PFUさんのエンジニアはマネージドセキュリティやクラウドのメンテナンスなどを担当し、リコーが持つのはMFPのカスタマーエンジニアで、同じカスタマーサービス事業ではあるものの重ならない。コンピュータプロダクト事業は、PFUさんの組込市場でのシェアは21%を持ち、我々は11%程度のシェアで、合計するとトップシェアの座をさらに強固にすることができる」と両社のビジネスが補完関係にあり、プラスとなるとアピールした。

 MFPにもスキャニング機能が搭載されているものの、「MFPの弱点を明らかにするようで気が引けるが、例えば納品書はさまざまなサイズの紙が利用され、極端に薄い紙が利用されることもあるため、MFPでスキャンするのは不得意。具体的にいうと、読み込み途中で紙が詰まってしまい、破れるといったことを防ぐために、読み込みを途中で止める仕様になっている。

 それに対し、PFUさんのドキュメントスキャナはさまざまなサイズ、厚さの紙をスキャニングできる」(取締役コーポレート専務執行役員リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント大山晃氏)とこれも補完関係になると説明する。

株式会社リコー取締役コーポレート専務執行役員リコーデジタルサービスビジネスユニットプレジデント大山晃氏

 リコーでは、サービスビジネスを進める際、起点となるハードウェア製品をエッジデバイスと位置付けている。PFUのドキュメントスキャナもエッジデバイスとしてサービスビジネスの起点となると説明している。オフィスサービス事業の成長を加速させるために、エッジデバイスの拡充を行なうことを計画しており、中期経営計画発表の場で2,000億円のM&A投資を行なうと説明していた。今回のPFUの買収も、その1つとなる。

 質疑応答ではペーパーレス化などスキャナ需要の将来性をどう見ているのかという質問も出たが、「オフィス内ではペーパーレス化が進んでいるものの、実は現場にはさまざまな紙が依然として利用されている。こうした紙をデジタル化する需要がまだある」(山下氏)とこれまでは顧みられていなかったスキャナの用途があると説明した。

 PFUが加わることで、リコーが進めるデジタルサービスカンパニーとしてのビジネス拡大として、ワークフローデジタル化での500億円創出、国内でのITサービス2,000億円規模に拡大という目標達成につながると見込んでいる。

 なお、ハードウェア事業からサービスへとビジネスの転換を進めるリコーにとって、PFUのキーボード事業はミスマッチにも思えるが、「HHKBには熱烈なファンがいることは我々も承知しており、私も勉強のために1台購入して使ってみているが、非常に使いやすいキーボードだ。キーボードの全世界での成長率は8%だが、PFU製品の成長率は14%で、これを世界展開する計画もある。

 また、オフィス以外のワーク・フロム・ホームのビジネスパーソンにつながっている製品だと考えると、エントリーポイントとして重要であることは間違いない。今後も大切にビジネス拡大を目指したい」(中田氏)とリコーが目指すビジネスと合致すると説明している。

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